『分離不安』という一種の精神的な病気が実は猫に急増しているのをご存じですか?
『分離不安』とは元来はあまり猫に対して使われることがなかった言葉でした。
一昔前のように、外に自由にでて、人とべったりと一緒に過ごさなくても気ままに生活していた猫は『分離不安』になることが少なかったといわれています。
しかし最近では『分離不安』と診断される猫が増えたそうです。
猫の分離不安とはいったいどんな症状なのでしょうか?
猫の分離不安の症状や対策、予防法などをまとめてみました。
◆猫の分離不安とは?
猫の分離不安とは、猫が飼い主さんと離れる時には飼い主さんがいないことを不安に感じ、いつもとは違う異常な行動をとることを指します。飼い主さんがいないと猫が不安で暴れてしまったり、粗相をしてしまったり…。
飼い主さんが猫と一緒にいるときにはとらないような行動を、猫がとることを猫の分離不安と呼びます。
猫の精神的な症状の1つとも言えるかもしれませんね。
基本的に飼い主さんと30分以上離れたときに、猫が不安を感じ、いつもと違う行動をすることが続くのであれば猫が『分離不安』になっていると考えていいようです。
◆猫が『分離不安』になる原因は?
一昔前まで分離不安は群れで暮らしていて仲間意識の強い犬によくあるもので、単独行動が好きな猫はあまりならないと言われていました。
しかし最近では分離不安になる猫も増えているといわれています。
猫の飼育数が増え、絶対値が増えたことから分離不安になる猫が増えたという背景もあるそうですが、『完全室内飼い』も分離不安の猫が増えた原因の1つだと言われています。
昭和の時代など、一昔前の猫は放し飼いが当たり前。
可愛がられてはいましたが、今の猫たちのように完全に室内飼いで深くかかわり合いがある人間が飼い主さんだけということが少なかったように思います。
そのため人間がちょっと苦手で、猫として自立した猫が多かったそうです。
しかし今は猫の安全や猫のストレス的にも『完全室内飼い』が推奨されています。
もちろん、私も猫のストレス面や安全面を考慮すると完全室内飼いには大賛成です。
子猫の頃から『完全室内飼い』の猫が増え、早めの避妊・去勢手術の推奨から子猫のような気持ちのままの猫も増えています。
また、完全室内飼いの猫が増えたことで猫と飼い主さんの距離が縮まり、飼い主さんのことを『母猫』のように感じ、常に甘えることに慣れすぎてしまうことも、猫が分離不安になる原因の1つかもしれません。
また、コロナ渦で在宅時間が増えたことにより、猫が1匹でお留守番をする機会自体が減ったことにより、飼い主さんの姿を感じない時に分離不安になる猫も増えていると聞きます。
◆猫の分離不安の症状は?
分離不安の症状は『どのような症状が強くネコに出るのか』は猫により異なります。
代表的な猫の分離不安におちいった際の症状は、過剰グルーミングによる脱毛です。
猫は普段から自分の気持ちを落ち着かせリラックスするためにグルーミングを行います。
しかし、飼い主さんと離れて不安な気持ちが強くなると猫はずっと気持ちが落ち着かないため、グルーミングをやめることができなくなります。
体全体をまんべんなく猫がグルーミングし続けてくれれば、まだ脱毛もしにくいかもしれませんが、分離不安の猫は同じところを舐め続けてしまうことが多いのだとか。
そのため、猫が舐め続けた個所だけが脱毛して毛がハゲてしまう症状がみられます。
その他には、トイレ以外で粗相する猫や、飼い主さんがいないと落ち着かなくなり、周りの物にあたってしまう猫もいると言われています。
部屋を荒らしたり、粗相をしたり…という行動異常だけでなく、猫は分離不安になると飼い主さんを探し続けることも少なくありません。
飼い主さんの留守中にずっと鳴き続ける猫や、トイレも行かず水も飲まず玄関にずっといる猫も多いようです。
また、食欲不振や嘔吐など猫の健康を害するような症状が出ることもあります。
それだけでなく、猫が飼い主さんとの分離不安を感じている最中は、猫の脈拍や血圧は上昇しているそうです。
猫の体調に異変が起こることもあるため、猫の分離不安は早めの改善が必要です。
◆分離不安の猫が出すサイン
分離不安の猫は、飼い主の見ていないところで色々な症状が出るのと同時に、飼い主が在宅中にも不安を表すサインを出すことがあります。
飼い主が在宅している時にも猫が家族について回ったり、家族の姿が見えなくなると鳴き続けたりしている場合は、嘔吐や脱毛がなくても猫が分離不安になっている可能性があります。
注意してみてあげましょう。
◆分離不安になりやすい猫
完全室内飼いで単頭飼育の猫に分離不安は好発します。
普段家族が在宅しており、1匹でお留守番をすることのなかった猫が、急に留守番をしなくてはならない状況になった際にも猫は分離不安を起こしやすくなるそうです。
それだけではなく、飼い主さんから過剰なほどの愛情をもらっている猫は、精神的にも飼い主さんに依存しているため、分離不安になりやすいようです。
また、「1匹のときにすごく嫌で怖いことがあった」と猫の記憶にある場合、飼い主さんと離れることを嫌がるケースも少なくありません。
猫がお留守番をしている最中に地震や雷、工事などがありびっくりした経験があると、一時的に猫が分離不安のような症状を引き起こすこともあるようです。
一時的な症状のことが多いですが、家が猫にとって安心できる場所だと再度猫にわかってもらうことができれば猫の分離不安症状も収まることがあります。
少し様子を見ながら、普段よりも猫を甘やかしてあげましょう。
◆『分離不安』のケアや予防は?
猫の分離不安を治す一番の方法は猫も飼い主さんも精神的に『自立』することです。
猫の分離不安の原因は精神的に猫が自立をしていないことにあります。
猫なのに猫じゃないみたいにベッタリと甘えてくる猫は本当に可愛いです。
我が家の猫も『犬的な猫』だったので気持ちはよくわかります。
しかし飼い主さんが猫に構いすぎ、まるで子供のように過剰に可愛がりすぎると猫は『飼い主さんがいない』という状況に精神的に耐えられなくなってしまうのです。
子供のように愛情を注ぎ、大切に思い育てることは決して悪いことではありません。
ですが、人間の子供でもそうですが過剰に愛情を注ぎ、過保護に育てすぎると子供に悪影響を及ぼします。
過剰に猫に構うことにより、場合によっては猫に精神的な負担を生んでしまいます。
猫が一人になる時間や猫をかまわない時間も作り、徐々に猫を『親離れ』させてあげましょう。
ただし飼い主さんが急に態度を変えてしまっても、猫は分離不安になりかねません。
猫に全力で愛情を注ぐ時間も作りつつ、猫を一人にする時間も大切にしてあげましょう。
いかがでしたか?
コロナ渦で在宅時間が大幅に増えたことで猫のライフバランスにも変化が起き、分離不安になる猫が増えています。
在宅中に、猫との触れ合いが増えるのは、猫にとっても飼い主さんにとっても嬉しいひとときです。
飼い主として猫に依存しすぎるのではなく、あえて猫が1匹でゆっくり過ごす時間もとるようにし、日常生活に戻った時に猫がつらい思いをしなくてもよいようにしてあげてくださいね。
【監修 小禄獣医師】