「みんな持ってる」は親がいちばん反論しにくい一言です。
スマホとSNSは、子ども時代の形を大きく変えてきました。
スマホはアルゴリズムが蔓延る世界への入り口で、その仕組みは利用者を画面に留めるように作られています。
影響を調べた研究は多いのに、結果はそろっていません。
思春期の脳は通知や「いいね」のような社会的な反応に敏感になる、という総説もあります。
非営利団体サピエン・ラボの研究チームは、13歳になる前にスマホを持った人ほど、若い大人になってからの心の健康が悪い傾向があると発表しました。
163か国の18〜24歳、10万人以上が答えたオンライン調査です。
初めてスマホを持った年齢と、今の心の状態の関連を見ました。
心の状態は、47の項目からなる「マインド・ヘルス指数」という尺度で点数にしました。
うつや不安といった病名ではなく、感情や社会性、考える力を幅広く測る指標です。
13歳で持った人の平均は30点、5歳で持った人は1点。
早いほど低く、13歳より前で下がり方が急でした。
では何がその差を作っているのか。
研究内容の詳細は2025年7月3日に『Journal of Human Development and Capabilities』にて発表されました
目次
- 差の4割は「SNSを始めた年齢」で説明できた
- 関連であって因果ではない、それでも「13歳」を線に
差の4割は「SNSを始めた年齢」で説明できた

研究チームは、スマホを早く持つことと心の点数を結ぶ道筋として、SNSを始めた年齢、ネットいじめ、睡眠の乱れ、家族関係を調べました。
ネットいじめと家族関係の悪さも、スマホを早く持つことと結び付いていましたが、その多くは早くSNSを始めたことの下流にありました。
睡眠の乱れについては、SNSとは別に、スマホを早く持つことと結び付いているようでした。
症状の中身にも、傾向が出ました。
女性で5〜6歳にスマホを持った人の48%が重い自殺念慮を報告し、13歳で持った人では28%でした。
男性では31%と20%。
早く持った人は、攻撃性や現実から切り離された感覚、感情の回復力の低さも多く報告しています。
代表のタラ・ティアガラジャン氏は、よく語られる不安やうつではなく、こうした面に差が出たことに驚いたと話しています。
関連であって因果ではない、それでも「13歳」を線に

この結果は、回帰分析で見つけた関連です。
参加者は今の若い大人で、スマホを持った年齢は本人の回答です。
気をつけるのはスマホを遅らせれば心の健康が良くなる、とまでは言えないことです。
傾向は地域や言語をまたいで一貫し、英語圏で最も大きくなりました。
研究チームはそのうえで、酒やたばこと同じように13歳未満のスマホとSNSを制限する社会的な仕組みを提案しています。
デジタルの知識を学校で教えることと、企業に責任を負わせることも同じ提案に含まれます。
中等学校の授業時間中だけスマホを制限しても、その時期の心の健康の改善はほとんど見られなかったという研究も報告されています。
この調査で使われた尺度には、それ自体の研究があります。
線を引くなら13歳、という数字だけが独り歩きしないよう、この関連の中身を知っておく意味はありそうです。
子供からの「みんな持ってる」への返事が、これでやっと一つ増えました。
参考文献
Getting a smartphone before age 13 linked to worse mental health in young adulthood (PsyPost)
https://www.psypost.org/getting-a-smartphone-before-age-13-linked-to-worse-mental-health-in-young-adulthood/
Protecting the Developing Mind in a Digital Age: A Global Policy Imperative
https://doi.org/10.1080/19452829.2025.2518313
MHQ: constructing an aggregate metric of population mental wellbeing
https://doi.org/10.1186/s12963-024-00336-y
元論文
Protecting the Developing Mind in a Digital Age: A Global Policy Imperative
https://doi.org/10.1080/19452829.2025.2518313
ライター
天道銀河: 科学、歴史、心理、宇宙、生き物、テクノロジーなど、気になるものにはジャンルを問わず首を突っ込む雑食系ライターです。ひとつの分野を深く極めるというより、さまざまな知識を広く集め、意外なつながりを見つけるのが好きです。専門家ほど深くはなくても、好奇心の広さなら負けません。「こんな世界もあるのか」と思えるような、面白くてわかりやすい話題を届けていきます。
編集者
ナゾロジー 編集部
