マッチングアプリの自己紹介欄には、どこまで自分のことを書くべきなのでしょうか。
一言で終わらせる人もいれば、多くの文章を詰め込む人もいます。
イスラエルのライヒマン大学(Reichman University)などの研究チームは、自己紹介文が主な判断材料となる状況では、「少なすぎず、多すぎない」自己開示が最も相手の関心を引きやすいことを示しました。
研究成果は2026年7月20日付で、学術誌『Current Psychology』に掲載されています。
目次
- ほとんど書かない人は「ミステリアス」ではなく「真剣ではない」と見られる?
- 自己紹介の量は「どんな関係を望む人か」まで変えて見せる
- 大切なのは「十分な情報と余白」のバランス
ほとんど書かない人は「ミステリアス」ではなく「真剣ではない」と見られる?
対面の会話では、表情や声、相手とのやり取りを通して少しずつ印象が作られます。
しかし、マッチングアプリのプロフィールは一方向で静的なため、短い自己紹介文にも大きな意味が生まれます。
研究チームが注目したのは、自分の秘密をどこまで深く明かすかではなく、性格や趣味など、いくつの話題について情報を出すかという「自己開示の幅」です。
実験1には、恋人のいない異性愛者の学生90人が参加しました。
参加者は自分のプロフィールを作成した後、自己紹介の情報量が少ない、中程度、多いという3種類の異性プロフィールを評価しました。
情報が少ない条件は「Cute overall.」という一言だけで、中程度の条件にはユーモアのセンスや思いやり、新しい場所や経験への関心が簡潔に書かれていました。
また参加者は相手の性的魅力や人としての魅力、長期交際と気軽な性的関係への関心を評価し、相手に送るメッセージも作成しています。
その結果、情報が少ない人物は人としての魅力が低く、長期交際への関心が弱く、気軽な性的関係を求めていそうだと判断されました。
ただし、性的魅力の評価と、参加者自身が気軽な性的関係を望む度合いには、3条件で明確な差がありませんでした。
興味深いのは、情報が多い人物ほど長期交際を望んでいるように見えた一方、実際に長期交際の相手として最も関心を集めたのは中程度のプロフィールだったことです。
3人のうち最も好ましいデート相手として選ばれた割合は、中程度が52%、少ない条件が26%、多い条件が22%でした。
自己紹介の量は「どんな関係を望む人か」まで変えて見せる
実験2には恋人のいない学生132人が参加し、情報が少ないプロフィールか、中程度のプロフィールのどちらか一方を評価しました。
少ない条件は「I’m totally worth a chat!(ぜひ一度お話してみましょう!)」という短文で、中程度の条件には性格や運動、コーヒー、海辺の夕日などの情報が含まれていました。
参加者は評価後、プロフィールの人物を演じる実験協力者と5分間のオンラインチャットも行いました。
その結果、中程度の人物は、情報が少ない人物より人として魅力的で、長期交際を求めていそうだと評価されました。
参加者自身も中程度の人物との長期交際をより望み、気軽な性的関係への関心は低くなりました。
分析は、「相手が長期交際を求めていそうだ」という印象が、参加者自身の長期交際への関心と結びつく可能性を示しました。
そして実験3では、恋人のいない異性愛者の学生110人が、自己開示の3段階と「短期的な関係」「長期的な関係」という希望を組み合わせた6つのプロフィールを評価しました。
特に大きな変化があったのは、「短期的な関係を希望する」と書かれたプロフィールです。
この条件では、長期交際を望んでいそうだという評価が、自己開示の少ない条件と中程度の条件では低いままでしたが、情報が多い条件では大きく上昇しました。
参加者自身の長期交際への関心も、情報量が増えるにつれて高まりました。
詳しい自己紹介が、明記された短期志向を和らげ、「より深い関係にも開かれているのではないか」と感じさせた可能性があります。
一方、実験3では中程度が常に最適になる結果は再現されませんでした。
自己開示の効果は、その量だけでなく、交際目的などプロフィール内のほかの情報との組み合わせで変わるのです。
それでは、今回の研究から総合的にどんな理解が得られるでしょうか。
大切なのは「十分な情報と余白」のバランス
今回の結果は、恋愛プロフィールをほぼ空欄にすると、ミステリアスというより、努力不足や関係への消極性と受け取られる可能性を示しています。
一方で、自己紹介文だけが主な判断材料なら、人柄や真剣さが伝わる程度に情報を出しつつ、相手が続きを知りたくなる余地を残すことが、一つの有効な考え方になりそうです。
ただし、研究は理想的な文字数や項目数を示したわけではありません。
また、詳しいプロフィールほど必ず不利になるわけでもなく、短期志向など別の情報がある場合には、詳しい自己開示が開放性や真剣さのシグナルになる可能性があります。
実際に応用するなら、自分の交際目的を正直に示したうえで、性格や関心が伝わる具体的な情報を載せ、すべてを説明し尽くさないことが現実的でしょう。
もっとも、この研究には限界もあります。
今回の参加者は主に若い学生で、大半が異性愛者でした。
研究は実験用プロフィールへの初期反応を調べたもので、実際のマッチングや交際の成立、長続きまで追跡していません。
さらに、参加者が実際にどのような交際を求めていたかも十分には分析されていませんでした。
それでもこの研究は、自己紹介文が人柄の説明にとどまらず、「自分はどのような関係を築くつもりなのか」を伝える手がかりになることを示しています。
恋愛プロフィールでは、すべてを隠すことでも、すべてを語ることでもなく、相手が安心して続きを知りたくなる余白が大切なのかもしれません。
参考文献
New psychology research reveals the “Goldilocks rule” of online dating profiles
https://www.psypost.org/new-psychology-research-reveals-the-goldilocks-rule-of-online-dating-profiles/
元論文
Too much information or not enough? How self-disclosure in online dating profiles influences attraction and relationship intentions
https://doi.org/10.1007/s12144-026-09787-y
ライター
矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。
編集者
ナゾロジー 編集部
