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【無所可用】中南米の石の文明、萌え


5311c147不定期連載の「エドガーの無所可用、安所困苦哉」。エッセイの様なコラムの様な読み物です。第五回目となる今回は、一転、中南米の遺跡についてのお話。
今回も御用とお急ぎでない方は、お付き合いただければ幸いです。
さて、時は十数年前。第二回目の連載の末尾でご紹介した「リアルの嫁」との、結婚式の段取りも進み、新婚旅行はどうするよ?というときのお話。

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嫁:どこか行きたいとこあるの?
エ:ラパ・ヌイ!
嫁:……なにそれ?
エ:ええと、わかりやすく言うと、イースター島
嫁:なにがあるの?
エ:モアイ!
嫁:そらそーだ。それ以外は?
……間………。
エ:……他の遺跡とか……
嫁:泳げる?
エ:ビーチはほとんど無いはず……
嫁:じゃ、何しに行くの?
エ:モアイ触りに
嫁:却下!

で、次に提案したのがマチュピチュ。
でもこれも却下。
遺跡めぐりしかないのと、やたら遠いから(ツアーでは、たいていナスカの地上絵などもセットになっていますね。あんな遠くまで行くんだから……という感じでしょうか)。
要するに、嫁さんは遺跡には興味ヌルなのです。

でもでも、ワタシには、中南米の遺跡というのは、エジプトやインダス流域とはまた違い、とても魅力的で行ってみたいところなのです。

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冒頭でモアイの話を振っているにもかかわらず、ラパ・ヌイとモアイの話は別の機会に譲りまして、今回は中南米の遺跡お話です。

マヤ、アステカ、インカに代表される中南米の文明は、石造りの遺跡が多い地域でもあります。
まぁエジプトのピラミッドやスフィンクスも石なんですが、同じ石でもかなり雰囲気が異なるのです。
ワタシは中南米の石の遺跡が大好きです。アステカよりだいぶ前にオルメカ文明というのがあるのですが、これが人の顔だけを石で作り、ドンと置いてあるのです。巨石人頭像と呼ばれますが、なんの目的があったのかは未だよくわかっていないようです。

ひとつには、エジプト、メソポタミア、インダス流域という乾燥地帯の遺跡に対し、中南米はジャングルの遺跡、という違いがあるかと思います。
特にマヤあたりはかなりのジャングルの中です。
ジャングルの中の木々に埋もれている遺跡。かつて人々が暮らし、いつしか打ち捨てられた街。マヤ文明はインカやアステカのようにヨーロッパ人に滅ぼされた文明ではないので、一般人にすぎないワタシにはわからないことばかりですが、どのように人々が暮らしていたのか、とても興味のある対象です。

マヤ文明は現在使われているものにかなり近い暦を使っていたり、独特のアーチ形状(マヤ・アーチと呼ばれます)の構造、やたら複雑で何を書いてあるのか説明されてもちっともわからない文字など、見ているだけで幸せです。
そういえばヒエログリフの入門書はありましたが、マヤ文字の入門書はないですね。2012をキッカケに出ないだろうか……。
あ、ところで、マヤ文明というとよく引き合いに出てくる「水晶ドクロ」。あれはマヤ文明とは関係ありませんよ。(気になる方には、おたくま内で個別に質問受け付けます。)

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インカは、やはりマチュピチュが有名ですが、あの石組みをどのように作ったのか、よくわからないのですよね。インカの首都であったクスコにある「12角の石」を見ていると、文字の無い文明で精密な加工をどのように行ったのか……など、興味は尽きません。
現物あわせにしては合いすぎますが、これが究極の「自然の形を最大限に活かした造型」なのかもしれません。
マチュピチュは日本からかなり遠いにもかかわらず、「行ってみたい世界遺産」では、いつもかなり上位に来ますね。
それだけメジャーになり、また日本人目線でも魅力ある場所ということなのでしょうか。
もしくは、南米という、「遠さ」が、費用や時間を考えなくていいなら行きたい場所、として、魅力を発しているのでしょうか。ワタシはマチュピチュは2番目ですが(一番はラパ・ヌイです)。

どちらの文明も結構広範囲に及んでいて、それぞれに魅力的な遺跡があります。しかし、今では道が繋がっていない遺跡も多く、発見はされたものの放置状態でジャングルの中という場所も多数あります。
かつて、ニカラグアへ行ったことがあります。そもそもは遺跡目当てではなかったのですが、ニカラグアにど~んとあるニカラグア湖にある島に、石に浮き彫りした遺跡があるということで、ここは行ってみたい、と遺跡好き攻撃で行かせてもらいました。

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ちっさなボートで琵琶湖より広い湖を行くのはスリリングでした(実際、波の高さのあまりボートから落ちそうになるので、コドモをぐいっとつかまえましたよ)。
着いた島は、粗末な家というより小屋に、ニワトリを放し飼いにした数家族が住んでいるだけのように見えました。
こんなとこに遺跡があるの?と思いましたが、船長?兼ガイドさんがずんずんと島のジャングルの中を進んでいくのでついて行きました。
けもの道だってもっと踏み固めてるよなぁと思うような細道かつ上り坂を登っていくと、突然、大きな岩に出ました。
ここが遺跡だ、と言われ、足元を見ると、確かに少しすじ彫りしたような部分があります。つもっていた落ち葉を木の枝の即席箒ではらってみると、湖のほうに向けて、かなり大きな規模の浮き彫りがありました。
何の遺跡なのか、いつごろのものなのか、聞いてみても、まったくわからない、とガイドさん。何かのメッセージだ、とだけ言っていました。ニカラグアは独裁と内戦でボロボロになった国です。未発掘の遺跡や原生林もあるのに、世界遺産が一つもありません。これからの国です。こうした遺跡の調査に少しでも手が付けられることを願ってやみません。

こうした中南米の遺跡を知ったのは、なんと幼稚園時代。その頃はNHKで特集が組まれ、さらに本も出版されていました。
安くはない本を親にねだって買ってもらい、読めない漢字は辞書を引きながら、何度も何度も読み返し、パレンケ(マヤ)、サクサイワマン(インカ)など、幼少時のワタシの頭に刷り込まれていったのでした。
いつか行ってみたい。マヤ・アーチの回廊や、マチュピチュの町並みを歩いてみたい。でも当時はどうしたら「行ける人」になれるのかわからず、膨らむのは夢ばかりといったところでした。

人が作ったものなのに、いつのまにかに人の手から離れ、永い時をすごした遺跡には、いわゆる「ロマン」がありますね。
エジプトのように多くの研究がされていない分、そうしたロマンがココロをかきたてるのかもしれません。「わからない」は、いろいろと楽しませてくれると思いませんか?

このへんの「遺跡好き」は、その後、身近なところでは「鉄道廃線跡歩き好き」に繋がっていくようであります。

写真:ムエルト島

Publisher By おたくま経済新聞 | Edited By おたくま経済新聞編集部 | 記事元URL https://otakuma.net/archives/20100302.html
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