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猫とはたらくvol.07:獣医にしかできない仕事を追求し続ける。獣医学者・宮沢孝幸さんが語る「猫への恩返し」とは



読者諸賢の皆々様、ごきげんうるわしゅうございます。猫ジャーナルであります。 猫とはたらく人々へのインタビュー連載、第7弾。前回の福岡・書肆 吾輩堂さんの京都のご縁でしょうか。思わぬ方向へとバトンが躍動しました。今回お話を…





読者諸賢の皆々様、ごきげんうるわしゅうございます。猫ジャーナルであります。





猫とはたらく人々へのインタビュー連載、第7弾。前回の福岡・書肆 吾輩堂さんの京都のご縁でしょうか。思わぬ方向へとバトンが躍動しました。今回お話をうかがいましたのは、京都在住の獣医学者であり、京都生命科学研究所(Kyoto AHOI)の設立者・宮沢孝幸先生です。





猫のウイルス研究の専門家として、研究者生活は40余年。約260本の公表論文のうち、68%が猫を対象とした研究で、7月には新著となる『猫が世界を救う』を上梓され、超多忙のなか、お話をうかがう僥倖にあずかりました。すべては猫のご加護であります。インタビューのさなか、新著に話がおよぶと「皆さん、誤解してるんだけど、猫はかわいいってだけの本じゃないんですよ。これまで、人間は猫に助けられてきたんですよ」と、語り口は熱をおび、顔はワクワク楽しげに。





これからは人間が猫へ恩返しをする番だと語る宮沢先生。その真意をあますところなくお伝えします。





恩師からの言葉で「獣医にしかできないこと」を探究することを決意





−−宮沢先生が、猫のウイルス研究の道に進まれたきっかけを教えてください。





東京大学農学部獣医学科では、獣医微生物学を専攻していました。獣医学では、犬や猫だけでなく、牛、豚、馬、鶏など、さまざまな動物を対象に研究が行われています。僕が所属していた獣医微生物学研究室では、当時、犬猫のウイルス研究が中心でした。そのなかでも、僕は猫のウイルスを専門に研究するようになりました。





−−東大で犬猫のウイルス研究が中心だったのは、何か理由があるのでしょうか?





東大は東京にありますから、附属の動物病院には主に犬や猫が診療に訪れます。さまざまな病気の犬猫を診察するなかで、臨床の現場から研究課題が見つかり、診療で得られた検体を、飼い主さんの同意や適切な手続きを経て研究に活用できる環境があったんですね。





一方、牛や豚、鶏などの産業動物の感染症については、当時、筑波にあった農林水産省の家畜衛生試験場(現在の動物衛生研究所に連なる研究機関)が中心的な役割を担っていました。そうした事情もあって、当時の東大の獣医微生物学研究室では、犬猫のウイルス研究が盛んだったわけです。もちろん、現在の東大では産業動物のウイルス研究も行われています。





東大の獣医学科の博士課程に進み、博士号取得後はポスドクとして1年間過ごしました。そのあと留学することになりまして、候補にした大学やラボはすべて下見に行ったんです。スクリプス研究所は海辺で、コロラド州立大学はロッキー山脈の麓で、すごく住環境がいいんですけど、これじゃ遊んじゃって勉強できないなと思い、最終的に、イギリスのグラスゴー大学獣医学部のMRCレトロウイルス研究室(MRC Retrovirus Research Laboratory)を選びました。





選んだ理由は、分子生物学と免疫学などの領域を横断した総合的な研究を行える環境だったからです。あとは、家庭的な雰囲気。向こうの人は学会に家族を連れていって、研究者の家族同士で一緒に遊んだり、交流を深めたりするのが当たり前なんですね。これが日本と違っていて、いいなと思いました。





−−その後に、再び日本に戻られました。





恩師だった見上彪先生からお呼びが掛かって、1996年に留学先のグラスゴーから東大に戻りました。その後にロンドン大学へ留学し、大阪大学の微生物研究所へ移りました。





阪大では、JSTの「さきがけ」プログラムで大型の予算を取ったんです。競争倍率は約20倍。テーマは「ウイルスとの共生」でした。僕はずっとウイルスとの共生を言っているんですね。





