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子供は6歳まで「他人の記憶」を理解できないと判明!


アリゾナ州立大学の研究チームは、心の理論が従来の4歳ではなく、6~7歳になるまで獲得されないという新しい発見を報告しました。この理論は、他者の心を理解し、自分とは異なる視点を持つ可能性を認識する能力です。研究は「マキシ課題」という実験に基づき、子供が4~5歳では他者の心を完全に推察できないことを示しました。特に、箱が増加した場合、子供たちはランダムに答える傾向があり、当てずっぽうで答えていることが明らかになりました。この研究は、大人が子供に過度な期待をせず、彼らの推論能力を考慮した教育が必要であることを示唆しています。

大人には他者の心を推察し、理解する能力があります。

「自分が楽しいから相手も楽しいはず」と考えるのではなく、「自分が楽しくても、相手は楽しくないかもしれない」と相手目線で考えられます。

これは「心の理論」と呼ばれており、「子供が4歳になるまでに獲得する」と知られてきました。

ところが、アメリカ・アリゾナ州立大学(ASU)心理学部に所属するウィリアム・ファブリシアス氏ら研究チームは、心の理論は6~7歳になるまで獲得されないと発表しました。

この新しい事実は、親や周囲の人が子供に過剰な要求をしないよう助けてくれるでしょう。

研究の詳細は、2021年9月28日付の学術誌『Monographs of the Society for Research in Child Development』に掲載されました。

目次

  • 「マキシ課題」は心の理論の証明になるのか!?
  • 箱を3つにすると正解できなくなる
  • 子供は6~7歳になるまで、他者に対して不完全な推論をする
  • 心の理論を獲得するよう適切にサポートできる

「マキシ課題」は心の理論の証明になるのか!?

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Credit:Canva . ナゾロジー
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Credit:Canva . ナゾロジー
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Credit:Canva . ナゾロジー

心の理論を獲得している子供は、「他者が自分とは異なった情報を信じている」ことを認められます。

そのため、心の倫理の有無は、「マキシ課題」と呼ばれる実験で判断できると考えられてきました。

マキシ課題には、「マキシ」と「母親」が登場し、マクシの行動を観測者である子供に推測してもらう、という実験です。

マキシ課題。青の箱と緑の箱のどちらかにチョコレートが入っている
マキシ課題。青の箱と緑の箱のどちらかにチョコレートが入っている / Credit:Depositphotos

マキシ課題

  1. 青い箱と緑の箱がある
  2. マキシは青い箱にチョコレートを入れ、その場から離れる
  3. 母親が現れる
  4. 母親はマキシに気づかれないように、チョコレートを青い箱から緑の箱に移し、その場から離れる
  5. マキシが戻ってきて、チョコレートを探そうとする

子供への質問:マキシは青と緑どちらの箱を探すか?

 

この質問を与えた場合、4歳以上の子供は、「マキシは青の箱を探す」と正しく答えます

ところが4歳未満の子供や自閉症の子供は、「マキシは緑の箱を探す」と答えます。

この時、子供は「自分が母親の行動を知っているので、マキシも同じように母親の行動を知っている」と誤解してしまっています。

マキシの目線で物事を考えることができないのです。

この結果により、これまで研究者たちの間では、「子供は4歳までに心の理論を獲得する」と考えられてきました

ところが今回、その通説を覆す新たな証明がなされました。

箱を3つにすると正解できなくなる

ファブリシアス氏ら研究チームは、「通説だった4歳の段階では、まだ心の理論を獲得できていない」と述べています。

そのことが今回、マキシ課題の箱を1つ増やす実験で証明されました。

マキシ課題【改良版】。赤い箱が加わっている
マキシ課題【改良版】。赤い箱が加わっている / Credit:Depositphotos

マキシ課題【改良版】

  1. 青い箱、緑の箱、赤い箱がある
  2. マキシは青い箱にチョコレートを入れ、その場から離れる
  3. 母親が現れる
  4. 母親はマキシに気づかれないように、チョコレートを青い箱から緑の箱に移し、その場から離れる
  5. マキシが戻ってきて、チョコレートを探そうとする

子供への質問:マキシは青、緑、赤のうち、どの箱を探すか?

