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”生きた”シーラカンスの撮影に成功!インドネシアの水深144mで優雅に泳いでいた


2024年10月、インドネシアのモルッカ諸島近海で、フランスの海洋探査団体「Unseen Expeditions」のダイバーが水深144メートルでインドネシア・シーラカンスを直接観察・撮影しました。この発見は、シーラカンスの生息域や行動パターンに新たな視点を提供し、特に日中に開けた場所で確認されたことが従来の定説を覆しました。シーラカンスは「生きた化石」とも称され、現存する2種はいずれも絶滅危惧種。この成果は、モルッカ諸島という新しい生息地の確認や、シーラカンスの行動の柔軟性を示しています。今後、さらなる研究によって未知の個体群や新たな系統の発見が期待され、保護政策の推進も必要とされています。この発見は、自然の驚異を再認識させるもので、未来の探査への希望を膨らませます。

もし、あなたのすぐ足元の海の奥底に、4億年もの間ほとんど姿を変えずに生き続けている“恐竜以前の魚”が今も静かに暮らしているとしたら、信じられるでしょうか?

2024年10月、インドネシア・モルッカ諸島沖にて、フランスの海洋探査団体「Unseen Expeditions」のダイバーが、水深144メートルという極めて深い海で、野生のシーラカンスを目撃

自然環境下で直接撮影することに成功しました。

この発見により、これまでの生息域や行動パターンに関する定説が見直され、生態研究に新たな視点がもたらされることになりました。

この研究成果は、2025年4月23日付の科学雑誌『Scientific Reports』に掲載されました。

目次

  • 現存する「生きた化石」シーラカンスは2種
  • インドネシアのモルッカ諸島の水深144mで「インドネシア・シーラカンス」の直接撮影に成功

現存する「生きた化石」シーラカンスは2種

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Latimeria chalumna。ウィーン自然史博物館に収蔵されている保存標本 / Credit:Wikipedia Commons

シーラカンスは「生きた化石」の代名詞とも言える魚です。

化石記録によれば、デボン紀(約4億年前)に出現し、約6650万年前の大量絶滅を境に、ほとんどの種が絶滅しました。

しかし、その一部は生き残り、今日まで姿をとどめています。

かつてはすべて絶滅したと考えられていましたが、1938年に南アフリカ・チャルムナ川沖で偶然捕獲された「ラティメリア・カルムナエ(学名:Latimeria chalumnae)」の発見が、科学界に衝撃を与えました。

この魚はシーラカンスの仲間だったのです。

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シーラカンスの一種。Latimeria chalumnae / Credit:Wikipedia Commons

さらに1997年には、インドネシア・スラウェシ島近海で第2の現存種「ラティメリア・メナドエンシス(学名:Latimeria menadoensis)」も確認され、これがいわゆる「インドネシア・シーラカンス」です。

この2種はいずれもIUCNのレッドリストにおいて絶滅危惧種に分類されています。

とはいえ、これらの魚は極めて深い海域(水深200~700mと考えられてきた)に生息し、観察は容易ではありません。

そのため、これまでの研究は主に遠隔操作の無人探査機などに頼ってきました。

そんな中でのインドネシア・シーラカンスの自然環境下におけるダイバーによる直接観察は、まさに前例のない快挙でした

人類が自らの目で深海の「生きた化石」を捉えた瞬間だったのです。

では、いったいどのようにして、この“奇跡の出会い”は実現したのでしょうか?

インドネシアのモルッカ諸島の水深144mで「インドネシア・シーラカンス」の直接撮影に成功

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発見されたのはインドネシアのモルッカ諸島沖 / Credit:Alexis Chappuis(UNSEEN)et al., Scientific Reports(2025)

調査が行われたのは、インドネシアのモルッカ諸島北部沖。

この地域は、スラウェシ島とニューギニア島の中間に位置し、これまでインドネシア・シーラカンスが確認されたことは一度もありませんでした。

フランスのUnseen Expeditionsは、2020年からこの地域でおおよそ30〜150mの海域を対象とした継続調査を行ってきました。

そして2024年10月、調査ダイバーは深さ152mに到達したのち、浮上を開始。

144m地点で偶然シーラカンスの姿を捉えます。

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偶然、生きたインドネシア・シーラカンスを発見 / Credit:Alexis Chappuis(UNSEEN)et al., Scientific Reports(2025)

午前9時、複雑な火山性地形の岩の上に、体長約1.1メートルのシーラカンスが静かにホバリングしていたのです。

その魚体は、洞窟の中ではなく開けた岩礁の上に現れており、「日中は暗所に潜む」というこれまでの定説とは異なる行動を見せていました

ダイバーたちはその特徴的な白斑模様を高解像度で撮影しています。

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自然環境下における直接観察に成功 / Credit:Alexis Chappuis(UNSEEN)et al., Scientific Reports(2025)

そして翌日に再び同じ場所に戻ると、その場所から数メートル上の地点で、同じ個体を発見することができました。

この成果により、モルッカ諸島にもインドネシア・シーラカンスが生息していること(これまで知られていなかった地域)、個体行動における柔軟性(日中に開けた場所に姿を見せる)を知ることができました。

研究者らは、「この個体1匹だけがこの広大な海域に生息しているとは考えにくい」と述べており、新たな個体群の存在、あるいは未知の系統が隠れている可能性も視野に入れて調査を進めています。

今後は、これらの魚の生息環境を保護しながら、より深い理解を目指す研究が進められることが期待されます。

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シーラカンスの生態にたいする理解も深まる / Credit:Alexis Chappuis(UNSEEN)et al., Scientific Reports(2025)

観光や経済活動による圧力からこの貴重な生態系を守るためには、現地社会と連携した保全政策の推進も求められるでしょう。

4億年もの間、ひっそりと深海に生きてきたシーラカンス。

その姿を人間が自らの目で、自然のままに捉えることができた今回の発見は、科学にとっても人類にとっても大きな前進です。

同時に、それは「知られざる世界にはまだこんなにも驚きが残されている」という希望の証でもあります。

未来の探査がどんな生命と出会わせてくれるのか、今後の報告も楽しみです。

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元論文

First record of a living coelacanth from North Maluku, Indonesia
https://doi.org/10.1038/s41598-025-90287-7

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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