阪大の次は帯広畜産大学、それから京都大学のウイルス研究所へ。京大のウイルス研究所は医学部のキャンパスのなかにありますから、人の役に立つ研究をやってくれと言われるんですよね。大学にいるあいだは、猫の研究は肩身が狭かったわけですよ。だから静かにして、人のウイルス研究もやってますよという顔をしていたんですね。





それが十何年も続いたものだから、周りの人が、僕のことを「猫の人」だというのを忘れちゃったんですよ。





−−人ではなく、動物のウイルスの研究を続けている理由は、どこにあるのでしょうか。





見上先生は、以前から「獣医の地位を上げてくれ」と僕に語っていました。要は、獣医にしかできないことをやろうと決意していたわけですよ。だから、獣医のアイデンティティは捨てたくない。それで人だけに感染するウイルスの研究はやらないんです。





なんでかと言うとね、誘惑が大きいんですよね。人のウイルス研究には大きな予算が取りやすいし、どんどん出世できるんだけど、そんなことをしたら獣医らしさがなくなっちゃうじゃないですか。





最先端の“猫の研究所”を作る——感染症、生命の進化、がんの研究









−−京大を退職後、2024年に京都生命科学研究所を立ち上げられました。





最先端の、猫の研究所を作ろうということでね。犬もやっていいんだけど、まずは猫です。大学では、豚や猿のウイルス研究も行っていましたが、猫から離れたことはないんです。猫白血病も、猫のカリシウイルスも、猫のモルビリウイルスも、ずっとやっていました。ただ、それを前面に押し出すことができなかっただけで。





AHOIで研究の柱として掲げているのは、猫の感染症と、生命の進化です。がんの研究は、その生命の進化の話と一本につながっています。





−−まず猫の感染症の領域の、具体的な研究目的を教えてください。





ワクチンと、腎臓の病気と、猫エイズです。





いまの動物用のワクチンには、いろいろ問題があると思っています。





ワクチンを作るには、まず細胞のなかでウイルスを増やすんですね。そのとき、細胞を育てる培地に牛の血清を使うんですよ。だから、できあがったワクチンには牛の成分が混ざります。





人のワクチンでは厚労省の生物学的製剤基準により、血清を入れなくてもウイルスが増える細胞をわざわざ作って、そこからウイルスだけを高度に精製します。だから牛の成分はほとんど入りません。





動物用のワクチンにも農林水産省の基準がありますが、人に比べると緩いものです。市販の猫用ワクチンを調べた研究では、製品中に牛血清アルブミン(BSA)が残存していることが報告されています。10製品で測定したところ、BSAは1回量あたり0.31µg未満から196µgでした。WHOがヒト用ワクチンの残留BSAについて示している1回量あたり50ng以下という指標と比べると、高い製品があるわけです。こうした培地由来の成分は、ワクチン後のアレルギー反応との関連が懸念されています([R1])。





海外の猫のワクチンガイドラインでは、FPV(猫汎白血球減少症)、FHV-1(猫ヘルペスウイルス1型)、FCV(猫カリシウイルス)などのコアワクチンについて、初回免疫のあとは3年ごとの再接種を基本とする考え方があります。一方で、ワクチンの種類や猫の生活環境、感染リスクによって、推奨される間隔は異なります([R2])。それでも街の獣医さんに行くと、一律に毎年打ちましょうと、まだ言われることも多いんです。





そこで僕が考えているのは、抗体価が防御免疫の目安になる感染症については、健康診断の機会に抗体を調べ、必要性を確認したうえで接種するというやり方です。3種混合、5種混合ではなく、1つずつの「単味」や2種、3種といろんな組み合わせを用意しておいて、必要なものだけを最小限に接種する。ただし、ワクチンによっては抗体価だけで防御免疫を十分に評価できませんから、対象は見極めなければいけません([R2])。





そして、せめて人間並みに安全で有効な猫用のワクチンを作りたい。10年以内に自分でワクチン会社を作ってやろうと、壮大なことを考えているんですよ。





それから、猫モルビリウイルス(FeMV)を標的としたワクチンの研究です。FeMVは2012年に香港大学の研究チームによって発見され、腎尿細管間質性腎炎との関連が報告されました([R3])。その後、実験感染でも腎臓に病変が生じることが示されています([R4])。





