という衝撃的なタイトルの本を上梓したのは、スミソニアン博物館のライター、アビゲイル・タッカー。この本の中で、彼は猫のことを「地球の小さな征服者」と呼んでいます。
日本、アメリカだけではなく、現在は世界中で猫が愛されるようになりました。この本が発行されたのは2018年の1月15日ですが、その時点で世界で暮らすイエネコの数は6億匹以上。
アメリカではペットとして飼われている猫の数は、1988年から2006年の間に1.5倍に増えているそうです。
ネコブームは世界的な現象で、ブラジルでもペットの猫の数は年間100万匹単位で増えているとか。オーストラリアには、ペットの猫の6倍にあたる1800万匹の野良猫がいるそうです。
世界中で愛される猫。なぜ人間は猫を愛するのでしょうか。最近の猫の気になる話題を調べてみました。
■猫が世界の侵入生物種ワースト100に選ばれる(オーストラリア)
完全室内飼いが主流になってきた日本に比べ、まだまだ他の国では野外で自由に猫を遊ばせる国が多いようです。
オーストラリアの科学者たちは、最近大陸で暮らす哺乳動物にとって、「野良猫が地球温暖化や生息地の消失よりも驚異的な存在である」とコメントしました。
自由気ままに外で行動する猫は、オーストラリアでは広範な生態系を傷つけ、絶滅危惧種に分類されるいくつかの動物を絶滅に追いやっていると非難されているそうです。
■ヒトはネコ科の動物に食べられて進化した
人間やヒト科の動物(チンパンジーや猿など)は肉も食べますが、絶対に必要というわけではありません。ベジタリアンになっても暮らしていけますよね。
ところがネコ科の動物は、昔も今も完全な「超肉食動物」。犬の3倍のタンパク質が必要な猫にとって、捕食ターゲットは全て本来なら「哺乳類」なのだそう。
大昔の人間は、ジャングルに隠れ住みながらも超大型のワシやワニ、熊やカンガルーにまで捕食されていたそうですが、中でも人間を大好きな「ご馳走」にしていたのはネコ科の動物だったそうです。
人類学学者、ロバート・サスマンの著書、『ヒトは食べられて進化した』(化学同人出版)によると、人類の祖先とネコ科の動物の暮らす場所が重なり合っていた地域で、ヒト属のものとされる世界最古の完全な形で残っている頭蓋骨は、グルジアのドマニシというチーターのピクニック場のような場所で発見されたそうです。
サスマンは著書の中で、
「ネコ科の動物たちは人類の祖先を洞窟に持ち込んだり、森の中でガツガツ食べたり内臓を抜いた死骸を巣穴に隠したりした。」
と語っています。ネコ科の動物に襲われないために必死で戦ったことで、ヒトは現在のような進化を遂げられたのかもしれません。
■やがて猫は垂れ耳になる?
猫種の中で耳が垂れているのはごく一部。スコテッシュフォールドくらいですよね。ところが近い未来、ほとんどのイエネコの耳は「垂れ耳」になるかも知れません。
犬に比べて猫の体型や気質は大昔からほとんど変わっていないと言います。ワシントン大学セントルイス校の研究者が最近イエネコと猫の祖先であるリビアヤマネコのゲノムを比較したところ、見つかった遺伝子の違いはほんのわずかしかなかったそうです。
科学者が唱える「家畜化症候群」という言葉がありますが、これは人に飼いならされた動物は、
「斑点模様の被毛、小さい歯、幼く見える顔、垂れた耳、丸まった尻尾」
という共通した身体的特徴を持っているという現象。中でも「垂れた耳」は人に飼いならされた動物の特徴で、犬、豚、うさぎはごく当たり前にみられます。野生動物では象を除いたら垂れ耳の動物はいないそうです。
現在のイエネコはほとんどが耳は垂れていません。リビアヤマネコの違いは脳が3分の1に縮小したことと、お腹の被毛が白い猫が出現したことぐらい。
しかしこの「家畜化症候群」にイエネコが当てはまるとしたら、未来の猫は垂れ耳が主流になってもおかしくないそうです。
いかがですか。今まであまり研究対象になりにくかった猫ですが、猫ブームのせいか、世界中の動物学者が猫について研究し、新しい情報を発表しています。
賢くて動物の中でいまだに野生の本能を失わない猫。猫の能力はまだまだ未知数。もしかしたら、人間は本当に「リビングにいるライオン」に征服されてしまうかも知れませんね。