朝の目覚めが悪く、スッキリ起きられないと悩んでいる人は多いかもしれません。
そんな方に朗報です。
大阪公立大学の研究チームが、目覚めを改善する効果的な方法を発表しました。
それは「起床前に自然光を浴びること」です。
「朝日を浴びると健康に良い」とはよく言われますが、実際にどのような影響があるのでしょう?
また、どのタイミングで光を浴びると最も効果的なのでしょうか?
研究の詳細は2025年2月18日付で学術誌『Building and Environment』に掲載されています。
目次
- 朝、スッキリ起きられないのはなぜ?
- 気象のどれくらい前に自然光を浴びるといいのか?
朝、スッキリ起きられないのはなぜ?

朝起きたときに「まだ眠い」「だるい」と感じることはありませんか?
それは「睡眠慣性(Sleep Inertia)」と呼ばれる現象によるものです。
睡眠慣性とは、目覚めた後も脳が完全に覚醒していない状態のこと。この状態が続くと、集中力が低下したり、活動を開始するのが辛くなったりします。
では、どうすればスッキリと目覚めることができるのでしょうか?
その重要なカギを握っているのが「光」です。
私たちの体には「概日リズム(サーカディアンリズム)」と呼ばれる約24時間周期の生体時計が備わっています。
この体内時計を調整するのに最も重要なのが光なのです。
特に朝の自然光は脳内のメラトニン(眠気を誘うホルモン)の分泌を抑え、覚醒を促進するとされています。
そのため、朝に適切な自然光を浴びることは、目覚めを良くするために欠かせません。
しかしこれまでの研究では、目が覚めた後に光を浴びることの重要性のみが強調されてきました。
今回の研究は、それとは異なり「起床のどれくらい前に光を浴びることが効果的であるか」を明らかにしています。
気象のどれくらい前に自然光を浴びるといいのか?
これまでの研究では、人工光を用いた「夜明けシミュレーション」が睡眠や覚醒に良い影響を与えることがわかっています。
しかし実際の生活環境では自然光を利用する方が現実的です。
そこで研究チームは「起床前に自然光を浴びると目覚めが良くなるのか」という疑問を検証することにしました。
19人の被験者(男性10名、女性9名)を対象に、以下の3つの条件で実験を行います。
条件1. IA(Intervention A): 起床前の20分間に自然光を浴びる
条件2. IB(Intervention B): 夜明けから起床まで自然光を浴びる
条件3. CC(Control Condition): 起床前に自然光を浴びない(対照条件)
被験者は研究施設の寝室で眠り、起床後に以下の指標を測定しました。
・眠気
・覚醒度
・疲労度
・脳波
・心拍変動

そして実験の結果、以下のことが明らかになりました。
・IAとIBはCCよりも眠気が少なく、覚醒度が高かった
・IA(起床前20分の自然光曝露)が最も効果的で、IB(夜明けからの曝露)よりも目覚めが良かった
・ただし過度な自然光や長時間の曝露は、中途覚醒を促し、目覚めの質を低下させる可能性がある
つまり、「朝の自然光は良い」と一括りにするのではなく、起床の約20分前に光を浴びるのが最も効果的であることが明らかになったのです。

この研究から得られた知見を活用し、私たちの生活に役立てる方法を考えてみましょう。
1:スマートカーテンを活用する
・起床の20分前に自動でカーテンを開けるように設定すると、自然光を適切に取り入れられます。
2:遮光カーテンを上手に使う
・夜間はしっかり遮光し、朝は徐々に光を取り入れることで、睡眠の質を保ちつつ自然な目覚めを促せます。
3:可能なら窓際で眠る
・窓からの自然光を活かせる位置で寝ると、より効果的に体内時計を調整できます。
本研究から、朝の目覚めを良くするには起床の約20分前から自然光を浴びるのがベストであることが判明しました。
今後、スマートカーテンや自動調光システムが普及すれば、誰でも簡単に「最高の目覚め」を手に入れられるかもしれません。
朝スッキリ目覚めたい人は、ぜひ「起床前の自然光」を意識してみてください。
参考文献
起床前に自然光を浴びると目覚めの質が向上
https://www.omu.ac.jp/info/research_news/entry-16768.html
元論文
Natural light control to improve awakening quality
https://doi.org/10.1016/j.buildenv.2025.112733
ライター
千野 真吾: 生物学出身のWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部