ただし、FeMVの感染が長期的に慢性腎臓病を引き起こすかどうかは、まだ結論が出ていません。健康な猫もこのウイルスを持っていますから、関係ないじゃないかと言われることもある。でも、発症までの期間が長いので、時系列の一点だけを取れば、健康な猫も同じように感染しているのは当然なんですよ。





猫の腎不全はFeMV感染が重要な原因候補の一つではないかと、私は考えていますが、これを確かめるには5年、10年単位の疫学調査が必要です。ワクチンは試作品があり、抗体が上がることもすでに確認しています。今後は、疫学調査を行える環境を整えたいと考えています。





もう1つが猫免疫不全ウイルス感染症(FIV)です。FIVに感染しても、長期間無症状のまま暮らす猫は少なくありません。海外の自然感染猫の研究でも、FIV陽性猫と陰性猫で生存期間に有意差を認めなかった集団が報告されています([R5])。ただし、臨床経過には個体差があります。





私たちは、その違いを生む要因の一つとして、猫が持つAPOBEC3という抗ウイルス遺伝子とFIVとの相性に注目してきました。研究では、猫APOBEC3Z3の自然変異のなかに、FIVのVifというタンパクによる分解に抵抗性を示し、実験系でウイルスの感染性を強く抑えるものがあることを明らかにしました([R6])。こうした宿主側の遺伝的な違いが、感染後のウイルス量や病態の違いに関わる可能性があります。





その“相性”の検査ができる研究機関は、日本にほとんどありません。これも力を入れていきたい領域です。





−−もう1つの柱が、生命の進化。ウイルスの研究者としては、少し意外に聞こえます。





ウイルスによる生命の進化というのは、僕のテーマの1つなんです。ウイルスが役に立っている例は山ほどあって、あるウイルスに感染することで、他の病原性のウイルスに感染しなくなるとか。





一例が胎盤です。もともと胎盤なんて爬虫類は持っていないわけです。何もないところに、胎盤という新しい器官を作った。恐るべきことですよね。そのためには新しい遺伝子が必要で、新しい遺伝子制御のメカニズムも導入しなきゃいけなかった。それが実はレトロウイルスだったという話なのです。





−−ウイルス由来の遺伝子が、胎盤形成やその進化に利用されてきたということですね。





そうです。哺乳類の胎盤形成・進化には、過去にゲノムへ取り込まれた内在性レトロウイルス由来の遺伝子が繰り返し利用されてきたことが分かっています([R7])。ヒトのSyncytin-1、Syncytin-2や、反芻類のFematrin-1などがその例です([R8])。





胎盤ができた結果、脳も発達できたというのが、東京医科歯科大の石野史敏先生の説です。おなかのなかで育てて産めるようになると、外敵が来たときに、卵を持って動くわけにはいかないですから、それで有利になったんだと思うんですけど。





僕の仮説はそこから一歩踏み込んで、「哺乳類は胎盤を持ったために繁殖では有利にはなったけれど、その代わり、がんのリスクを負った」というものです。





−−胎盤と「がん」とは似ているのでしょうか。









胎盤って母親にとってはまったくの異物です。父親の遺伝子が入っているから。その異物をおなかのなかに入れている。





受精卵が胚盤胞になって、子宮に着床します。着床後にグググッとめり込んで子宮壁を壊していく。壊すときには、タンパクを溶かすプロテアーゼという酵素を出していきます。そうやって壊した挙句、最後はお母さんの血管まで壊すんです。





人間やマウスの血絨毛性胎盤では、母体の血液が胎児側の胎盤組織に直接接します。つまり、異物に血液が直接当たるわけです。普通、他人の組織を移植すれば免疫によって拒絶されます。しかし、胎児・胎盤は妊娠期間中、母体の免疫系によって排除されません。これは驚くべきことなんです。





