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霊感が強い人は、無意識が現実を“不思議なもの”に見せている


「無人の部屋で誰かの視線」を感じた、疎遠な友だちを急に思い出した翌日その友だちから連絡が来た、胸騒ぎがして実家に連絡したら親が体調を崩していた、世の中には科学では説明できない不思議な体験を訴える人たちが多く存在します。

霊感が強いなんて表現をされることもありますが、なぜ一部の人たちは、こうした不思議な出来事を他の人より頻繁に体験するのでしょうか。

このような現象を、単なる錯覚や思い込みと否定するのではなく、心の仕組みから説明できるのでしょうか。

米国のノースカロライナ大学(University of North Carolina at Chapel Hill)医学部の臨床心理学者 オラファー・S・パルソン(Olafur S. Palsson) 博士は、意識と無意識の結びつきの強さを測る心理測定ツールを開発し、こうした“異常体験(anomalous experiences)”との関連を調査しました。

その結果、“異常体験”を頻繁に報告する人には、無意識の領域と意識の領域の結びつきが強い傾向が見られたというのです。

これは何を意味するのでしょうか?

この研究の詳細は、2025年4月に米国心理学会の科学雑誌『Psychology of Consciousness: Theory, Research, and Practice』に掲載されています。

目次

  • “不思議な体験”はどこから来るのか
  • 「不思議を感じる脳」の正体

“不思議な体験”はどこから来るのか

私たちは、ときに説明がつかない不思議な感覚を体験します。

視線を感じて振り返ったら実際知らない人に見られていた、夢で見たのと同じことが起きる、そんな出来事です。

心理学ではこうした体験を「異常体験(anomalous experiences)」と呼び、どんな人が感じやすいのかを長く調べてきました。

そうした調査の結果から過去の研究は、異常体験を語りやすい人に共通するいくつかの心理傾向を示してきました。

たとえば上述したような、夢で見たことと同じことが現実でも起きたとか、頻繁に目にする数字に実際意味があったなど、偶然の出来事の間に“意味のつながり”を感じる思考は心理学において「魔術的思考(magical ideation)」と呼ばれますが、これは自分の世界に入り込みやすい傾向「没入性(absorption)」や「空想癖(fantasy proneness)」といった特性との関連が報告されていました。

一方で、従来研究には弱点もありました。

多くの調査は「経験があるか、ないか」を一問で尋ねるだけで、どの種類の体験をどれくらいの頻度で繰り返すのか? といった点までは十分に調べられていませんでした。

また、複数の心理特性を“ばらばら”に測ることが多く、それぞれの特性を統合して説明する枠組みが不足していました。

そこで今回の研究者は異常体験を報告する頻度を調査したうえで、この影響を「無意識と意識の結びつきの強さ」という新たな視点から検証してみることにしました。

無意識と意識の結びつきの強さと言われると、それが何を意味するのか分かりづらいですが、それは次のようなことだと考えられます。

たとえば、番号くじを買うとき「なんとなく3を選んだ」とします。

このとき、3を選ぶ理由は無意識の中にあります。少し前に看板で「3」という数字を目にしていた、以前に3を選んだとき良いことがあったなど、本人が覚えていない情報や経験が、選択に影響しているのです。

ただし、こうした無意識の働きは多くの場合、意識に上がることがないため、ほとんどの人は「なんとなくそう思った」とだけ感じます。

一方で、「無意識と意識の結びつきが強い」人は、同じように3を選んだとしても、その感覚がより明確に意識に現れます。

つまり、無意識にある情報や印象が、単なる「なんとなく」ではなく、“意味のある手応え”として意識に浮かび上がる感覚になるのです。

今回の研究はこうした、無意識的プロセスの“意識への浸透度”を新たに開発した質問票で数値化して測定したのです。

異常体験については「13種類の出来事」を定義した質問票で丁寧にたずねました。

パルソン氏はこの検証のために、臨床現場での経験から催眠療法の反応や、催眠を求める傾向を用いて、「無意識と意識の結びつきの強さ」を定量化するTIS(ソート・インパクト・スケール:Thought Impact Scale) という新しい質問票を開発しました。

