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「蜂の子」の親バチは鳥や哺乳類を捕食していたと判明!


神戸大学と岡山大学の研究により、シダクロスズメバチの幼虫として食べられる「蜂の子」は、昆虫だけでなく、鳥や哺乳類など多様な脊椎動物を餌としていることが判明しました。DNAメタバーコーディング技術を用いた解析で、324種もの生物が食餌として特定され、その中には驚くことに、鳥類や哺乳類のDNAも含まれていたのです。地元の養蜂家たちの飼育方法も科学的に裏付けられ、野生産と飼育産の蜂の子では味が異なるという地域の知識が検証されました。 調査は更に広い範囲で続けられ、季節や地域による食餌の変化が詳しく探られる予定です。

みなさんは「蜂の子」を食べたことがあるでしょうか?

蜂の子は長野県や岐阜県などの中部地方で古くから親しまれてきました。

虫ぎらいの人は気味悪がりますが、実際に食べてみると甘くて美味しいことで有名です。

しかし最近、そんな「蜂の子文化」の裏に、意外な捕食行動が隠されていたことが明らかになりました。

神戸大学と岡山大学の最新研究で、蜂の子の正体である「シダクロスズメバチ」は昆虫だけでなく、鳥や哺乳類などの脊椎動物も餌として捕食していることが判明したのです。

さらにその野生種の食生活が、飼育種との味の違いを生み出していました。

研究の詳細は2025年5月14日付で科学雑誌『Journal of Insects as Food and Feed』に掲載されています。

目次

  • 蜂の子の親は何を食べているのか?
  • DNA解析で判明!本当に鳥や哺乳類を食べていた

蜂の子の親は何を食べているのか?

中部地方を中心とした日本の里山では、シダクロスズメバチの幼虫を「蜂の子」として食べる文化が根づいています。

これらの蜂は「巣を採って終わり」ではなく、時に愛好家たちの手で飼育され、与える餌によってより大きく、より美味しく育てられることもあります。

この文化は戦後の食糧難時代にも重宝され、栄養価の高い貴重なタンパク源として評価されてきました。

とくにシダクロスズメバチは「大きく育つ」「味がよい」として重宝されており、現在も地域住民の間で「蜂の子飼育」は続けられています。

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山中に仕掛けた餌を巣に持ち帰るシダクロスズメバチの働き蜂/ Credit: 岡山大学 –DNA解析によりスズメバチの多様な食餌の習慣が明らかに―蜂飼育者の餌選択における経験知に科学的裏付け―(2025)

ところが、シダクロスズメバチが自然界で何を餌としているのか、実はあまり詳しく知られていませんでした。

1970年代に行われた調査では、昆虫を中心に54種が記録されましたが、それ以降の本格的な研究は長らく行われておらず、半ば飼育者の“経験と勘”によって飼育が続けられてきたのです。

そうした中、地元の飼育者たちは鶏肉や鹿肉などの“肉”を与えることで巣を大きく育ててきました。

彼らは実際に、野生のスズメバチが小鳥や小動物を捕食する場面を目撃しており、独自の知見に基づく飼育方法を実践していたのです。

ただこうした地元民の報告はあくまで主観的なものでしかなく、客観的な科学的証拠は得られていなかったのです。

そこで今回の研究は、こうした“経験知”が科学的に正しいかどうかを初めて検証しました。

DNA解析で判明!本当に鳥や哺乳類を食べていた

研究チームは、岐阜県と長野県に存在するシダクロスズメバチの巣を対象に、計12巣(野生巣5、飼育巣7)から終齢幼虫52個体を採取し、腸内に残された餌生物のDNAを分析しました。

使った方法は「DNAメタバーコーディング」と呼ばれるもの。

特定の遺伝子領域を解析することで、どのような生物が餌として取り込まれたかを特定することができます。

その結果、なんと事前の予想より遥かに多い合計324種もの餌生物が同定されました。

さらに驚くべきことに、その内訳には予想通りの昆虫やクモに加え、鳥類、哺乳類、両生類、爬虫類、魚類などの脊椎動物まで含まれていたのです。

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シダクロスズメバチの飼育の様子/ Credit: 岡山大学 –DNA解析によりスズメバチの多様な食餌の習慣が明らかに―蜂飼育者の餌選択における経験知に科学的裏付け―(2025)

注目すべきは、すべての巣から鳥類のDNAが、またほとんどの巣から哺乳類のDNAが検出されたことです。

これは鳥や哺乳類がシダクロスズメバチにとって“補助的な餌”ではなく、重要な捕食対象となっていることを意味します。

さらに飼育巣では、与えられた鶏肉や鹿肉のDNAが多く検出されており、人が与えた餌が自然界の捕食行動の一部を代替している様子が読み取れました。

また、地域の蜂飼育者たちへのアンケート調査では、80%以上の人が「蜂が脊椎動物を捕食する場面を見たことがある」と答え、58%が「野生巣産と飼育巣産では味が違う」と感じていました。

つまり、野生と飼育では餌の違いによって味にちゃんとした違いが出ていたようなのです。

蜂の子の味は、何を食べて育ったか=どのような餌を与えられたかに影響されていると考えられます。

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飼育用に吊るされた鶏肉、鶏レバー、鹿肉/ Credit: 岡山大学 –DNA解析によりスズメバチの多様な食餌の習慣が明らかに―蜂飼育者の餌選択における経験知に科学的裏付け―(2025)

このことは「蜂の子」が単なる食材ではなく、里山という自然環境の“味”を反映する存在であることを物語っています。

チームは今後、季節や地域を拡大した調査を進めていく予定です。

たとえば、春や夏の捕食対象はどう変化するのか、また他の地域では何を餌としているのかを明らかにすることで、より包括的な生態理解が進むと期待されています。

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参考文献

DNA解析によりスズメバチの多様な食餌の習慣が明らかに―蜂飼育者の餌選択における経験知に科学的裏付け―
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id1385.html

元論文

Unravelling the dietary ecology and traditional entomophagy of Vespula shidai in central Japan: insights from DNA metabarcoding and local practices
https://doi.org/10.1163/23524588-bja10201

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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