ポテトチップスや清涼飲料水、菓子パンなど、私たちの生活にすっかり溶け込んでいる「超加工食品」。
これらは単に「栄養バランスが悪い食品」なのでしょうか。それとも、もっと根深い問題をはらんでいるのでしょうか。
米ミシガン大学(University of Michigan)の研究者らは最新の論文で「超加工食品は果物や野菜よりも、むしろタバコに近い性質を持つ」と指摘しました。
研究者たちは、超加工食品が依存や過剰摂取を引き起こすよう工業的に設計されてきた点に注目し、従来の「自己責任」中心の見方に警鐘を鳴らしています。
研究の詳細は2026年2月2日付で学術誌『The Milbank Quarterly』に掲載されました。
目次
- 超加工食品は「依存を生む製品」として設計されてきた
- 「自己責任」では説明できない食環境の問題
超加工食品は「依存を生む製品」として設計されてきた
この研究は、超加工食品(Ultra-Processed Foods:UPFs)とタバコの共通点を、依存科学や公衆衛生の歴史から整理したものです。
論文で強調されているのは、超加工食品が「偶然おいしくなった食品」ではなく、消費量を最大化するために設計されてきた工業製品だという点です。
たとえば、精製された炭水化物と添加脂肪の組み合わせは、脳の報酬系を強く刺激しやすいとされています。
また、食物繊維など本来の食品構造を壊すことで、消化吸収が速くなり、快感が短時間で立ち上がるよう工夫されています。
研究者らは、こうした特徴がタバコ産業におけるニコチン量の調整や吸収速度の最適化とよく似ていると指摘します。
「どれくらい強く効くか」だけでなく、「どれくらい速く効くか」を操作することが、依存を強める重要な要素だからです。
超加工食品は、この点で最小限しか加工されていない食品とは大きく異なると論じられています。
超加工食品の一覧リスト
研究で問題視されている代表的な超加工食品には、次のようなものがあります。
清涼飲料水・エナジードリンク
ポテトチップスやスナック菓子
菓子パン・ケーキ・クッキー
即席麺・カップ麺
加工肉(ソーセージ、ハム、ベーコンなど)
ファストフード(ハンバーガー、フライドポテトなど)
甘味の強いシリアル食品
これらは必ずしも一様に危険というわけではありませんが、精製炭水化物と添加脂肪が多く、食べ過ぎを誘発しやすい製品が特に問題視されています。
「自己責任」では説明できない食環境の問題
もう一つの重要な論点は、超加工食品をめぐる問題を個人の意志や節制だけに帰すことの限界です。
研究者らによれば、現代の食環境では超加工食品があまりにも広く、安価に、手軽に入手できる状態に置かれています。
この状況では「食べない」という選択そのものが難しくなります。
論文では、1950年代のタバコ広告との類似も指摘されています。
当時、フィルター付きタバコは「健康に配慮した製品」であるかのように宣伝されましたが、実際には健康被害を大きく減らすものではありませんでした。
同様に、「低脂肪」「砂糖不使用」といった表示は、超加工食品の本質的な問題である過剰摂取の起こりやすさを覆い隠し、規制を遅らせる可能性があると研究者らは警告しています。
そのため著者らは、超加工食品対策を「食べる側の責任」から「食品産業の設計・販売責任」へと転換すべきだと主張します。
タバコ規制で用いられてきた広告制限や提供環境の見直しといった手法は、超加工食品にも応用できる可能性があるというのです。
この研究が示しているのは、「超加工食品は体に悪いから控えましょう」という単純な話ではありません。
超加工食品が、依存や過剰摂取を起こしやすいよう意図的に設計され、現代の食環境に深く組み込まれてきたという構造そのものが問われています。
食品は生きるために不可欠だからこそ、完全に避けることはできません。
だからこそ研究者らは、タバコ対策と同じように、個人の努力だけに頼らない公衆衛生的な対応が必要だと訴えています。
私たちが日常的に口にしている食品を、改めて「どのように作られ、どのように食べさせられているのか」と考えることが、次の一歩になるのかもしれません。
参考文献
Ultra-processed foods should be treated more like cigarettes than food – study
https://www.theguardian.com/global-development/2026/feb/03/public-health-ultra-processed-foods-regulation-cigarettes-addiction-nutrition
From Tobacco to Ultraprocessed Food: How Industry Engineering Fuels the Epidemic of Preventable Disease
https://www.milbank.org/quarterly/articles/from-tobacco-to-ultraprocessed-food-how-industry-engineering-fuels-the-epidemic-of-preventable-disease/
元論文
From Tobacco to Ultraprocessed Food: How Industry Engineering Fuels the Epidemic of Preventable Disease
https://doi.org/10.1111/1468-0009.70066
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部
