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最初のバラはすべて◯色だったことが判明!


北京林業大学の研究チームは、バラのゲノム解析を通じて、その祖先が「黄色の一重咲き」の花を持っていたことを明らかにしました。これは意外な発見で、バラの色の進化に新たな視点をもたらします。18世紀以降、ヨーロッパと中国のバラが交配され、多様な色彩を持つ品種が生まれました。しかし、これによって遺伝的基盤が狭まり、耐病性や環境耐性が犠牲になっていることも指摘されています。今回の研究により、バラ属の起源が従来考えられていた中央アジアよりも、中国の異なる二地域での多様化が示され、野生種の豊かな遺伝資源が今後のバラ育種に役立つ可能性があります。また、色素形成に関する遺伝子の進化が明らかになり、将来的に遺伝子操作や選抜育種によって、より多彩な色彩のバラが開発される可能性も示されています。

今日、私たちが目にするバラは、白、赤、ピンク、オレンジ、青など多彩な色を誇ります。

しかし歴史を遡ると、すべてのバラはたった一色に収束していたことが判明しました。

この驚きの事実を明らかにしたのは、中国・北京林業大学(Beijing Forestry University)の研究チームです。

彼らは、野生種から栽培種まで幅広いバラを対象にした大規模なゲノム解析を行い、バラの色の進化に迫りました。

その結果、バラの祖先は「黄色」だったことが判明したのです。

研究の詳細は2025年4月4日付で科学雑誌『Nature Plants』に掲載されています。

目次

  • バラの色が一気に増えたのはいつ?
  • バラの祖先はどんな姿をしていたのか?

バラの色が一気に増えたのはいつ?

バラは古代から人々を魅了してきた花です。

バラ科のバラ属(Rosa)に分類される美しい花であり、数千年にわたって文化交流や美的感覚の変遷とともに発展してきました。

18世紀には、ヨーロッパで古くから栽培されてきた品種と、中国原産の野生バラが交配されることで、バラ育種のルネサンスが起こったことが知られています。

これにより、赤やピンク、白、オレンジといった多彩な色彩を持つバラが次々と誕生しました。

現在では、150〜200種を超える野生バラと、35,000以上の栽培品種が存在しており、開花の頻度、香り、色のバリエーションも非常に豊かになっています。

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Credit: canva

しかし、こうした栽培化の歴史の中で、バラの遺伝的基盤は非常に狭くなり、病害耐性や環境耐性といった重要な性質が犠牲になることもありました。

そこで注目されるのが、野生種の豊かな遺伝的多様性です。

これらを理解し活用することは、単に新たな美しい品種を生み出すだけでなく、絶滅が危惧される貴重なバラを守ることにもつながります。

そのために必要なのが、野生種と栽培種を含めたバラ属全体の正確な起源と進化の理解でした。

この問題意識から、北京林業大学の研究チームは本格的なゲノム解析に乗り出したのです。

バラの祖先はどんな姿をしていたのか?

研究チームは、『中国植物誌(Flora of China)』に記載されているバラ属の84%にあたる、80種以上・205サンプルを収集しました。

これらのサンプルをもとに、最新のゲノム解析と集団遺伝学的手法を用いて、祖先の形質をたどりました。

DNA中の保存性の高い遺伝マーカーを解析することで、バラ種間の進化と地理的な関係が明らかにしています。

その結果、すべてのバラがさかのぼる共通祖先は「黄色い一重咲き(※)の花」を持ち、7枚の小葉を持つ植物であったことが判明したのです。

(※ 花びらが一重に咲くこと)

現在、赤やピンクのバラは情熱や愛の象徴とされていますが、もともとは黄色い花だったという事実は、多くの人にとって意外に感じられるかもしれません。

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バラのゲノム解析/ Credit: Bixuan Cheng et al., Nature Plants(2025)

また、この研究は「バラ属の起源が中央アジアにある」という従来の定説にも新たな視点をもたらしました。

実際には、中国の乾燥した北西部と温暖湿潤な南西部という、2つの異なる地域で多様化が進んだことが示されています。

このような発見は、今後のバラ育種に大きな影響を与えるでしょう。

野生種が持つ耐病性、香り、美しい色といった遺伝的資源を利用することで、気候変動に強く、育てやすい新たなバラの開発が期待されています。

また、色素形成に関与する遺伝子の進化過程も明らかになったことで、将来的には遺伝子操作や選抜育種によって、より自由な色彩パターンのバラを創り出す道も開かれるでしょう。

バラのゲノムを読み解く旅はまだ始まったばかりですが、この研究はその未来に大きな可能性を示すものとなります。

全ての画像を見る

参考文献

Red, pink or white, all roses were once yellow says genomic analysis
https://phys.org/news/2025-04-red-pink-white-roses-yellow.html

“Genomic Analysis Reveals Rose Color Evolution”
https://www.lifetechnology.com/blogs/life-technology-science-news/genomic-analysis-reveals-rose-color-evolution?srsltid=AfmBOorjFekqaThOPDK-qWi2wWyhWkqaSz_yoobrLNG5dDorGJGLhYPM

元論文

Phenotypic and genomic signatures across wild Rosa species open new horizons for modern rose breeding
https://doi.org/10.1038/s41477-025-01955-5

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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