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【衝撃の事実】股にはなかった「股関節」じゃあどこにある?


コロナ禍でのリモートワークの増加により、多くの人が運動不足に悩んでいます。特に歩く機会の減少が問題で、これにより脚や股関節の痛みを感じる人が増えています。記事では、股関節が「股」にあるのではなく、骨盤の外側であることを解説し、股関節の構造とその動きを支える筋肉の重要性について説明しています。また、大腿骨の付け根である股関節は二足歩行を支える重要な関節であるにも関わらず、よく折れる部位であることが指摘されています。筋肉とじん帯の柔軟性を保ち、股関節を支える筋肉を鍛えることが怪我防止に役立つとされています。

コロナ禍から既に数年経ちましたが、リモートが増えた結果、運動不足になっていないでしょうか。歩く機会がちょっと減りましたよね。脚を動かさないと立ち上がりにくくなったりもします。

立ち上がる時、思わず「よいしょ」と掛け声が出るだけでなく、急に歩いたら脚の付け根が痛くなったりもします。

いたたたた。股関節が痛い。

脚の付け根といえば痛むのは股関節です。でもこの時、どこを押さえたり、さすったりすればいいのか、わからなくなりませんか?

そんな時、膝や足首はとてもわかりやすい関節です。でも肝心な股関節はどこに……?痛いのでシップでも貼ろうかと思うのに、

実は、股関節は「股」の部分にはないのです。

では、股関節はいったいどこにあるのでしょうか。早速見ていきましょう。

目次

  • ええっ!こんなところにあった股関節
  • 守られている割に股関節の骨は意外と折れる

ええっ!こんなところにあった股関節

股にはなかった股関節。思っていたのと違います。では、一体どこにあるのでしょう。

結論から言うと、股関節は骨盤の外側近くにあります。しかも、2ヵ所です。つまり股関節は「股」の付け根ではなく、「大腿骨が骨盤にはまっている所」なのです。

股関節とは大腿骨の付け根の2ヵ所のこと
股関節とは大腿骨の付け根の2ヵ所のこと / Credit: Wikimedia Commons

大腿骨は2本。だから股関節も2ヵ所にあるというわけですが、股なら1個だろうと思っていた股関節は、意外な場所に2個もあるのでした。

ヒトは脊椎動物で、二足歩行するように進化しました。

前脚は地面から完全に離れて両腕に。体はまっすぐに起きて、地面を踏みしめるのは2本の脚です。

二足歩行に都合がいいよう、上半身を垂直方向に支えるための骨盤は横にしっかり張り出しました。そして、左右の大腿骨は前後左右に動かしやすいよう、先端がまるでボールのような形になって骨盤にはまっています。

ボールのようなところを骨頭(こっとう)、その下、外側に張り出したところを大転子(だいてんし)、骨頭と大転子を繋ぐ部分を大腿骨頸部(だいたいこつけいぶ)、その下にある小さい突起を小転子(しょうてんし)といいます。

大腿骨は股関節にすっぽりはまり込んだボールのような形
大腿骨は股関節にすっぽりはまり込んだボールのような形 / Credit: Wikimedia Commons/ナゾロジー編

骨頭は骨盤にある寛骨臼(かんこつきゅう)という、お椀状の窪みにはまっています。寛骨臼の上側を臼蓋(きゅうがい)、下側を臼底(きゅうてい)と呼びます。

骨頭の3分の2はこの臼蓋に覆われていて、臼蓋の中をくるくると動くことで股関節が動いています。この動きは腱や筋肉が担っていて、前後左右、思った方向へ動かせる仕組みです。

ヒトは背中側にお尻が発達していますが、お腹側は俗に股と呼ばれます。木の枝がふたつに分かれたところを股、二股などといいますが、それと同じです。

そして股関節。これはこの股の部分にはないことがわかりましたね。

具体的にどこにあるかといえば、骨盤が横に一番張り出しているところから少し内側です。イメージとして股はアルファベットのVを逆さまにしたような形ですが、脚の骨は大げさに言えばアルファベットのYです。真ん中でくっついたところが膝で、その上が大腿骨。