猫の胎盤は構造が異なり、内皮絨毛性胎盤ですが([R9])、やはり母体が胎児・胎盤を拒絶しないための免疫制御が必要です。





これは、ものすごく巧みに免疫をコントロールしているということです。制御性T細胞とか、HLA-Gとか、いろんなメカニズムを超絶に駆使して、免疫から逃げているんですね。しかも、母体の組織に深く入り込み、母体血液と胎児側の組織が密接に接することで、効率的な物質交換が可能になる。ヒトの胎盤は、そのような高度に侵入性のある構造を進化させてきたわけです。





実はこれが、がんも同じなんですよ。がんには腫瘍特異抗原(TSA)が出てくるくらいですから、あれも異物ですよね。がんも免疫を抑制するメカニズムをいろいろ作らせて、いわば免疫を騙しているんですね。その騙し方が胎盤の騙し方とそっくりだし、同じものを使ったりもする。





しかも、がんは悪性度が高くなるほど、めり込んでいくでしょう。そして最後はバーッと散って転移する。そのときに出てくる酵素が、胎盤で使っている酵素ととても似ているんです。





−−それほどまでに、似ているんですね。









胎盤形成とがんには、組織への侵入、プロテアーゼの利用、免疫回避など、共通する分子機構が見られます。がんで内在性レトロウイルス由来の遺伝子が再発現する例もあり、私は胎盤進化とがんの関係に注目しています。





宮沢はなんで胎盤の進化なんか研究しているのか、何の役に立つのかと、よく聞かれますけど、がんと進化とウイルスの研究は、一本の道でつながっているんです。それがなかなか理解されないんですよ。





僕も62歳ですから。どこまでできるかですね。ワクチンは10年、がん治療は15年ぐらいかなと思っています。あと15年は必死で頑張って。それがもう、最後の仕事かなと思っております。





これまでも、これからも。猫は世界を救い続ける





宮沢家に来た2匹の猫「きぃこ」と「塩八」





きぃこちゃん




−−猫は人間を救ってきたわけですが、先生ご自身も、猫に助けられてきたのでは。





先代の「きぃこ」にも「塩八」にも、メンタルの面でものすごく助けられました。犬とは違って、猫はじっとそばにいるだけなんです。僕が怒っていることもわかっていて、寄り添ってくれる。そこがまた猫のいいところでね。





−−先代のきぃこちゃんとは、どんなご縁だったのですか。





阪大時代にうちに来た、とにかく人間が大好きな雌猫でした。人間もそうだと思うんだけど、猫にも精神的な位(くらい)みたいなものがあると思っていて、きぃこはかなり位が高かったです。菩薩クラスですよ。





きぃことは無言で会話ができたんです。こっちが悩みをぶつけると、答えてくれました。「そんなに悩む必要はない」みたいな感じで。





−−亡くなったときのことを、うかがってもいいですか。





きぃこは亡くなったあとも、四十九日のあいだ、ちゃんと僕の近くにいたんですよ。はっきりわかりました。植物園とか景色のいいところに行くと、すごく喜ぶ声が聞こえてくるんです。





ある日、ラボでうとうとしていたときに、すごくきれいな女性の声が聞こえて。「すごく楽しかったよ」と言ってくれたんです。





それを聞いた僕はきぃこに「また生まれ変わってきてね」と言ったんです。そうしたら「わからない」と答えるんです。びっくりしましたね。「それは私が決めることじゃないから」「もし私があなたのところに来られなかったら、あなたに合う猫を送るから」と。





四十九日を過ぎたら、その声もすっかり聞こえなくなりました。





きぃことお別れして1年経った日のことです。命日をすっかり忘れて、神奈川の実家で寝ていたんですね。そうしたら、手をベロッと舐められまして。猫の舌ってザラザラしてるでしょう。その舐められた感覚で、うわっと思って起きて、手を触ったら、濡れてるんじゃないかと思うぐらいリアルで。ふと気がついたら、今日が命日だと。





命日に猫は来るんですね。私自身はそう感じ、信じています。





塩八ちゃん。白の雌猫さんです。




−−その「合う猫」が塩八ちゃんだったんですね。





きぃこが送ってくれるという猫を、ずっと待ちました。里親探しのサイトを見ては、この猫はどうかと、かみさんに見せるんだけど、全部違うと言う。ある日「この猫は?」と白い雌猫の写真を見せたら、「この猫がいいよ」と言ったんですよ。それが塩八です。





