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人類初の「太陽の南極画像」をESAが公開!明らかになった”混沌”とは?


2025年3月、欧州宇宙機関(ESA)がアメリカ航空宇宙局(NASA)と共同運用する探査機「ソーラー・オービター」が、人類史上初めて太陽の南極を直接撮影することに成功しました。これまでの太陽観測は地球の軌道面上から行われ、赤道付近しか観測できず、南北の極域は未観測でした。探査機は、太陽の極域を観測可能な軌道に徐々に移行し、黄道面から約17度下の角度から南極を確認。この観測により、極域の磁場が複雑で混沌としていることが明らかになり、太陽活動の未来予測精度が向上すると期待されています。

私たちは毎日空に輝く太陽を目にします。

そして新聞やニュース、学校の理科の教科書にも、鮮明な太陽の画像が数多く掲載されています。

ですが、これらの画像が「どこから撮られたものか」を気にしたことはあるでしょうか?

実は私たちが見慣れている太陽の画像は、ほぼすべて地球の軌道面=黄道面上から撮影されたものであり、太陽の赤道付近しか見えていないのです。

つまり、太陽の北極や南極がどうなっているのか、私たちはこれまで一切見ることができなかったのです。

そんな中、2025年3月、欧州宇宙機関(ESA)が主導し、アメリカ航空宇宙局(NASA)と共同運用する探査機「ソーラー・オービター」が、人類史上初めて太陽の南極を直接撮影することに成功しました。

この観測結果は、2025年6月11日にESAのプレスリリースとして発表されました。

目次

  • 200年研究しても謎だらけ!太陽の極観測は宇宙でも難しい「のぞき見」だった
  • 人類で初めて太陽の極の観測に成功!明らかになった南極の“混沌”

200年研究しても謎だらけ!太陽の極観測は宇宙でも難しい「のぞき見」だった

太陽は地球からわずか約1億5000万キロの位置にある、最も身近な恒星です。

しかしその割には、私たちは太陽の正体について、まだ少ししか知りません。

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太陽の画像はどれも赤道付近のもの。 / Credit:Wikipedia Commons

その理由の1つが、観測可能な位置の制限です。

地球は、太陽の赤道に対して約7.25度傾いた面(黄道面)上に存在しています。

他の多くの惑星や運用中の宇宙船もその傾向は変わらず、赤道からやや傾いた面に位置します。

そのため、どんなに高性能な望遠鏡や人工衛星を使っても、私たちが観測できるのは、太陽の「赤道付近」に限られています。

つまり、これまで人類は、太陽の南極や北極を真正面から見ることはできなかったのです。

とはいえ、太陽の極域には私たちの生活に直結する重大な情報が詰まっています。

たとえば、太陽の磁場はおよそ11年周期で「反転」することが知られており、この磁場の再編が太陽フレアや太陽風の強度と発生時期に深く関与しています。

【太陽活動が極大期に達した】NASAが公式発表「この状態はあと1年は続く」

そして、この反転の舞台となるのが、まさに南北の極域なのです。

ところが、その重要なエリアがずっと未観測でした。

これが太陽観測における大きな空白地帯であり、科学者たちにとっては最大のフロンティアだったのです。

そんな状況に、ついに終止符が打たれました。

2025年3月、ESAの太陽観測衛星「ソーラー・オービター」によって人類史上初の「太陽南極画像」が取得されたのです。

人類で初めて太陽の極の観測に成功!明らかになった南極の“混沌”

では、ソーラー・オービターはどのようにして、この困難な観測を実現したのでしょうか?

その鍵は、「スイングバイ(またはフライバイ)」と呼ばれる宇宙機動技術にあります。

探査機は2020年に地球から打ち上げられた後、金星や地球の重力を何度も利用して軌道を変化させ、徐々に太陽の極域を観測できる軌道傾斜へと移行していきました。

この過程は非常に繊細な操縦を要し、誤差が積み重なると軌道から外れてしまいます。

さらに太陽に近づくにつれ、機体は500度を超える高温に晒され、通信も断続的になるという過酷な条件下での飛行となります。

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公開された太陽の南極画像 / Credit:ESA &NASA/Solar Orbiter/EUI Team, D. Berghmans (ROB)

それでも2025年3月、オービターは黄道面から約17度下の角度から太陽の南極を観測できる位置に到達。

複数の観測機器により、ついに人類は太陽の極域をその目で確認することができたのです。

ESAのディレクターであるキャロル・マンデル氏は、「本日、人類が初めて太陽の極を捉えた画像を公開します」と述べています。

そして取得された画像データから明らかになったのは、南極付近の磁場が予想以上に複雑で“混沌”としているという事実でした。

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太陽の南極での磁気の乱れ / Credit:ESA &NASA/Solar Orbiter/PHI Team, J. Hirzberger (MPS)

通常、磁場は北と南に分かれて整然と配置されるものですが、極域では両極性の磁場がモザイク状に入り乱れていたのです。

この「磁場の混沌」は、太陽極大期(太陽磁気が反転し、最も活発になる時期磁場反転期」ならではの現象です。

そして数年後の太陽極小期にに向けて、磁場がどのように再編されていくのか、そのプロセスを追跡することで太陽活動の未来予測精度が飛躍的に向上することが期待されています。

このように、ソーラー・オービターによる観測は、単なる極域画像の取得にとどまらず、太陽物理学のあらゆる分野に新たな光を投げかける出来事となりました。

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ソーラー・オービターはさらに深い角度で極を捉える予定 / Credit:ESA &NASA/Solar Orbiter

そして何よりも心強いのは、これはまだ「第一歩」に過ぎないという点です。

探査機は今後さらに軌道を傾け、2029年には黄道面から最大33度まで傾いての観測が予定されています。

まさに、太陽という恒星を“あらゆる角度で”見つめる時代が始まっているのです。

全ての画像を見る

参考文献

Solar Orbiter gets world-first views of the Sun’s poles
https://www.esa.int/Science_Exploration/Space_Science/Solar_Orbiter/Solar_Orbiter_gets_world-first_views_of_the_Sun_s_poles

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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