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よくしゃべるか聞き役に回るかにも遺伝が関わっていると判明


身の回りには、会話の中心になってよくしゃべる人もいれば、うなずきながら聞き役に回る人もいます。


こうした違いは生まれ持ったものなのでしょうか、それとも育ち方で決まるのでしょうか。


「遺伝か環境か」を数字で測る試みは昔からあり、よく知られているのが双子を比べる研究です。


ところが、家族が同じ家で暮らしていることが、遺伝の影響を実際より大きく見せてしまうおそれがありました。


そこで今回、約50万組のきょうだいの遺伝子データを使い、家庭の影響を取り除いて遺伝の関わりを測り直す研究が行われました。


調べられたのは身長や体格のほか、タバコやお酒、子どもの数、そして「話すほうか、聞くほうか」という性格など14の特徴です。


きょうだいの組ごとにわずかに違う、受け継いだDNAの重なり具合が、「生まれ」の取り分を照らし出したのです。


研究の詳細は、2026年10月26日付で学術誌『Nature Human Behaviour』に掲載されました。


「育った家」の影響を取り除く、きょうだい比べという方法


DNAの二重らせんを描いた図です(アメリカ国立ヒトゲノム研究所)。きょうだい比べの方法では、きょうだいの間でこのDNAの重なり具合が違うことを手がかりにします。
DNAの二重らせんを描いた図です(アメリカ国立ヒトゲノム研究所)。きょうだい比べの方法では、きょうだいの間でこのDNAの重なり具合が違うことを手がかりにします。 / Credit: National Human Genome Research Institute / Wikimedia Commons(Public domain)

遺伝の関わりの大きさは、「遺伝率」という割合で表されます。


ある特徴の人ごとのばらつきのうち、遺伝の違いでどれくらい説明できるかを示す数字です。


ただし、家族の似かたから遺伝率を測るやり方には落とし穴があります。


家族が似るのは遺伝子のせいだけでなく、同じ家で育ち、同じ親の影響を受けるからでもあるためです。


親の遺伝子が家庭の環境を通して子に及ぼす影響(間接的な遺伝の効果)も、遺伝そのものの効果と見分けがつきにくくなります。


科学の実験に参加した一卵性の双子で、1985年、11歳の時の写真です。遺伝か環境かを数字で測る試みでは、このような双子を比べる研究がよく知られています。
科学の実験に参加した一卵性の双子で、1985年、11歳の時の写真です。遺伝か環境かを数字で測る試みでは、このような双子を比べる研究がよく知られています。 / Credit: Cyberguru / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)

そこで研究チームは、きょうだいの間でDNAの重なり具合が違うことに目をつけました。


同じ両親から生まれても、受け継いだDNAがどれだけ重なっているかは、きょうだいの組ごとにばらつきがあるのです。


もしDNAの重なりが大きい組ほど背の高さが似ているなら、その似かたは家庭ではなく遺伝子から来ていると考えられます。


この方法は、育った家庭の影響や、祖先の違う集団ごとの暮らしぶりの差といった、結果をゆがめる要因にほとんど左右されません。


研究チームは、祖先の異なる人々を含む約50万組のきょうだいを分析しました。


アフリカ系とラテンアメリカ系の人々は、さまざまな祖先が混ざり合っていることが多いため、祖先の集団ではなく民族の集団として扱われました。


これまでこの方法では多くの特徴で確かな推定が無く、ヨーロッパ系以外の人々についての推定は一つも無かったのです。


「話すほうか聞くほうか」の遺伝率は、身長と体格のどちらに近い?


おしゃべりをする友人たちです。話すほうに回るか聞くほうに回るかという違いは、生まれ持ったものなのでしょうか、それとも育ち方で決まるのでしょうか。
おしゃべりをする友人たちです。話すほうに回るか聞くほうに回るかという違いは、生まれ持ったものなのでしょうか、それとも育ち方で決まるのでしょうか。 / Credit: Michael Coghlan from Adelaide, Australia / Wikimedia Commons(CC BY-SA 2.0)

