私が1階の台所で猫のおやつの袋を開けていると、いつの間にか窓の外で地域猫のしらすちゃんがそっと顔をのぞかせていることがあります。
あらまあ。このカサカサという音が、外の庭で寝ている猫の耳に届くなんて、猫はどれだけ耳が良いのでしょうか。。。
実は猫の持つ五感の中で、哺乳類随一と呼ばれているのが猫の「可聴域の広さ」です。大方の哺乳類の可聴域は高周波か低周波のいずれかしか聞き取れないと言いますが、猫は両方お手のモノ。
ネズミの甲高いキーキーと鳴く音から地震の前兆の無音の振動まで、猫は聞き取ることができます。
そんな高スペックな猫の耳。その素晴らしい性能と不思議な話を集めてみました。
■生まれたばかりの子猫は耳が聞こえない
素晴らしい性能を持つ猫の耳ですが、生まれたばかりの子猫は耳が聞こえないといいます。生まれたばかりの子猫は耳の穴がふさがっていて聴覚が存在しないのだとか。
猫の耳、つまり外耳道は生後5日ぐらいから開いて行き、2週間を過ぎたあたりから音がやってきた方向がわかるようになります。
聴覚が完全に発達するのは生後4週間といわれています。
■耳が良すぎてむしろ恐怖を感じやすい
高い音から低い音まで多彩な音を聞き取れる猫の耳。人間の可聴域は20ヘルツから20000ヘルツほどですが、猫は48ヘルツから85000ヘルツの高さまで聞き取れます。
猫の可聴域は11オクターブにも及びますから、人間には聞こえない音まで聞き取れます。そのため、むしろ猫は耳が良すぎるために恐怖を感じやすいのではないか、と推測する人もいます。
例えば隣の家のリフォームが始まった時。突然大きな音がして人間も驚きますが、その大きな音は、猫の耳は人間の6倍の大きさで聞いていることになります。(猫は30デシベル程度の囁き声を人間よりも6倍離れた場所から聞き取ることができます。)
猫が大きな物音に飛び上がったり、花火の音で隠れ家に逃げ込むの理由はそのせい。飼い主さんは、自分の囁き声が猫にとっては大きな怒鳴り声に聞こえるかも、と想像してみることも必要です。
ドアをバタンと閉めたり、大声で叫んだりすると猫をびっくりさせてしまいます。もし猫があなたにいつまでも慣れないとしたら、それはあなたの声や動作の音が大き過ぎて猫が恐怖を感じている可能性があります。
■耳は性格を表す?
飼いならされた動物の大半には共通した身体的特徴がある、ということに気がついたのは生物学者のチャールズ・ダーウィンでした。
その特徴とは、「斑点模様の被毛、小さな歯、幼く見える顔、垂れた耳、丸まった尻尾」など。
この中でも、彼は「垂れた耳」に注目しました。飼いならされた犬、豚、ヤギ、ウサギにはごくあたり前に見られますが、野生の動物ではゾウをのぞいて全くいないのです。
つまり、ピンっと立った耳は野生の証。猫の耳で垂れ耳なのは、遺伝子の突然変異によって軟骨の形状が変わってしまったアメリカンカールとスコティッシュフォールドだけ。
古代エジプト時代から、耳も姿形もまったく変わっていない猫は、現在でも「飼いならされた動物」と完全にいえないそうです。
猫の性格は野生時代のまま。「もし人間に完全に飼いならされたなら、もっと垂れ耳の猫が増えるはずだ」と大型ネコ科の動物の獣医として世界的に有名なロウルク・パーカー博士は語っていました。
■耳は気分のバロメーター
猫の気持ちは耳を見るだけでもわかることがあります。猫はイライラしたときは耳を横に寝かせます。何かに怯えているときは耳を後ろに寝かせてぴたりとくっつけます。
何かに興味津々な場合は耳を前に向けてピンと立たせます。これは余談ですが、馬の場合も耳で気持ちがわかるといいます。
『馬語手帳 ウマと話そう』の著者、川田桟さんによると、馬が耳を横に寝かすのは「争うつもりはありません」という意味。
耳を後ろに寝かすと「なんだお前!やるんかコラ!」という喧嘩上等の状態です。そしてさらに後ろに耳をぴったりつけたら、「蹴ってやる!」「噛んでやる!」という怒りマックスの状態なのだそうです。
■最後に
猫にとって耳はとてもハイスペックな大切な存在。でも他の動物にも共通点があるのかも知れません。
猫と同じ、立ち耳の動物は、やはり耳を見れば気持ちがわかるのかも。ちょっと他の動物も調べてみたいです。