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マウスを宇宙に滞在させると、ある部位の骨がスカスカに⁈


NASAのエイムズ研究センターは、国際宇宙ステーション(ISS)でのマウス実験を通じて、微小重力環境が骨に与える影響を調査しました。37日間ISSに滞在したマウスの大腿骨で、特に股関節や膝に近い部分の骨密度が大幅に減少することが確認されました。これは地球で体重を支える重要な部位に集中した現象であり、一方、脊椎の腰椎部分ではほとんど変化がなかったとのことです。この研究は、宇宙での骨の弱体化が全身ではなく荷重のかかる部位に集中することを示唆し、宇宙飛行士の健康管理には人工重力の導入や専用のトレーニング機器が必要であることを示唆しています。また、若年層の宇宙滞在が成長に影響を与える可能性も指摘されています。

私たちの骨は、毎日歩いたり走ったりすることで、知らず知らずのうちに重力によって鍛えられています。

しかし地球のような重力がない宇宙空間で暮らすと、骨はだんだん弱まっていくものです。

その一方で、宇宙空間では全身の骨が等しく弱まるのか、それとも特定の部位が弱まるのかについては不明でした。

アメリカ航空宇宙局(NASA)のエイムズ研究センター(ARC)は最新研究で、その疑問の答えを見つけたようです。

彼らの報告によると、マウスを国際宇宙ステーション(ISS)に37日間滞在させたところ、大腿骨に大きな穴が空いたというのです。

研究の詳細は2025年3月26日付で科学雑誌『PLOS ONE』に掲載されています。

目次

  • 宇宙空間では、どの骨の部位が弱くなるのか?
  • マウスをISSに37日間滞在させた結果…

宇宙空間では、どの骨の部位が弱くなるのか?

宇宙飛行士は長期間の宇宙滞在のあと、地球に帰還すると骨密度が大きく低下していることが知られています。

調査報告によると、宇宙空間では1カ月あたり約1%の骨密度が失われるとされ、これは地球上での加齢による骨量減少の10倍にもなります。

この原因としては、重力のない環境(微小重力)によって骨にかかる力が弱まり、骨が刺激を受けなくなることが挙げられます。

いわば、筋肉と同じで「使わなければ衰える」というわけです。

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Credit: canva

しかしここでひとつの疑問が浮かびます。

「宇宙ではすべての骨が等しく同じように弱くなるのか?」ということです。

もし、ある部位だけが特に脆くなるのだとしたら、それは将来の宇宙旅行や火星探査の安全性に関わる重要な問題になります。

実際、NASAの過去の研究でも、部位ごとの骨の変化についてはばらつきがあることが示唆されていました。

また、宇宙放射線やホルモンバランスの変化など、重力以外の要因が関係している可能性も指摘されていました。

今回の研究は、そうした未解決の謎に正面から挑んだものです。

マウスをISSに37日間滞在させた結果…

今回の実験では、生後16週齢のマウスをISSに送り、37日間にわたり微小重力下で生活させました。

そして、地上に戻ったマウスの骨を詳細に分析し、地上で飼育されたコントロール群と比較しました。

この際、微小重力だけでなくロケット打ち上げ時のストレス負荷も考慮して、地上のマウスにはロケット打ち上げと同等の飛行訓練をさせています。

これで微小重力だけの影響を純粋に見ることができます。

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ISS内でのマウスの飼育ケージ/ Credit: NASA Johnson –Rodent Research in Microgravity(youtube, 2015)

研究者たちは、特にマウスにおける“荷重部位”、つまり地球上で体重を支える役割の大きい「大腿骨(足の付け根から膝までの太ももの骨)」に注目しました。

分析の結果、宇宙に滞在したマウスの大腿骨では、内部のスポンジ状の骨が大きく失われていたのです。

特に股関節や膝に近い部位では、骨密度が大幅に減っており、大きな空洞が広がっていました。

一方で、脊椎の腰椎部分ではほとんど変化が見られませんでした。

この差は、重力によって負荷がかかる部位とそうでない部位で、骨の反応がまったく違うことを示しています。

さらに驚くべきことに、宇宙空間では骨の成長の終了を早める「骨化」が加速していたのです。

通常は21〜23週齢で始まるこのプロセスが、無重力下では前倒しで起きていました。

これは成長期の若い個体にとって深刻な問題になりうる現象です。

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左:地上のマウスの大腿骨、右:ISSのマウスの大腿骨/ Credit: Rukmani Cahill et al., PLOS ONE(2025)

今回の研究結果が示すのは、微小重力下での骨の弱体化は全身に均等に起こるのではなく、荷重を支えている部位に集中することが示されました。

これは宇宙飛行士の健康を守るために、単にカルシウムを摂るだけでは不十分であり、 人工重力の導入や、負荷付きのトレーニング機器の開発といった対策が求められることを意味します。

また、子どもや若い世代が将来宇宙に長期滞在する場合、成長の早期終了や身長の伸び悩みといった問題も現実味を帯びてきます。

“宇宙で暮らす未来”が現実になりつつある今、微小重力下でいかに健康的に生活していくかという問題に、さらに目を向ける必要があるかもしれません。

全ての画像を見る

参考文献

NASA Took Mice Into Space, And It Did Something Scary to Their Bones
https://www.sciencealert.com/nasa-took-mice-into-space-and-it-did-something-scary-to-their-bones

Femur bone density loss in mice aboard the ISS sheds light on space travel challenges
https://phys.org/news/2025-03-femur-bone-density-loss-mice.html

元論文

37-Day microgravity exposure in 16-Week female C57BL/6J mice is associated with bone loss specific to weight-bearing skeletal sites
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0317307

ライター

千野 真吾: 生物学出身のWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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