研究チームはまず、遺伝率がよく調べられてきた身長と体格指数(BMI)で、方法がうまく働くかを確かめました。


その結果、身長の遺伝率は約70%、BMIは約49%と推定されました。


つまり、家庭の影響を除いても、背の高さの個人差の7割ほど、体格の個人差の半分近くが遺伝の違いと結びついていたのです。


この値は、似た方法を使ったこれまでの研究と食い違いませんでした。


今回は参加者が自分で答えた値を使ったため、遺伝率が少し低めに出た可能性がありますが、自分で答えたデータでも分析に使える質だと分かったのです。


目の色の遺伝率も約45%と、双子研究で報告されたほぼ100%より意外に低く出ており、研究チームは自分で答えたことによる誤差のせいかもしれないとしています。


青い色の虹彩(目の色のついた部分)の写真です。今回の研究では、目の色の遺伝率が双子研究の報告より意外に低く出ました。
青い色の虹彩(目の色のついた部分)の写真です。今回の研究では、目の色の遺伝率が双子研究の報告より意外に低く出ました。 / Credit: JDrewes / Wikimedia Commons(CC BY-SA 3.0)

身長には、もう一つ考えに入れるべき点があります。


人は背の高さが近い相手をパートナーに選びやすく、こうした特徴では、この方法で求めた遺伝率が低めに出ることが知られています。


結婚するカップルです(ウェストミンスターの最高裁判所前)。人は背の高さが近い相手をパートナーに選びやすく、そのため身長のような特徴では、きょうだい比べの方法で求めた遺伝率が低めに出ます。
結婚するカップルです(ウェストミンスターの最高裁判所前)。人は背の高さが近い相手をパートナーに選びやすく、そのため身長のような特徴では、きょうだい比べの方法で求めた遺伝率が低めに出ます。 / Credit: Jordiferrer / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)

他の研究と合わせると、身長のデータは約72万組にのぼりました。


そのうえで夫婦の身長の似かたを仮定して補正すると、今の集団での身長の遺伝率は約84%と見積もられました。


次に研究チームは、行動にかかわる特徴へと分析を広げました。


タバコを吸い始めるかどうかの遺伝率は約34%、お酒を飲む量は約18%でした。


身長には及ばないものの、タバコを吸い始めるかどうかにも、遺伝の違いがはっきり結びついていたことになります。


子どもの数でも、遺伝率は約27%と統計的にはっきりした値が出ました。


子どもを何人持つかは暮らしや人間関係で決まるように思えますが、そこにも遺伝の違いが結びついていたのです。


そして性格を尋ねる「話すほうか、聞くほうか」という質問では、遺伝率は約48%でした。


ウクライナで、子どもの権利を担当する大統領全権代表らを招いて生徒たちが開いた討論会で、話に熱心に耳を傾ける様子です。話すほうか聞くほうかという性格も、今回の研究で調べられた特徴の一つです。
ウクライナで、子どもの権利を担当する大統領全権代表らを招いて生徒たちが開いた討論会で、話に熱心に耳を傾ける様子です。話すほうか聞くほうかという性格も、今回の研究で調べられた特徴の一つです。 / Credit: UNICEF Ukraine from Kyiv, Ukraine / Wikimedia Commons(CC BY 2.0)

推定の誤差の幅は大きいものの、BMIとほぼ同じ水準です。


つまり、よくしゃべるか聞き役に回るかという個人差の半分近くが、家庭の影響を除いても遺伝の違いと結びついていたのです。


ただし、これら行動の項目は、すべての祖先グループで調べられたわけではありません。


病気のなりやすさと、双子研究より低かった遺伝率


タバコを吸う人です(ネパール)。喫煙は、ぜんそくの危険因子の一つとされています。
タバコを吸う人です(ネパール)。喫煙は、ぜんそくの危険因子の一つとされています。 / Credit: Gunjan Raj Giri / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)

研究チームは、生活習慣が危険因子として知られる病気についても調べました。


たとえば、脂肪と糖質の多い食事は2型糖尿病の、喫煙やペットの飼育、食事はぜんそくの危険因子とされています。


推定された遺伝率は、2型糖尿病で約43%、ぜんそくで約34%と、どちらも大きな値でした。


心臓や代謝の病気の負担(自己申告)は約26%、全体的な健康の点数は約15%でした。


自分で答えた運動量は約10%と、低めの推定にとどまりました。


複数のグループで調べた特徴では、2型糖尿病を除いて、祖先グループの間で遺伝率に意味のある差は見られませんでした。


ただし研究チームは、差が見えないのは人数の少ないグループで差を見つける力が弱いためかもしれない、とも述べています。


複数のグループで調べた11の特徴のうち、身長とBMIを除いて遺伝率がはっきり出たのは7つで、ヨーロッパ系ではその7つすべてではっきりした値が出ました。


笑顔を見せる男女のきょうだいです。きょうだいには、DNAの重なり具合とは関係なく、共通して働く影響もあります。
笑顔を見せる男女のきょうだいです。きょうだいには、DNAの重なり具合とは関係なく、共通して働く影響もあります。 / Credit: Celebindiaworld / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)

