「あと5センチ背が高ければ…」と考えたことはあるでしょうか?
もし自分の身長に不満がある人は、他人をライバル視する傾向が強いかもしれません。
このほど、オーストラリア・カトリック大学(ACU)の最新研究で、自分の身長に不満を持つ人ほど、同性に対する羨望や嫉妬、競争心が強くなることが明らかになりました。
研究の詳細は2025年3月の学術誌『Evolutionary Behavioral Sciences』に掲載されています。
目次
- 身長に不満があると、同性をライバル視するように?
- 現実と理想のギャップが大きいほど…
身長に不満があると、同性をライバル視するように?
人間社会では、背が高いことがしばしば「得」として扱われます。
特に男性において、身長は「支配的」「有能」「魅力的」といった印象と結びつきやすく、恋愛や仕事でも有利に働くとされてきました。
こうした社会的なステレオタイプは、本人の内面にも影響を与えます。
背の低さにコンプレックスを抱く男性は、他の男性より劣っていると感じやすく、自尊心が下がる傾向にあります。
今回の研究では、この「身長への不満」が同性間の嫉妬や競争心とどのように関係するかが詳しく調査されました。

調査では、アメリカ在住の異性愛者302名(男性63%、年齢20〜72才、平均約37才)を対象に、次のような要素が測定されました。
・実際の身長
・理想の身長
・「もっと高くなりたい」という気持ち
・「自分の身長に満足しているか」
・同性への嫉妬・羨望・競争心の強さ
データ分析の結果、予想通り、男性・女性の両方が平均して「今よりも身長が高くなりたい」と感じていました。
また性別間で見ると、女性の方が男性よりも羨望が強い傾向がありましたが、男性の方が実際の身長が高く、かつさらに高くなりたいと望む傾向が強いことも示されました。
そして相関関係を分析したところ、背が低い人、あるいは自分の身長に不満を感じている人ほど、同性に対して羨望、嫉妬、競争心を強く抱く傾向があることがわかったのです。
これらの効果は特に男性で顕著でした。
背の低い(あるいは「背が低い」と感じている)男性ほど、同性への羨望・嫉妬・競争心が高まる傾向にありました。
女性の場合、実際の身長と競争心の間にはそれほど強い関連は見られませんでしたが、「もっと背が高くなりたい」という心理的欲求は競争心と関連していました。
現実と理想のギャップが大きいほど…
さらに研究者たちは「現在の身長」と「理想の身長」のギャップが大きい人ほど、嫉妬や競争心をより強く感じやすい傾向があることを発見しました。
これは「実際の身長」と「その身長に対する心理的な捉え方」の両方が、社会的行動に影響を及ぼすことを示唆しています。

ただし、この研究にはいくつかの注意点もあります。
参加者の多くは欧米の教育を受けたインターネット利用者であり、世界全体の身長観を必ずしも反映していないかもしれません。
また、この研究は相関関係を示したものであり、因果関係を明らかにするものではありません。
「身長への不満が競争心を高める」のか、「競争心の強い人が身長をより気にするようになる」のかは不明です。
チームは今後の研究で、「身長への不満」をよりバランスよく、かつ精緻に測定する尺度が有用だと提案しています。
特に「背が高すぎることが好まれない文化」も視野に入れた調査を行えば、より包括的な理解が得られるでしょう。
また「筋肉をつける」「ヒールを履く」「外科的手術を受ける」など、身長に対する不満が補償行動を引き起こすのかどうかについても、さらなる研究が期待されています。
参考文献
People’s dissatisfaction with their height predicts jealousy and competitiveness, new study finds
https://www.psypost.org/peoples-dissatisfaction-with-their-height-predicts-jealousy-and-competitiveness-new-study-finds/
元論文
Intrasexual envy, jealousy, and competitiveness are associated with height and height dissatisfaction.
https://doi.org/10.1037/ebs0000376
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部