毎日のちょっとした習慣が、あなたの体を静かに蝕んでいるかもしれません。
特に「沈黙の臓器」と呼ばれる腎臓は、異変が起きてもなかなか自覚症状が出ないため、気づいたときには手遅れ……なんてことも。
イギリス・キングストン大学(Kingston University)の薬学者ディーパ・カムダール氏は、何気ない日常の習慣が腎臓に深刻なダメージを与える可能性があると警告しています。
この記事では、あなたの健康を静かに脅かす7つの習慣を紹介します。
目次
- 沈黙の臓器「腎臓」は声にならない悲鳴を上げている!?やめるべき習慣とは
- 腎臓を傷つける「ついついやってしまいがちな習慣」
沈黙の臓器「腎臓」は声にならない悲鳴を上げている!?やめるべき習慣とは

そもそも腎臓って、何をしてくれている臓器なのでしょう?
腎臓は、血液をろ過して老廃物を尿として排出する体内のフィルターのような存在です。
さらに体内の水分や電解質のバランスを調整し、血圧をコントロールする働きまで担っています。
この臓器が弱っていくと、老廃物が体内に蓄積し、倦怠感、むくみ、皮膚のかゆみなどの症状が現れます。
そして腎臓病が進行し「腎不全」になると、体内から老廃物を除去できなくなり、最終的には透析や腎臓移植が必要になります。
問題なのは、こうした臓器障害は徐々に進行するため、自覚しにくいという点です。
だからこそ、「気づいたときには取り返しがつかない」事態を防ぐためにも、日々の生活を見直すことが重要なのです。
キングストン大学のディーパ・カムダール氏は腎臓にダメージを与える7つの習慣を教えてくれています。
1. 鎮痛剤の多用

ちょっと頭が痛い、肩がこる、なんとなく体が重い……。そんなときに「とりあえず痛み止めを飲もう」と考える人も多いのではないでしょうか?
ところがこの「ちょっとした薬」が、知らず知らずのうちに腎臓を蝕んでいるのです。
イブプロフェンやアスピリンといった一般的な非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、腎臓の血流を減少させ、ろ過機能に影響を与えるため、大量使用や長期使用は慢性腎障害のリスクを高めるとされています。
もし、痛み止めを使うことが習慣になっているなら、注意が必要です。
医師に相談し、適切な範囲で使用できるようアドバイスしてもらいましょう。
2. 水分をあまり摂らない
意外と軽視されがちですが、「水をあまり飲まない」という習慣も要注意です。
腎臓は体内の老廃物を尿として排出するために十分な水分を必要とします。
水分が不足すると尿が濃縮され、老廃物が排出されにくくなり、腎臓に負担がかかります。
また脱水状態が続くと、腎臓の血流が低下し、やがて腎機能障害に至るケースもあります。
「喉が渇いてから飲む」のではなく、「喉が渇く前に飲む」習慣を心がけましょう。
病気を抱えていない一般の人は、1日に1.5~2リットルの水を飲むことが推奨されています。
もしかしたら、多くの人は、こうした修正すべき自分の習慣に気づいていないかもしれません。
それでも腎臓にダメージを与える習慣はまだまだあります。後半も見てみましょう。
腎臓を傷つける「ついついやってしまいがちな習慣」
続いて、ついついやってしまいがちな他の5つの習慣を見ていきましょう。
3. お酒を飲み過ぎる

適量の飲酒は問題ありませんが、過度なアルコール摂取は腎臓にとって大きな負担となります。
アルコールは利尿作用があるため脱水を引き起こしやすく、これが腎臓にダメージを与える原因になります。
さらに、慢性的な大量飲酒は高血圧や肝障害を引き起こし、それが間接的に腎機能の低下にもつながります。
「仕事終わりの一杯がやめられない」という人もいるでしょう。
それでも腎臓のことを考え、「休肝日」をつくるなどして、飲酒習慣を見直すことが大切です。
4. 喫煙
タバコが肺や心臓に悪いことは有名ですが、実は腎臓にも深刻な影響を与えます。
喫煙によって血圧が上昇し、腎臓の血管がダメージを受けることで、腎臓病のリスクが高まるとされています。
またタバコに含まれるカドミウムは腎臓に長期間蓄積し、腎機能障害を引き起こす可能性があります。
さらに、ニコチンは腎臓の血流を減らす可能性があり、慢性的な腎機能低下に拍車をかけることも。
禁煙は腎臓の健康を守るうえでも非常に有効です。
5. 太りすぎ(肥満)
肥満は高血圧や糖尿病と密接に関係しており、いずれも腎臓に深刻なダメージを与える原因になります。
体重が増えると腎臓のろ過量も増え、過剰な働きが求められるようになります。
その結果、腎臓にかかる負担が大きくなり、機能が低下するリスクが高まります。
適切な体重を維持することが、腎臓の長寿にもつながるのです。
6. 睡眠不足

忙しい日々の中で、つい後回しにしがちな「睡眠」ですが、実は腎臓にとっても重要な時間です。
睡眠中、体は修復作業を行い、腎臓も休息とメンテナンスの時間を得ています。
しかし慢性的な睡眠不足は、ホルモンバランスの乱れや血圧の上昇を招き、腎臓機能の悪化を加速させる要因となります。
過去の研究では、1日の睡眠時間が6時間未満または10時間よりも多いと、肝臓に悪影響を及ぼす可能性が示唆されました。
質の良い睡眠を確保するために、毎日の生活リズムを整えることが重要です。
7. 超加工食品や塩分のとりすぎ
インスタント食品やスナック菓子、冷凍食品などに多く含まれる「超加工食品」は、腎臓にとっての大敵です。
これらにはリンやナトリウムが多く含まれており、摂り過ぎると腎臓に過剰な負担をかけます。
特に塩分の摂取量が多いと、高血圧を引き起こし、腎機能の低下につながります。
過去の研究では、超加工食品を多く摂取した人は、腎臓病のリスクが24%も高くなると報告されています。
成分表示を確認しながら、塩分や食品添加物を控える意識が必要です。
ここまでで腎臓にダメージを与える7つの習慣を考えてきました。
思い当たる節が1つでもあった方、ぜひ今日から見直してみましょう。
沈黙の臓器であるあなたの腎臓は、今はまだSOSの声を出すのを我慢しているのかもしれません。
それでも日常のダメージが着実に蓄積していることを忘れてはいけません。
参考文献
From popping painkillers to shortage of sleep, seven common habits that could be harming your kidneys
https://theconversation.com/from-popping-painkillers-to-shortage-of-sleep-seven-common-habits-that-could-be-harming-your-kidneys-253918
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
ナゾロジー 編集部