一方、ラテンアメリカ系のグループで同じようにはっきり出たのは、7つのうち2つだけでした。


もう一つ注目したいのが、DNAの重なり具合とは関係なく、きょうだいに共通して働く影響の大きさです。


タバコを吸い始めるかどうか(ヨーロッパ系)と2型糖尿病のなりやすさでは、この共通の影響が統計的にはっきりと見られました。


この部分には家庭環境だけでなく、似た者どうしが結婚することによる遺伝の影響も含まれうるため、すべてが環境とは言い切れません。


それでも研究チームは、家族の違いを混ぜたこれまでの推定が、この影響のぶんだけ大きく出ていた可能性を指摘しています。


実際、今回の遺伝率は祖先グループの間でよくそろっており、双子を使った研究の値より低いものでした。


推定の精度が十分な特徴で比べると、双子を使った研究の遺伝率は、今回の推定の平均1.7倍でした。


一卵性の双子の姉妹です。家族の違いを混ぜたこれまでの推定では、遺伝率が大きめに出ていた可能性があると研究チームはみています。
一卵性の双子の姉妹です。家族の違いを混ぜたこれまでの推定では、遺伝率が大きめに出ていた可能性があると研究チームはみています。 / Credit: Mackhart / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)

一方で、遺伝子の違いを大勢で網羅的に探す研究(ゲノムワイド関連解析)がこれまでに説明できた分よりは、大きい値でした。


つまり、遺伝の影響は双子研究が示すほど大きくはないものの、まだ特定されていない遺伝の効果が残っている可能性があるのです。


なお、遺伝率は集団の中の個人差を説明する割合であり、一人ひとりの性格や行動が遺伝で決まることを意味するものではありません。


今回の研究が示したのは、遺伝の違いが体の特徴や病気、ふだんのふるまいの違いと結びついているという、家族の中での証拠です。


きょうだいを比べる家族の中の分析でもなお、よくしゃべるか聞き役に回るかというふるまいに、遺伝の違いが顔をのぞかせていたのです。


写真で見る、家族の似かたと人それぞれの違い


並んで座り、おしゃべりをして笑い合う2人の友人です(「アフリカの住まいと暮らし」がテーマの写真の一枚)。遺伝率は集団の中の個人差を説明する割合で、一人ひとりの話しぶりが遺伝で決まるという意味ではありません。
6歳の双子です(インド)。推定の精度が十分な特徴で比べると、双子を使った研究の遺伝率は、今回のきょうだい比べの推定の平均1.7倍でした。
生後9か月の一卵性の双子の男の子です。家族が同じ家で暮らしていることは、遺伝の影響を実際より大きく見せてしまうおそれがあります。
アルディラ家の5人のきょうだいです。同じ両親から生まれても、受け継いだDNAがどれだけ重なっているかは、きょうだいの組ごとに違います。
ワイナリーで話し込む男性たちです(プエブラ州ウィツィランの中心部)。話すほうか聞くほうかの遺伝率は、推定の誤差の幅が大きいことにも注意が要ります。
アジア系の男性の目を正面から写した写真で、薄い茶色の虹彩のまわりに暗い輪がくっきり見えます。目の色の遺伝率が低めに出たのは、参加者が自分で答えたことによる誤差のせいかもしれないと研究チームはみています。
並んで立つきょうだいです(「儀式と習わし」がテーマの写真の一枚)。DNAの重なりが大きいきょうだいほど似ているなら、その似かたは家庭ではなく遺伝子から来ていると考えられます。

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参考文献

Within-family heritability estimates for behavioural and disease phenotypes from 500,000 sibling pairs of diverse ancestries (Nature Human Behaviour)
https://doi.org/10.1038/s41562-026-02599-x

元論文

Within-family heritability estimates for behavioural and disease phenotypes from 500,000 sibling pairs of diverse ancestries
https://doi.org/10.1038/s41562-026-02599-x

ライター

山下 浩介: むずかしい研究を、なるべく分かりやすく伝えたい。専門の言葉はふだんの言葉に置きかえて、身近な例で例える。それで「わかった」「楽しかった」と言ってもらえたら嬉しいです。
好きなのは、通学路や台所や日常の中にある科学。眠っているあいだに記憶が整理される話や、虫の鳴き方に意味がある話のように、読み終わったあとに誰かへ話したくなる研究を探しています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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