うちに来る前は、貴族の眉みたいな模様があって、「麿(まろ)ちゃん」と呼ばれていたそうです。かみさんは真っ白だから「大福」にしたかったらしいんですけど、僕が「塩八」にしたんです。「しおらしく」なってほしくてね。





−−しおらしい猫になりましたか。





全然(笑)。来た日の夜なんて、夜中じゅうガサガサガサガサやっていて、かみさんが怒っちゃって。しばらくしたらおとなしくなるかと思ったら、その後も、いたずら好きでね。トイレのウォシュレットのスイッチを入れて、トイレを水浸しにする。ジャガイモをこっそり持ち出して、空いていた衣装ダンスの引き出しに隠す。超絶に頭がいいんですよ。笑わされることがたくさんありました。









−−きぃこちゃんとは、正反対ですね。





性格は真逆ですし、会話もできない。塩八は、何を考えているのかわからないんですよ。本当にこれ、きぃこが選んだ猫なのかと思ったんだけど……。でも、いまは本にもなりましたからね。





−−『猫が世界を救う』の表紙で、つぶらな瞳をこちらに向けています。





難しい章がわからなくても、最後の章で塩八がまとめてくれるでしょう。あそこさえわかってくれれば、それでいいんです。この子が助けてくれるんじゃないかなと、思っているんですよ。





目に見えないものを、大切にしたい









−−きぃこちゃんとは無言で会話ができて、塩八ちゃんは何を考えているかわからない。どちらも、言葉ではないんですね。





僕は、目に見えないものをすごく信じているんですよ。みんなから変わってると言われるんだけど、見えない感性だとか、言葉にできないものを大切にしたいんですよ。だから、AHOIの理念に「文化芸術関係の支援」が入っているのもそのためです。





先日(2026年8月8日)には「猫が世界を救う!2026」と題して、科学と芸術とが融合したイベントを開催しました。これまでも、AHOIのシンポジウムでは演奏会を行っています。なんでそんなことやるの?と言われるんですけど、僕はそれが伝えたいんですよ。言語化できないものが大事なんですよ。





僕もピアノを弾きます。下手なんですけど、下手なりに一生懸命、思いを乗せると、僕のピアノで涙を流してくださる方もいるんですよ。こういう気持ちを伝えようとすると、伝わるんですよね。音楽は、言葉にできない何かを表現できる。言葉はもちろん便利なものだけど、限界があるんです。芸術は、それを補うものだと思っています。





おそらく言語が先にあって、そのあと文字ができたわけですけど、それで失ったものも結構あるんですよ。文字を持っていなかった縄文人は、たぶんすべてを受け取ることができた。いまは文字になったものしか受け取れなくなっている。それが人間の感性を落としているんじゃないかと。





でも人間はそれを自覚していて、取り戻そう、なんとか維持しようとしている。それが芸術だと思うんですよ。





だからコロナのときに、芸術は不要不急だと言われて。この野郎、と思いました。なんちゅうことを言うんだと。芸術は必要なんですよ。それこそが人間なんだというのが、私の意見です。










さて。読者の皆さまの膝の上、あるいは足元、はたまた扉の向こうで、共に暮らす猫はいまごろ何をしておりますでしょうか。





宮沢先生は、「人間は、猫に助けられてきた」と繰り返し語られました。自宅の猫の寝姿を見て、その言葉を反芻します。自宅の三毛猫2匹にも、約18年の長きに亘り、まさに助けられてきたのであります。1日たりとも、猫に感謝しない日はありません。2匹の猫に対する、そしてすべての猫に対する感謝であれば、誰にも劣る気はしない私でありましたが、猫に対する宮沢先生の感謝と恩返しの心には、圧倒されたのでありました。10-0の7回コールドで甲子園2回戦敗退の気分であります。





猫への恩返しは、まず身近なところから。皆さまも、共に暮らす猫をそっと撫でてお礼を伝えていただければ幸いです。そしてAHOIの研究成果が、あまねく猫への恩返しとなりますことを、心から願う次第であります。





次回もどうぞ、お付き合いくださいませ。





撮影協力/ベヒシュタイン・セントラム 東京

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