TISは、先行研究で理論的妥当性と測定の安定性が検証されています。

研究では、このTISと13種に分類された異常体験(UEQ)を経験する頻度 を、3つの方法で別々に調査し検証しました。

異常体験について、既視感、意味のある偶然(シンクロニシティ)、予知夢、人の気配や思考を感じたなど、日常の延長にありうる「不思議」な体験を対象としてます。(エイリアンにさらわれた、霊と交信したなど極端なオカルト体験は、今回の研究対象からは除外されています)

研究の参加者は、大学コミュニティと、年齢や地域を広く含むオンライン一般サンプルを合わせて、延べ約2200人規模で実施されました。

参加者は、異常体験の質問票に加えて、TIS(潜在的つながり性)や、没入性(absorption)、解離傾向(dissociation=意識のまとまりが一時的に緩む状態)、魔術的思考などの関連特性にも回答しました。

「不思議を感じる脳」の正体

調査の結果、無意識と意識の結びつきが強い人ほど、異常体験を多く報告することが明らかになりました。

それも特定の体験に限らず、予知夢、既視感、意味のある偶然(シンクロニシティ)、人の気配を感じる体験など、すべてのカテゴリーで差が見られました。

つまり「不思議な体験をしやすい人」は、世界のあらゆる場面に“つながり”や“意味”を感じ取りやすい傾向を持つことが、統計的に示されたのです。

この関連の強さは数値でも確認されています。

3つの測定(合計約2200人)を通して、TIS(ソート・インパクト・スケール)のスコアが高い人は、低い人に比べて3倍以上の頻度で異常体験を繰り返し報告していました。

参加者の86%が少なくとも1種類の異常体験を何度も経験しており、TISスコアと異常体験の回数のあいだには中〜強い相関(r=.53〜.69)が確認されました。

この関係は、没入性(absorption)や魔術的思考(magical ideation)といった他の心理特性とも重なっていました。

直感を信じる人ほど、偶然の中にも“意味”を感じ取りやすく、無意識の働きが日常の判断や感覚に影響しやすいと考えられます。

パルソン氏は、こうした傾向を「無意識と意識の結びつきが強い人ほど、偶然の出来事の中に“何かのつながり”や“意味”を感じやすい」とまとめています。

興味深いことに、異常体験を多く報告する人は若い世代にやや多い傾向も見られました。

また、精神的に不安定な人が不思議な体験を報告しがちという世間的な印象がよく聞かれますが、今回の研究では精神的不安定さやうつ状態と異常体験との間に直接的なつながりは見られませんでした。

つまり、こうした体験を語ることは病気や異常ではなく、単なる無意識の感じ方に関する個性だと考えられます。

ただ実験方法の解説でも述べたように、この研究が扱った異常体験は、日常の延長で感じられるようなささやかな「不思議な感覚」に限られています。これは、既視感、意味のある偶然、予知夢、人の気配を感じるなどの体験です。

幽霊の目撃や交霊、エイリアンとの接触のような極端なオカルト体験は対象外なので注意しましょう。

この研究の目的は超常現象の検証ではなく、人がどのように世界に意味を感じ取るのかという心の仕組みを理解することなのです。

今回の結果は、霊感体験など「不思議な現象を語る人=錯覚している人」という見方を覆すものです。

今回の研究では、不思議な体験をする人たちは無意識の信号を強く感じやすい性質があり、無意識から生じる「なんとなく」という感覚を、強く後押しされたように受け取る感受性を持っていると述べています。

これが、「霊感」など不思議な感覚の正体なのかもしれません。

不思議を感じる心は錯覚ではなく、人間の無意識の感受性の表れなのです。

全ての画像を見る

参考文献

Study links anomalous experiences to subconscious connectedness and other psychological traits

Study links anomalous experiences to subconscious connectedness and other psychological traits
https://www.psypost.org/study-links-anomalous-experiences-to-subconscious-connectedness-and-other-psychological-traits/

元論文

Anomalous experiences are associated with high subconscious connectedness.
https://psycnet.apa.org/doi/10.1037/cns0000428

ライター

相川 葵: 工学出身のライター。歴史やSF作品と絡めた科学の話が好き。イメージしやすい科学の解説をしていくことを目指す。

編集者

ナゾロジー 編集部

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