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翼の中にローターを内蔵した「変形航空機」が飛行テストに成功


カナダの航空ベンチャー「Horizon Aircraft」は、新技術「ファン・イン・ウィング(Fan-In-Wing)」を搭載した革新的な飛行機「Cavorite X7」のプロトタイプによって、世界初の垂直離陸から巡航飛行への移行を成功させました。この飛行機は、翼内部に隠されたリフトファンがスライド式パネルを開いて垂直に離陸し、その後ファンを格納して高速で巡航飛行を行うことができる画期的な構造を持っています。ハイブリッド推進システムにより、燃料効率が高く、最大巡航速度は約450km/h、航続距離は約800kmに達する見込みです。また、災害現場や都市部、医療搬送など幅広い用途での活用が期待されています。

「空中で翼が変形し、内部から垂直離着陸用のローターが現れる」


思わず目を奪われ、心が湧きたつようなデザインの新しい飛行機が登場しました。


まるでSF映画から飛び出してきたかのようなその機体は、カナダの航空ベンチャー企業「Horizon Aircraft(ホライゾン・エアクラフト)」が開発したCavorite X7(カボライトX7)


2025年5月、世界で初めて、翼内部にリフトファンを搭載した「ファン・イン・ウィング」構造の無人大型プロトタイプ機による、垂直離陸から巡航飛行へのモードチェンジに成功しました。


まさに次世代航空機の歴史が動いた瞬間です。




目次



  • 翼の中にファンが隠れる! 美しさと機能を兼ね備えた「ファン・イン・ウィング」技術が実現
  • 「Cavorite X7」サブスケールプロトタイプが「世界初の飛行テスト成功」

翼の中にファンが隠れる! 美しさと機能を兼ね備えた「ファン・イン・ウィング」技術が実現


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翼の中にファンを内蔵するという新発想 / Credit:Horizon Aircraft

Cavorite X7の最大の特徴は、翼の中にファンを内蔵するという革新的な構造にあります。


この設計は「ファン・イン・ウィング(Fan-In-Wing)」と呼ばれ、航空機の常識を覆す技術です。


離着陸時には、主翼上部のパネルがスライドして開き、内部に格納された14基の電動リフトファンが露出します。


このファンが強力な上昇気流を生み出し、ヘリコプターのように真上へ離陸。


空中で十分な高度を確保すると、ファンを収納してパネルが閉じ、今度は通常の固定翼機のように高速巡航を開始します。


この2つの飛行モードの完全な切り替えを実現できた機体は、現時点で世界にCavorite X7しか存在しません。


ファンを格納することで空気抵抗が大幅に減少し、エネルギー効率が飛躍的に向上


これが従来のeVTOL(電動垂直離着陸機)との決定的な違いなのです。


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巡行飛行ではファンが隠れる / Credit:Horizon Aircraft

さらに、この機体にはハイブリッド推進システムが搭載されています。


後部にはガスタービンエンジンがあり、飛行中はこのエンジンがプロペラを回しながら、同時に発電機を駆動して電動ファン用のバッテリーを継続的に充電する仕組みになっています。


そのため、着陸後すぐに次の離陸が可能で、充電のために地上で長時間待つ必要がありません。


このシステムにより、最大巡航速度は約450km/hに達すると想定されています。


航続距離は予備燃料を含めて約800kmとなっています。


また、パイロット1名と乗客6名を乗せることができ、あるいは最大で680kgの荷物を積載することが可能になる予定です。


このように、Cavorite X7はeVTOLの常識を超えた性能の実現を目指しています。


都市部での空の移動だけでなく、災害現場、医療搬送、軍事用途など、過酷な条件下でも対応できる高い柔軟性も持ち合わせることでしょう。


それでは、プロトタイプが実際に変形して飛行する様子を見てみましょう。


「Cavorite X7」サブスケールプロトタイプが「世界初の飛行テスト成功」


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美しいモードチェンジ。テスト飛行に成功 / Credit:Horizon Aircraft(YouTube , 2025)

2025年5月、Cavorite X7の大型プロトタイプはついに垂直離陸から前方への巡航モードへの完全遷移飛行に成功しました。


このテストは、実用化に向けた最も重要なマイルストーンの一つでした。


この時点で使われたのは、実寸大ではない大型プロトタイプですが、飛行中に主翼パネルがスライドし、内蔵ファンが展開・格納される一連の動作をすべて正確に実行しました


しかも、飛行は極めて安定しており、安全面でも高評価を得ています。


この成功を受けて、Horizon Aircraftはフルスケールの有人機を建造中であり、量産と型式認証(航空当局による機体承認)に向けた準備を加速させています。


将来的には無人化バージョンや物資搬送特化型など、多彩な派生型が開発される可能性もあります。


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ハーフイサイズのプロトタイプ。今後、フルスケール有人機の開発に移行 / Credit:Horizon Aircraft

eVTOLの世界では、都市間モビリティが注目されがちですが、Cavorite X7はより長距離、より高負荷、より過酷な環境にも耐えうる機体として位置づけられています。


今回の飛行テスト成功は、単なる技術実証にとどまりません。


「翼の中にファンを格納する」という未来的なコンセプトを、実際に空で使える現実的な技術にまで昇華させた、航空技術史に残る偉業といえるでしょう。



全ての画像を見る

参考文献

Split-wing aircraft makes world-first fan-in-wing transition flight
https://newatlas.com/aircraft/horizon-cavorite-x7-makes-history/

Horizon Aircraft Achieves Historic Transition to Forward Flight
https://feeds.issuerdirect.com/news-release.html?newsid=8395104887948168&symbol=HOVR

Real world ready. The hybrid eVTOL that aims higher.
https://www.horizonaircraft.com/

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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