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運命の人と別れた後の人はどうなるのか?


ミネソタ大学の調査によれば、元恋人を「運命の相手」と信じる人ほど失恋後に連絡や追跡行動を行いやすいことが示されました。調査参加者のうち約7割が別れ後に何らかの追跡行動を経験しており、ソウルメイトと感じる相手に対する信念が強いほど、その行動傾向は顕著です。「運命の相手」という信念が強いと、別れを乗り越えなければならない試練と捉えて追跡行動に出る傾向がありますが、一方で、成長を重視する視点を持つ人は、失恋を人生の一部と捉え、過剰な行動を控える傾向があります。短い記事や動画でこの信念を和らげることができる可能性も示され、適切な介入が別れ後の行動を穏やかにする手助けになるかもしれません。

スマホを操作する指が、つい元恋人のアイコンをタップしてしまう――そんな経験に覚えはありませんか。

映画やドラマが刷り込んだ「この人こそ運命の相手」という信念は、別れた瞬間に脳内のスイッチを切り替え、メッセージの既読チェックやストーリーの秒単位更新、さらには偶然を装った接近行動へとエスカレートさせることがあります。

アメリカのミネソタ大学(UM)で行われた大規模調査によって、恋を“唯一無二の宿命”と信じる人ほど、失恋後に連絡・SNS監視・物理的接近など別れ後の連絡・追跡行動を実行しやすいことが示されました。

別れ後の連絡・追跡行動をとった人々は関連行動を平均5.7件も重ねており、相手をソウルメイトと感じる人では信念と追跡行動の相関係数が0.57と、全体の約二倍に跳ね上がることがわかりました。

相関係数0.57というのは強い相関と見なされており、相手をソウルメイトと信じることがその後の追跡を加速させている可能性があります。

では、私たちはどうすれば「運命の恋」という甘い物語の呪縛から抜け出し、健全に失恋を乗り越えられるのでしょうか?

研究内容の詳細は『Personal Relationships』にて発表されました。

目次

  • シンデレラ思考 VS 盆栽思考
  •  運命の人は別れても追跡してしまう

シンデレラ思考 VS 盆栽思考

シンデレラ思考 VS 盆栽思考
シンデレラ思考 VS 盆栽思考 / Credit:Canva

「たったひとりの運命の相手」という物語は、古代神話からハリウッド映画まで語り継がれてきました。

しかし現実には、アイコンがオンラインになるたび胸がざわめき、既読確認がやめられない――そんなストレス行動を引き起こします。

脳画像研究では、恋愛の高揚感がコカインと同じ報酬回路を刺激し、失恋は“恋愛の禁断症状”に似た反応を招くことが報告されています。

さらにSNSのおかげで、元恋人の発信や行動を手軽に追える時代となり、約7割の参加者が別れ後に何らかの別れ後の連絡・追跡行動を経験していることが分かりました。

ここで鍵を握るのが「恋愛観モデル」です。

理想の相手を見つければ自然にうまくいくと考える運命型と、関係は努力で育つと考える成長型の2種類があり、前者はいわば“シンデレラ思考”、後者は“盆栽思考”と対比できます。

最近の研究では、相手をソウルメイトと感じるほど運命型の影響が強化され、別れが“破ってはならない契約の崩壊”と受け止められる危険が指摘されています。

一方、数分の動画や記事といった軽い介入でも恋愛観を揺さぶり、別れ後の衝動を和らげる報告が出始めています。

研究チームは「恋愛観とソウルメイト感が別れ後の連絡・追跡行動をどう後押しし、介入で衝動を抑えられるか」を4つの調査・実験で検証しました。

まず142人に別れ直後の行動を回想してもらったところ、運命信念が強いほど電話・SNS確認・偶然を装った接近などを平均5件以上行っていました。

次に198人に対象を広げ、相手をソウルメイトと感じた度合いを尋ねると、その思いが強い人では運命信念と別れ後の連絡・追跡行動の相関がr=0.57と中程度まで跳ね上がりました。

3つ目の実験では架空の雑誌記事を用いて恋愛観を操作したところ、運命派の記事を読んだ群は成長派の記事群より約30%高い割合で「別れたら追跡行動を取りそう」と自己申告しました。

最後の学生サンプル実験でも、短い記事で運命信念をわずかに揺さぶるだけで追跡意図が低下する兆しが確認されました。

つまり「この人しかいない」という思い込みは別れ後の連絡・監視行動を強く後押しし、ライトな心理アプローチでも衝動を和らげられる可能性が示されたのです。

 運命の人は別れても追跡してしまう

運命の人は別れても追跡してしまう
運命の人は別れても追跡してしまう / Credit:Canva

今回の結果は「運命の人」という思い込みがアクセルになるという切実な事実を浮き彫りにしました。

運命型の人にとって別れは“乗り越えるべき障害”に映りやすく、電話やSNS監視、待ち伏せといった行動へ踏み出す確率が跳ね上がります。

一方、成長型の人は失恋を人生の通過点とみなしやすく、衝動も比較的穏やかです。

運命信念は絶対不変ではなく、短い記事や動画でも視点をわずかにずらすだけで追跡行動の意図が弱まる兆候が確認されました。

具体策としては、失恋直後に数日SNSをミュートする「情報断食」、学校や企業研修での「成長ストーリー」共有、カウンセリング現場でのリフレーミングなどが考えられます。

もちろん、性差・文化差やオンライン/オフライン行動のリスク差、運命信念を長期的に緩める方法など課題は残ります。

それでもロマンチックな「運命」という言葉がときに過剰行動の燃料になることが明らかになり、視点を少し変えるだけで痛みを衝動に変えずに済む小さな希望が見えてきました。

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元論文

We Were Meant to be: Do Implicit Theories of Relationshipsand Perceived Partner Fit Help Explain Post-RelationshipContact and Tracking Behaviors Following a Breakup?
https://doi.org/10.1111/pere.12591

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

ナゾロジー 編集部

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