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象サイズの巨大ナマケモノはいかに誕生し、なぜ絶滅したのか?


かつて地球上には象ほどの大きさの巨大ナマケモノが存在していました。アルゼンチンの国立科学技術研究評議会の最新調査によれば、これら巨大ナマケモノは3,500万年前に地球上に出現し、気候変動が彼らの進化に大きく影響を与えました。温暖化が進むと小型化し、寒冷化が進むと再び大型化。結局、約15,000年前に巨大ナマケモノは絶滅しました。研究者たちは、主に人類の進出が彼らの消滅の原因と考えています。人類の狩猟活動が、巨大ナマケモノの生存戦略を脅かした結果、数が減少したとされています。現生するナマケモノはすべて樹上生活者で、6種しか存在しませんが、そのうち2種は絶滅の危機に瀕しています。ナマケモノの進化史の深い理解が今後の保護活動に不可欠です。

木にぶら下がってのんびり過ごす、あの愛らしいナマケモノ。

しかしかつての地球には、象のように巨大なナマケモノが地上をのし歩いていました。

その巨体で木の上の葉を食べ、岩を引き裂き、洞窟を自ら掘って生きていたのです。

そんなモンスター級の巨大ナマケモノはいかに誕生し、そしてなぜ突如として姿を消してしまったのでしょうか?

このほど、アルゼンチン・国立科学技術研究評議会(CONICET)らの最新研究で、3500万年にわたるナマケモノの進化史が明らかにされました。

研究の詳細は2025年5月22日付で科学雑誌『Science』に掲載されています。

目次

  • 誕生初期に「小型化」が起こった理由とは?
  • 巨大ナマケモノの出現、そして絶滅した理由とは?

誕生初期に「小型化」が起こった理由とは?

研究チームは今回、現生種と絶滅種のDNA、化石形状、生活環境、食性、移動様式などのデータを統合し、3500万年以上前までさかのぼるナマケモノの進化系統樹を作成しました。

すべてのデータを組み合わせた結果、ナマケモノのサイズ変化は生息環境、特に気候と密接に関連していたことが明らかになっています。

まずナマケモノの最初の祖先が地球に現れたのは、今から約3500〜3700万年前の南アメリカです。

当初のナマケモノは、現在のグレート・デーン犬ほどの大きさをもつ地上性動物で、樹上生活はしていませんでした。

その後、2000万年近くにわたってナマケモノのサイズはほぼ変化しませんでしたが、そこに大事件が起こります。

現在のワシントン州からアイダホ州、さらにオレゴン州やネバダ州を貫くように、巨大な火山裂け目が発生し、マグマがあふれ出たのです。

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Credit: canva

この火山活動は約75万年にわたって続き、地球は温暖な時代に突入しました。原因は火山由来の温室効果ガスとされています。

このとき、ナマケモノは小型化します。

温暖化によって降水量が増え、森林が広がり、樹上生活に適応した小型ナマケモノの生息環境が増えたためと考えられます。

また、体のサイズを小さくすることは、暑さへの適応手段としても知られています。

その後、火山活動が終息しても温暖な気候は約100万年続き、やがて再び地球は寒冷化に入りました。

そうしてナマケモノは大型化の道を歩み始めるのです。

巨大ナマケモノの出現、そして絶滅した理由とは?

寒冷期に入った地球には過酷な環境が広がりましたが、その中で地上性のナマケモノは木のない場所でもタフに生きることができました。

彼らはアンデス山脈を越え、サバンナ、砂漠、落葉樹林、さらにはカナダやアラスカの寒帯林にも進出したのです。

しかし地上は樹上とは違って、危険がいっぱいです。

過酷な環境への適応のため、地上性のナマケモノたちは体をどんどん大きくし、水分とエネルギーを節約しながら広い領域を移動する能力を得ていきました。

また草原のような開けた場所では、捕食者から身を守る必要があり、体が大きいことが防御手段になります。

こうして誕生した「巨大な地上性ナマケモノ」の代表格がメガテリウムミロドンです。

体重はなんと3〜4トンに達し、立ち上がるとアジアゾウほどの大きさになりました。

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メガテリウムの復元図/ Credit: ja.wikipedia

「彼らの見た目はグリズリーベアのようでしたが、大きさはその5倍もありました」と研究者は話します。

これらモンスター級の巨大ナマケモノは自分で洞窟を掘ることもでき、絶滅種を含む哺乳類の中でも最大級の爪を使って、硬い地面や岩を掘り進めていたのです。

では、巨大ナマケモノたちはなぜ姿を消してしまったのでしょうか?

その決定的な転換点は、今から約1万5000年前に訪れました。

この時期、地球は氷期から間氷期へと移行し、気候にも変動が起きましたが、研究者たちは「気候変動だけでは説明がつかない」と指摘しています。

その中で、巨大ナマケモノを衰退させた真の原因として考えられるのが、人類の台頭です。

ちょうどこの頃、人類がアジアからアメリカ大陸へと渡りはじめました。

道具を使い、集団で狩りを行う人類にとって、動きが鈍く防御手段にも乏しい巨大ナマケモノは格好の獲物でした。

象ほどの巨体も、石器と戦術の前には無力だったのです。

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巨大ナマケモノの爪化石/ Credit: Florida Museum(2025)

地上性ナマケモノたちは次々と狩猟の標的となり、北米から南米、カリブ海の島々に至るまで、急速に数を減らしていきました。

彼らが築き上げた「巨体による成功の戦略」は、皮肉にも人類という新たな捕食者の出現によって崩壊したのです。

一方、森林の樹冠でひっそりと暮らしていた小型の樹上性ナマケモノは、人類の目が届きにくい場所にいたために比較的生き残ることができました。

現在、ナマケモノとして存在するのはたったの6種であり、そのすべてが樹上性です。

ただ、木々に隠れることで生き延びた彼らも決して安泰ではありません。

現在も6種のうち2種は絶滅危惧種に指定されており、森林伐採や気候変動の影響によって、存続が脅かされています。

ナマケモノを適切に保護するためにも、今回のような進化史の理解をさらに深めることが重要となるでしょう。

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参考文献

Sloths The Size of Elephants Roamed America, Before Abruptly Vanishing
https://www.sciencealert.com/sloths-the-size-of-elephants-roamed-america-before-abruptly-vanishing

Scientists have figured out how extinct giant ground sloths got so big and where it all went wrong
https://www.floridamuseum.ufl.edu/science/scientists-have-figured-out-how-extinct-giant-ground-sloths-got-so-big-and-where-it-all-went-wrong/

元論文

The emergence and demise of giant sloths
https://www.science.org/doi/10.1126/science.adu0704

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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