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高知能のカギは「弱いつながり」にあった――「つながるほど賢い」わけではない


アメリカのノートルダム大学(ND)などの研究チームが831人の脳画像と知能テストの結果を調べたところ、高い知能と結びつく意外な特徴が見つかりました。


高知能の人々は、近くの場所どうしは強く結ばれる一方、遠く離れた場所へは弱いつながりが延びていたのです。


しかも、弱いつながりが、遠くに届くものほど頭のよさとの関わりが強くなっていました。


強固な結びつきだけでなく、一見頼りなさそうな「弱い橋」が重要だったのは、なぜでしょうか。


研究チームは、こうした橋が別々の働きをする場所を結び、新しい問題に合わせて協力相手を変える助けになると考えています。


研究内容の詳細は2026年1月26日に『Nature Communications』にて発表されました。




目次



  • 頭のいい人は、脳のどこが違うのか?
  • なぜ「弱いつながり」が、頭のよさを支えるのか?
  • 賢い脳は「つなぐ」だけでなく「切り替え」も上手い

頭のいい人は、脳のどこが違うのか?


頭のいい人は、脳のどこが違うのか?
頭のいい人は、脳のどこが違うのか? / Credit:Canva

同じ説明を聞いても、すぐにコツをつかむ人がいます。


覚えた知識を、初めて出会う問題にもひょいと応用できる人もいます。


こうした頭のよさの違いは、脳のどこから生まれるのでしょうか。


これまでの有力な知能理論では、脳の前側や頭頂部など、考える働きを担う特定の領域や回路が重視されてきました。


しかし、個々の担当の仕事がわかっても、記憶や注意、言葉の理解などを組み合わせて問題を解く仕組みまでは説明できません。


そこで今回研究者たちは、担当する場所だけでなく、担当どうしの連絡網に注目しました。


健康な若い成人831人について、記憶や推理などのテストから、一人ひとりの「頭のよさ」を表す点数を出しました。


そのうえで、脳のつながり方を手がかりに、その点数をどこまで当てられるかを調べました。


配線の地図と、どの場所が一緒に働きやすいかを重ね、脳全体の通信網として調べたのです。


もし頭のよさの違いを左右する特別な「中枢」があるなら、その部分の情報が決め手になるはずです。


しかし、特定の回路だけを見るよりも、脳全体のつながりを見たほうが、実際の点数に近い答えが出ました。


さらに、回路の情報を一つずつ計算から外しても、点数の当たり具合はほとんど変わりませんでした。


要するに、「知能の中心はここです」と言えるような一つの主役は見つからなかったのです。


しかも、自分の内部のつながりだけでは点数の手がかりにならなかった回路も、ほかの回路とのつながりは役立っていました。


単独では目立たない担当も、「連絡役」として見ると存在感を発揮していたのです。


では、頭のよい人の脳は、どこをどのようにつないでいるのでしょうか。


なぜ「弱いつながり」が、頭のよさを支えるのか?


なぜ「弱いつながり」が、頭のよさを支えるのか?
なぜ「弱いつながり」が、頭のよさを支えるのか? / Credit:Canva

脳のつながりは、どこも強ければ強いほどよいのでしょうか?


もし強さだけで決まるなら、あらゆる場所をがっちり結んだ脳ほど有利なはずです。


答えを得るため、研究者たちは点数の手がかりになったつながりを取り出し、その強さと長さを比べました。


すると、高い知能と結びついていたのは「近くの強いつながり」と「遠くへ延びる弱いつながり」の組み合わせでした。


また弱いつながりは、それが長距離を結ぶものほど、強いつながりでは短距離を結ぶものほど、頭のよさとの関わりが強かったのです。


さらに知能の指標が高い人ほど、少ない中継で情報が届きやすいという傾向がもみえてきました。


ここでいう強さは、神経の太さではなく、脳画像から見積もった場所どうしの結びつきの強さです。


従来の分析では、弱くて長い結びつきを捉えきれないことがあり、今回、配線と活動の情報を組み合わせたのには、その見落としを減らす狙いもありました。


この結果は、町の交通網にたとえるとイメージしやすくなります。


町の中の道が充実していても、隣の町へ渡る橋がなければ、行ける場所は限られます。


逆に、遠くの町につながる橋があれば、地元だけでは手に入らない情報や道具を持ち寄れます。


大切なのは、すべての道を太くすることではなく、違う持ち味のある場所どうしを結ぶことです。


脳でも、目の前の図形を見て、昔覚えた解き方を呼び出すには、別々の担当が情報を持ち寄る必要があります。


研究チームは、遠くを結ぶ弱いつながりが、こうした連携を支える橋になると考えています。


さらに、弱い結びつきは脳の活動に応じて調整しやすく、新しい問題に合わせて協力相手を組み替える助けになるというのです。


弱さは、単なる頼りなさではなく、柔軟さを支える性質かもしれません。


ただ、橋を用意することと、その橋をうまく使うことは別の問題です。


賢い脳は「つなぐ」だけでなく「切り替え」も上手い


賢い脳は「つなぐ」だけでなく「切り替え」も上手い
賢い脳は「つなぐ」だけでなく「切り替え」も上手い / Credit:Canva

いつもの解き方では行き詰まっていた問題が、見方を変えた途端に解けることがあります。


脳にも、同じ連携を続けるだけでなく、状況に合わせて働き方を変える仕組みが必要だと考えられます。


研究チームは、脳を普段とは違う活動状態へ導く「切り替え役」の領域にも注目しました。


画像をもとにその働きを計算で見積もると、切り替え役の特徴も、頭のよさの点数と関係していました。


こうした領域は一か所に集まっているのではなく、脳のあちこちに分布していました。


研究者たちは、これらの調整役が、そのときの課題に必要な担当を呼び集め、情報の流れを整えると考えています。


じっくり考えるべきか、素早く判断すべきかによって、協力の形を変えるわけです。


さらに、点数が高い人ほど、近場のまとまりは密なのに、離れた場所へは短いルートで届く構造を持つ傾向がありました。


仲間内ではしっかり仕事をしながら、外ともすぐに連絡できる。


そんなバランスが、頭のよさと結びついていたのです。


もちろん、脳画像からその人の賢さを100%確実に見抜けるわけではありません。


それでも、この発見は、人間のように柔軟に考える人工知能をつくるヒントになります。


研究に参加したアロン・バーベイ氏らは、人間の脳の設計を、人工知能の開発に生かせると期待しています。


得意な作業をこなす機能を増やすだけでなく、違う状況でもそれらを組み合わせて使える仕組みが重要になるかもしれない、というのです。


頭のよさの秘密は、何もかもを強く結ぶことではなく、強く結ぶところと、柔軟に結ぶところを使い分ける設計にあるのかもしれません。


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元論文

The network architecture of general intelligence in the human connectome
https://doi.org/10.1038/s41467-026-68698-5

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。
大学で研究生活を送ること10年と少し。
小説家としての活動履歴あり。
専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。
日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。
夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

ナゾロジー 編集部

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