 

通説に当てはめると、4歳以上の子供であれば、「青」と答えるはずです。

ところが実際には、4~5歳の子供は、50%の確率で「青」と答え、もう50%の確率で「赤」と答えました。

ファブリシアス氏は、この結果を次のように解説しています。

「箱が2つしかない場合、4~5歳の子供は、マキシの考えをしっかりと理解していなくても、正解できます。

しかし、3つ目の箱を追加すると、緑以外の2つの箱からランダムに答えます。

これにより、子供が当てずっぽうで答えているのが明らかになりました。

そのため、従来のマキシ課題は、心の理論の有無を判断するものではなかったと分かります」

では、どうして心の理論を持っていない子供たちは、このような間違いに至ったのでしょうか?

子供は6~7歳になるまで、他者に対して不完全な推論をする

心の理論を獲得していない子供は不完全な推論になる
心の理論を獲得していない子供は不完全な推論になる / Credit:Depositphotos

研究チームは、マキシ課題【改良版】の結果から、4~5歳の子供がどのようなプロセスで推測するか説明しています。

彼らによると、幼い子供の考えは「見ること」と「知ること」に依存しているようです。

そのため子供たちは次のルールに基づいて判断しています。

  1. 見ることは知ることにつながる
  2. 見ることができない人は、そのことを知らない
  3. 知らない人はいつも間違ってしまう

幼い子供は、マキシ課題においてルール①②から、「マキシは緑色の箱にチョコレートが入っていることを知らない」と結論します。

そしてルール③により、「マキシは必ず間違った選択をする」とだけ考えるようです。

ただし相手の目線に立てていないので、それ以上は考えられません。

そのため、空箱が1つしかない従来のマキシ課題では正解しますが、空箱が2つあるマキシ課題【改良版】では、推測できず「間違っているほうならどっちでもいい」と適当に選んでしまうのです

マキシの心やマキシの持っているであろう記憶を推測できる大人なら、このような間違いはしません。

またチームが続けて行った「母親がチョコレートを移動させない場合」の実験でも、4~5歳の子供たちは「見てないマキシは間違った選択をする」という固定観念にとらわれて、正解できませんでした。

このように、「心の理論は4歳までに獲得される」という通説は覆されました。

では、6~7歳までは心の理論を獲得できないという事実に対して、大人はどんな調整をすべきでしょうか?

心の理論を獲得するよう適切にサポートできる

この研究により、幼い子供たちは、私たちの想定よりも不完全な仕方で物事を判断していると分かりました。

これにより大人は、子供に対して過剰な期待をしないよう助けられます。

4~5歳の子供が間違ったり、人間関係でトラブルを起こしたりするのは能力的にしょうがない場合が多いのです。

時には子供が嘘をついているかのように思える場合でも、それは子供の誤解が原因かもしれません。

トラブルが起きた時「他人の心の動きや」「他人が持っているだろう記憶」を前提に、大人たちが4~5歳の子供を叱ったり問い詰めたりすれば、悲劇がうまれるでしょう。

では大人たちは、心の理論を獲得している最中の4~5歳の子供たちをどのようにサポートできるでしょうか?

子供同士のトラブルは、相手の立場になって考えるよう教育する機会になる
子供同士のトラブルは、相手の立場になって考えるよう教育する機会になる / Credit:Depositphotos

例えば、ある子供が、他の子供から奪ったおもちゃでクラスメイトと一緒に遊んでしまう場合があります。

これは単にその子がわがままなのではなく、心の理論を獲得しきれていないのが原因です。

おもちゃを奪った子供は、「自分もクラスメイトもおもちゃがあって楽しいから、皆も楽しいはず」と考えており、「おもちゃを奪われた子が悲しんでいる」とは考えられないのです。

そんな場合に大人たちは状況を説明してあげる必要があるでしょう。

おもちゃを奪った子供と奪われた子供を一緒に呼び、それぞれがどんな気持ちだったか伝えてもらうのです。

そうすることで子供たちは徐々に相手の目線で考えられるようになり、心の理論を獲得していきます。

子供の教育は大人たちにとって重要な課題です。

こうした根拠に基づくなら、子供たちにとってよりベストな教育を与えられるでしょう。

全ての画像を見る

参考文献

Children Do Not Understand Concept of Others Having False Beliefs Until Age 6 or 7
https://neurosciencenews.com/false-belief-children-19372/

元論文

Perceptual Access Reasoning (PAR) in Developing a Representational Theory of Mind
https://srcd.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/mono.12432

ライター

大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。

編集者

ナゾロジー 編集部

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