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「失敗できない」若者が35年で急上昇、所得格差との関連が明らかに


「もっと頑張らなければ」「ミスをしたら終わりだ」


そんな感覚を抱く若者は、以前より増えているのかもしれません。


ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)などの研究チームは、米国・カナダ・英国の大学生を対象にした35年分のデータを分析し、若年成人のあいだで完璧主義が上昇していることを示しました。


そしてこの変化は、所得格差や一人あたりGDPといった経済的な条件と関連していました。


この研究は2026年2月28日付の学術誌『Psychological Bulletin』に掲載されました。




目次



  • 若者の「完璧主義」が急上昇している
  • 「失敗できない」という不安は、経済格差と関連していた

若者の「完璧主義」が急上昇している


完璧主義と聞くと、「几帳面」「努力家」「高い目標を持つ人」といった印象を持つかもしれません。


しかし心理学でいう完璧主義は、単なる向上心とは違います。


それは、過度に高い基準を自分に課し、それに届かない自分を厳しく責める傾向を指します。


つまり「うまくやりたい」ではなく、「完璧でなければ自分には価値がない」と感じやすい心理です。


研究チームは、この完璧主義を大きく2つの側面から捉えました。


1つは、自分に高すぎる基準を課し、それを達成しようとする傾向です。


これは「もっと良い結果を出さなければならない」と、自分を内側から追い込むタイプの完璧主義といえます。


もう1つは、失敗や他人の評価を強く恐れる傾向です。


こちらには、ミスへの不安、自分の行動への疑い、そして「周囲の人たちは自分に完璧を求めている」という感覚が含まれます。


特に後者は、不安や抑うつなどのメンタルヘルス問題と強く関わるとされています。


今回、研究チームは、1980年代末から2024年までに集められた完璧主義に関する研究データを統合し、時代によって大学生の完璧主義がどう変わってきたのかを調べました。


分析対象となったのは、米国・カナダ・英国の大学生を対象にした307サンプル、合計8万2939人分のデータです。


参加者の平均年齢は約20歳で、各研究では完璧主義を測定する標準的な心理尺度が使われていました。


そして研究チームは、それぞれの研究で得られた平均得点をデータ収集年と照らし合わせ、完璧主義の得点が直線的に増えているのか、それとも近年になって加速しているのかを統計的に調べました。


その結果、自己志向的な完璧主義、個人的基準の高さ、ミスへの懸念、自分の行動への疑念はいずれも上昇していました。


特に「他人が自分に完璧を求めている」と感じる傾向は、2000年代初頭以降に加速していることが示されました。


では、どの側面が特に深刻で、経済的な環境とはどのように関係していたのでしょうか。


より詳細な結果は次項で見ていきます。


「失敗できない」という不安は、経済格差と関連していた


詳しく見ると、完璧主義の上昇には2つの異なる顔がありました。


まず、自分に高すぎる基準を課すタイプの完璧主義は、35年間でほぼ直線的に上昇していました。


これは、近年の大学生ほど高い基準を自分に課しやすくなっていることを示します。


研究では、この傾向の高さが、一人あたりGDPの低下と関連していました。


経済の見通しが悪く、将来のチャンスが限られているように感じられると、「もっと努力しなければ遅れを取る」という感覚が強まりやすいのかもしれません。


一方で、より注意すべきなのは、失敗や他人の評価を恐れるタイプの完璧主義です。


このタイプの完璧主義は、単に少しずつ増えたのではなく、曲線を描くように加速していました。


中でも「ミスへの懸念」は大きく上昇しており、若者が小さな失敗を単なる失敗ではなく、自分の価値を損なうものとして受け止めやすくなっている可能性が示されています。


さらに研究では、所得格差の拡大が、この「失敗や他人の評価を恐れる完璧主義」の上昇と関連していました。


格差が大きい社会では、学歴や収入、社会的評価の差が将来に大きく響くように感じられます。


これにより、「一度つまずいたら取り返しがつかない」「周囲から低く見られるかもしれない」という感覚が強まりやすいのかもしれません。


もちろん、この研究は経済的圧力が完璧主義を直接引き起こしたと証明したものではありません。


一人あたりGDPや所得格差との関係は相関であり、対象も米国・カナダ・英国の大学生に限られます。


それでも完璧主義と不安・抑うつの関係は、薄れているわけではありません。


「完璧でなければ置いていかれる」と感じさせる社会環境が、若者の心を静かに追い詰めている可能性があるのです。


全ての画像を見る

参考文献

Perfectionism is skyrocketing in young adults and economic pressure might be the culprit
https://www.psypost.org/perfectionism-is-skyrocketing-in-young-adults-and-economic-pressure-might-be-the-culprit/

元論文

Perfectionism is accelerating over time: A cross-temporal meta-analytic review of 35 years of college student data.
https://psycnet.apa.org/doi/10.1037/bul0000518

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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