ロシアから消える外資系企業
モスクワなどロシア各都市では、マクドナルドやアディダス、アップルやスターバックスなど、世界的な欧米企業が相次いで営業停止・撤退し、今後も再開の目途は立っていない。日本のトヨタや日産といった自動車メーカーも今日操業を停止している。こういった現状にモスクワ市長は、「今後モスクワ市内の外国企業で働く20万人あまりが失業する恐れがある」と警戒感をにじませている。
世界各国が対露制裁を実施しているわけではない
現在、欧米主導の対露政策が効いていることは確かである。しかし、それがロシアの侵攻を停止させる決定打には至っておらず、世界中を見ても対露制裁に加わっているのは大半が欧米諸国で、あとは日本や韓国、台湾くらいだ。当然ながら、欧米と対立する中国はそれには参加しておらず、今後経済大国になると予測されるインドもこれまでのロシアとの友好関係から参加していない。インドは長年ロシア製の武器に頼っており、国連の対露批判決議でも棄権に回っている。
さらにいえば、東南アジアや南アジア、中央アジア、中東、アフリカ、中南米など他の地域では、対露制裁に参加している国を見つける方が難しい。たとえば、サウジアラビアはバイデン政権になって米国との関係が冷え込んでいる。バイデン政権はイラン核合意への復帰を目指しているが、イランと犬猿の仲であるサウジアラビアはそれに強い不満を持っている。
また、東南アジア諸国でもシンガポール以外の国々はロシア非難を避け、対露制裁には参加していない。ASEANは米中露などの大国間対立にできるだけ巻き込まれたくないとの思いがある。今年11月に開催されるG20(主要20カ国・地域の首脳会議)の議長国となるインドネシアのジョコ大統領は、ウクライナのゼレンスキー大統領を招待するほか、ロシアのプーチン大統領が出席する予定だと明らかにした。これについて米国のバイデン政権は反発しているが、ジョコ大統領は「世界が結束するべきで亀裂を生じさせるべきではない」との意思を示している。
以上のように、国よって国益も違えば考え方、優先順位も違う。ロシア制裁に加わることで寛大な被害を被る国もあるし、ロシアに頼らざるを得ない国も少なくない。こういった点が欧米主導の対露制裁の効果を下げていく要因となるのだ。
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