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宇宙から物質が消えるまでの「残り時間」を試算!従来より遥かに短かった


オランダのラドバウド大学の研究者らによる最新の試算によると、宇宙に存在する物質がホーキング放射によって消滅するまでの時間が、従来の予測よりはるかに短いとされています。これまで物質の消滅までの時間は10¹¹⁰⁰年と推定されていましたが、今回の計算では10⁷⁸年とされました。これは宇宙に存在する最も長寿の物質、白色矮星が完全に蒸発するまでの時間を基にしたもので、他の未知の物理現象や宇宙の膨張は考慮していません。この時間は理論上の限界であり、実際に物質が消滅するまでには人間や地球は存在しなくなっていると考えられます。

物が永遠に存在することはありません。

私たちが暮らすこの宇宙にも、いつかすべての物質が消える時がやってくるでしょう。

宇宙から最後の物質が消えるまでの残り時間は、これまでにも試算されたことがあります。

しかし今回、オランダ・ラドバウド大学(Radboud University)の研究者らが新たに試算したところ、宇宙の物質の寿命は従来の予想より遥かに早く訪れる可能性が高いことが示されたのです。

その残り時間とは、あとどれくらいなのでしょうか?

研究の詳細は2025年2月24日付でプレプリントサーバー『arXiv』に公開されています。

目次

  • すべての物質はホーキング放射で「蒸発」している?
  • 宇宙から物質が消えるまでの「残り時間」は?

すべての物質はホーキング放射で「蒸発」している?

今回、宇宙の物質の寿命を試算する上で着目された指標は「ホーキング放射」です。

イギリスの著名な天才理論物理学者、スティーヴン・ホーキング(1942〜2018)は1974年、「ブラックホールが徐々に蒸発している」というそれまでにない大胆な理論を発表しました。

アインシュタインの相対性理論が唱えられて以来、ブラックホールは「あらゆる物質をのみ込み、それらを完全に閉じ込めて、自らは縮小することなく、ただただ大きく成長するのみ」と考えられてきました。

しかしホーキングの計算によれば、ブラックホールの縁で発生する奇妙な現象によって、ある粒子ペアの片方がブラックホール内に吸い込まれ、もう片方は外へ飛び出していることが予測されたのです。

これを「ホーキング放射」と呼びます。

そしてブラックホールは極めて緩やかではありますが、ホーキング放射によって最終的には消滅する運命にあるとホーキングは唱えたのです。

そして2021年の研究で、擬似ブラックホールを用いて、ホーキング放射が実際に起こりうることが報告されました(Nature, 2021)。

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ホーキング博士/ Credit: ja.wikipedia

さらに近年の研究で、ホーキング放射はブラックホールだけではなく、質量を持つあらゆる物体に起こっていることも示唆されています。

つまり、この宇宙に存在するすべての物質は、沸騰した熱湯のようにわずかながら「蒸発」していると考えられるのです。

これらを踏まえて、ラドバウド大学の研究チームは「宇宙で最も寿命の長い物質を対象に、ホーキング放射によって完全に消失するまでの時間を試算すれば、宇宙からすべての物質が消えるまでの残り時間がわかるのではないか」と考えました。

そうしてチームが着目したのが「白色矮星」です。

宇宙から物質が消えるまでの「残り時間」は?

白色矮星は、星の進化の最終段階で生まれる非常に密度の高い天体です。

そしてこれまでの研究により、白色矮星は宇宙の中で最も寿命の長い物質であり、「最後まで生き残る星の残骸」であると言われています。

そこでチームは白色矮星がホーキング放射によってエネルギーを失い、最終的に消滅するまでの時間を理論的に試算することにしました。

実は過去の研究でも、白色矮星が寿命を迎えるまでの時間が試算されており、それは10¹¹⁰⁰年(10の1100乗年=1の後に1100個のゼロが続く年数)という途方もない時間であることが示されています。

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白色矮星のイメージ画像/ Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

しかしこの数字は、別のさまざまな要因をもとにした試算であり、ホーキング放射を考慮していませんでした。

チームは今回、ホーキング放射のみを考慮して、白色矮星が完全に蒸発し切るまでの時間を試算。

その結果、白色矮星の寿命は10⁷⁸年(10の78乗年=1の後に78個のゼロが続く年数)という、従来の予想よりも遥かに短い年数であることが示されたのです。

ただこれはホーキング放射のみに基づいた計算であり、他の未知の物理現象や宇宙の膨張などは含まれていません。

そのため「宇宙が完全な終わるまでの残り時間」ではなく、現存するすべての星や物質が消失する理論上の上限として捉えられています。

しかし、従来の予測値より遥かに短くなったとはいえ、10⁷⁸年も人間の寿命に比べるとイメージすら湧かないほど長い時間です。

とりあえず、宇宙から物質が完全に消えるまでには、人間も、人間が住む惑星もなくなっていることでしょう。

全ての画像を見る

参考文献

Universe expected to decay in 10⁷⁸ years, much sooner than previously thought
https://phys.org/news/2025-05-universe-decay-years-sooner-previously.html

The universe may die sooner than expected
https://www.popsci.com/science/when-will-universe-die/

元論文

An upper limit to the lifetime of stellar remnants from gravitational pair production
https://doi.org/10.48550/arXiv.2410.14734

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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