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コーヒーを飲む習慣があると「カフェイン抜きでも認知機能が向上する」と判明


スロベニアのリュブリャナ大学医療センターの研究によると、日常的にコーヒーを飲む人はカフェインレスであっても、カフェイン入りと同様に認知機能が向上することが分かりました。実験では、20名の大学生がカフェイン入りコーヒーとデカフェ(カフェインレスコーヒー)を飲んだ場合の認知機能を比較しましたが、両方で同様の反応速度向上が見られました。この結果は、コーヒーを飲む行為そのものが脳を覚醒させる可能性を示唆しています。今後の調査が必要ですが、この成果はカフェインの弊害を避けつつ、習慣だけで認知機能を維持できる可能性を開くものとして注目されています。

目覚めの一杯、仕事前の一杯、昼休みの一杯……。

現代人は一日に何杯もコーヒーを口にし、そのたびに頭が冴え、集中力が高まる感覚を覚える人は多いはずです。

そして、この「冴える感覚」は、コーヒーに含まれるカフェインのおかげであると考えるのが常識でした。

しかしスロベニア・リュブリャナ大学医療センター(UMC)の最新研究で、驚くべき事実が明らかにされています。

実験によると、習慣的にコーヒーを飲んでいる人は、カフェインが含まれていないコーヒーを飲んだ場合でも、脳波や反応時間といった認知機能において、カフェイン入りと同じような効果が得られていたのです。

頭のスイッチを入れるのは「カフェイン」ではなく、コーヒーを飲むという「習慣」なのかもしれません。

研究の詳細は2025年1月30日付で科学雑誌『Heliyon』に掲載されています。

 

目次

  • 脳にスイッチを入れるのは本当に「カフェイン」なのか?
  • カフェインレスでも認知機能はUPできる

脳にスイッチを入れるのは本当に「カフェイン」なのか?

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Credit: canva

コーヒーは今日、世界中で毎日20億杯以上も消費されている、最も広く親しまれた飲料のひとつです。

そしてその人気の秘密は、多くの人が感じる“覚醒効果”にあります。

この効果の主成分とされているのがカフェインです。

カフェインは中枢神経を刺激し、眠気を抑え、集中力や反応速度を高めることが知られています。

実際に、これまでの研究でもカフェインの摂取が注意力、処理速度、問題解決能力などの向上につながることが確認されてきました。

しかし近年注目されているのは、その効果のすべてがカフェインの直接作用とは限らないという視点です。

特に、コーヒーを日常的に飲んでいる「習慣者」においては、香り、味、温かさ、そして飲むという行動そのものが脳に影響を与える可能性が指摘されつつあります。

いわば、「カフェインが効いてくる」という期待や、それにまつわる行動様式(=儀式)が、パブロフの犬のように、脳を“目覚めさせるスイッチ”として働いているのではないかという仮説です。

このような背景のもと、スロベニアの研究チームは「本当に覚醒をもたらしているのはカフェインか、それともコーヒーを飲む習慣か?」という問いに、実験的に挑みました。

カフェインレスでも認知機能はUPできる

実験対象となったのは、1日に1~3杯のコーヒーを習慣的に飲んでいる健康な大学生20名(男女10名ずつ)でした。

被験者たちはランダムに「カフェイン入りのコーヒー」または「デカフェ(カフェインなし)」を与えられました。

しかし、どちらも見た目・香り・味が同じデカフェをベースに作られており、カフェイン群には後からカフェイン粉末を添加しています。

どちらを飲んだかは被験者にも研究者にも伏せられる条件で行われました。

その後、心拍数、血圧、脳波(EEG)を測定しながら、「暗算テスト」や「聴覚反応テスト」などの認知機能評価を行いました。

すると、以下のような驚きの結果が観察されたのです。

・心拍数の低下と血圧の上昇は、カフェイン群・プラセボ群ともに見られ、差はなかった

暗算テストでは、正答率や回答数において両グループに有意な差はなかった

・聴覚の反応速度も両群で改善しており、わずかに反応速度が高まっていたのはカフェイン群でしたが、プラセボ群でも明確な傾向が見られた

・脳波解析では、カフェイン群で「P3成分(注意・判断に関与)」の上昇が有意に見られたが、プラセボ群でも同様の変化が一部確認された

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Credit: canva

チームはこれらの結果から、コーヒーを習慣的に飲んでいる人は「コーヒーを飲む」という行為だけで、ある程度まで脳が覚醒状態に入る可能性があると指摘しています。

この明確な因果関係はまだ明確ではありませんが、現時点で、プラセボ群の反応速度向上は「自分はカフェイン入りを飲んでいる」という期待に基づく条件づけられた反応によるものと考えられています。

となると、普段飲むコーヒーを自分の意志でカフェインレスに切り替える場合は、「自分がカフェイン抜きを飲んでいる」ことに気づいているため、もしかしたら認知機能の改善効果が見られなくなるかもしれません。

その点は今後の調査が必要です。

しかし今回のように「カフェインレスコーヒーでも認知機能の改善効果が見られた」のは驚くべき成果です。

カフェインはあまり過剰に摂取しすぎると、心拍・血圧の上昇、利尿作用と脱水、不眠・睡眠の質の低下、不安・イライラ・焦燥感、依存症などの弊害が現れる可能性があります。

なので例えば、パートナーに準備する朝食のコーヒーをこっそりカフェインレスにすると、認知機能の向上効果はそのままに、パートナーの心身の健康を改善できるかもしれません。

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参考文献

New research shows decaf coffee can mimic caffeine’s effects in habitual drinkers
https://www.psypost.org/new-research-shows-decaf-coffee-can-mimic-caffeines-effects-in-habitual-drinkers/

元論文

The complexity of caffeine’s effects on regular coffee consumers
https://doi.org/10.1016/j.heliyon.2024.e41471

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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