定期的にサウナを利用すると、心身ともに健康になるかもしれません。
スウェーデン・ルレオ工科大学(LTU)の最新研究で、サウナ浴と健康・幸福度との間に注目すべき関連性があることが明らかになりました。
それによると、月1回以上のペースでサウナ浴をする人は、身体的に健康で慢性的な痛みが少なく、睡眠の質も高くて、不安や抑うつレベルも低いことがわかったのです。
また幸福度を高めるのに最適なサウナ浴の利用頻度も示されました。
研究の詳細は2024年10月24日付で学術誌『International Journal of Circumpolar Health』に掲載されています。
目次
- サウナ浴の健康効果とは?
- なぜサウナは心身の健康に効果的なのか?
サウナ浴の健康効果とは?
サウナは今から約2000年前、寒さの厳しい北欧の国フィンランドで誕生しました。
今日、サウナ文化は世界に広く浸透しており、日本でも銭湯やスパ施設でサウナを楽しむ人が増えています。
またこれまでの研究で、サウナ浴は心血管系に良い影響を与えることや、痛みやストレスを和らげる可能性があることが示唆されてきました。
しかし一方で、サウナ浴の科学的研究はその多くがフィンランドの単一集団を対象としたものです。
そこでスウェーデンの研究チームは、同国在住の人々を対象に、「定期的にサウナに入っている人は本当に健康で幸福なのか?」「その効果はどの程度の頻度で現れるのか?」などを新たに調査しました。

本調査では、スウェーデン北部ノールボッテン県とヴェステルボッテン県の住民を対象に調査を実施。
971人にアンケート調査をしたところ、その中で「月1回以上サウナに入る」と答えた人は641人(全体の約66%)でした。
このサウナ利用者と、ほとんど利用しない人たちとを比較したところ、実にさまざまな違いが明らかになりました。
たとえば、サウナ利用者は運動習慣があり、喫煙率が低いという健康的な生活スタイルを持っていました。
また、高血圧の割合が低く、身体の慢性的な痛みも少ないことが報告されています。
さらに注目すべきは、不安や抑うつのレベルが低く、エネルギーや幸福感のレベルが高いなど、精神的な健康も確認されたことです。
特に「月に1~4回サウナに入る人」が最も高い幸福感とエネルギーレベルを示すことがわかりました。
一方で、月に5回以上サウナを利用する人は、逆に幸福度のスコアが中程度の利用者よりも低い傾向にあったといいます。
つまり、サウナ浴は頻繁に行くのではなく、月1〜4回と適度に行くと健康効果が高まると考えられます。
また、サウナ浴のスタイルとしては1回につき15~20分の滞在を1~2セット、60~80℃のサウナを使用する人が多く、冷水浴を併用する人は少数派でした。
なぜサウナは心身の健康に効果的なのか?
では、なぜサウナ浴がこれほど多方面に良い影響をもたらすのでしょうか?
そのメカニズムはまだ完全には解明されていませんが、いくつかの仮説があります。
ひとつは、体温上昇による血流の改善です。
サウナは心拍数や血圧に中程度の運動と似た反応を引き起こすとされ、血管の柔軟性を高め、老廃物の排出を助けると考えられています。
また、筋肉の回復を促し、痛みを和らげる効果も報告されています。
もうひとつの重要な要素は、社交性の高まりです。
多くの人がサウナを一人ではなく誰かと一緒に利用しており、そこには自然な会話やつながりが生まれます。
このような人とのふれあいが、ストレス軽減や幸福感の向上に影響している可能性もあるのです。
チームは今後、こうした社会的要因がどのように健康と結びついているのか、さらなる調査を予定しています。

今回の研究は「サウナに入るだけで人はもっと健康に、もっと幸せになれるかもしれない」というシンプルかつ希望に満ちたメッセージを私たちに届けてくれました。
しかもその効果は、月に1回程度の利用からすでに現れはじめるというのです。
少し疲れを感じていたり、気分が晴れない日があったら、近所のサウナを訪れてみてはいかがでしょうか。
参考文献
Regular sauna users report better health, more energy, and greater happiness
https://www.psypost.org/regular-sauna-users-report-better-health-more-energy-and-greater-happiness/
元論文
Sauna bathing in northern Sweden: results from the MONICA study 2022
https://doi.org/10.1080/22423982.2024.2419698
ライター
千野 真吾: 生物学出身のWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部