本当に、思っていたのとだいぶ違いますね。股じゃなく、むしろ股の外側です。

どうも脚の付け根が痛いなあと思って太ももの内側をさすっても、そこに関節はありません。あるのは筋肉と脂肪だけ。関節は骨盤の内側に入り込んでいて触れないのです。

一番近いのが、椅子に座った時の太腿の付け根あたり

股関節が股ではなく、むしろ体の外側に近い部分にあることがよくわかるのがバレエダンサーの脚の動きです。

日々の訓練の結果、バレエダンサーは脚を前後だけでなく、真横どころか頭近くまで開くことができます。これは股関節が骨盤の両側にあることをよく示しています。

バレエダンサーは驚異的な股関節の柔らかさを持つ
バレエダンサーは驚異的な股関節の柔らかさを持つ / Credit: Wikimedia Commons

柔軟に動かしても大腿骨が骨盤から外れないよう、また、しっかり動かせるよう、いくつもの筋肉が支えています。その中で一番大きな筋肉が大殿筋。これはいわゆる「おしり」です。

ちなみに股関節は英語でHip Jointといいます。おしりはHip。日本人的感覚だと股関節が後ろ側にあるような言葉のイメージです。

とはいえ、おしりというか、一番大きいおしりの筋肉である大殿筋は股関節をしっかり支えて二足歩行するのに必要な、大切な筋肉なんです。

これまで、おしりは何のためにあるのだろう?座る時のためのクッションか?と思っていた人もいるかもしれませんね。実は、ヒトの背中側に突き出したように大きく発達したおしりは、二足歩行をするためにあるのです。

どんな動物にもおしりと呼びたい部分はありますが、下半身を支え、脚で地面をしっかり踏みしめつつ前に出して歩くため、ヒトのおしりは他の動物にないほど大きくなりました(その筋肉に沿って脂肪がつくとさらに大きくなるわけですね………)。

二足歩行をしっかり支えてくれるおしりの筋肉
二足歩行をしっかり支えてくれるおしりの筋肉 / Credit: Wikimedia Commons

西洋絵画の裸婦像や縄文のヴィーナスなど、溢れる生命力を現す作品のおしりは豊かな造形になっており、本来の機能とは別のイメージを持つに至っていますが、元はといえば、ヒトのおしりが大きくなったのは股関節を支えて二足歩行するためだったのです。

ベラスケス「鏡のヴィーナス」ロンドン、ナショナルギャラリー
ベラスケス「鏡のヴィーナス」ロンドン、ナショナルギャラリー / Credit: Wikimedia Commons

改めてスポーツ選手のお尻を見ると、ほれぼれするようないい筋肉をしています。特によく走る種目の選手はお尻の筋肉もよく発達します。今度スポーツ観戦の時によく観察してみてください。

守られている割に股関節の骨は意外と折れる

ヒトは二足歩行する生き物です。ヒト以外の哺乳類と比較すると不安定さを持っているともいえます。重心が高いところにあるからです。そして、体の一番高いところに重たい頭を乗せています。

そのせいか、ヒトは哺乳類の中ではよく転ぶ生き物です。積雪の道で滑って転ぶ人の映像を冬になるとニュースでも見かけますよね。

どんなに上手なプロでも命に関わる転倒はありうる
どんなに上手なプロでも命に関わる転倒はありうる / Credit: Wikimedia Commons

それなのに、スキーやスノーボード、スケートなど、滑って転ぶようなことも進んで行うのがヒトの不思議なところでもあります。今まで一度も転んだことがないという人がいたら、きっと死後、閻魔様に舌を抜かれるでしょう。

大腿骨はこうしたスポーツや、日常生活の中での転倒といった小さな事故でも意外と折れています。

ヒトの骨の中で一番長い大腿骨は力がかかると真ん中からぼっきり折れそうなものですよね。でも、大腿骨の付け根の大腿骨頸部が割とよく折れています。膝に近い部分や真ん中ももちろん折れますが、大腿骨の付け根は骨盤に守られている割によく折れているのはなぜでしょう。

大腿骨の、骨盤にはまっている丸いところを骨頭、そのすぐ下の少し細くなっているところを大腿骨毛部、骨盤から出っ張って太くなっているところを大転子と呼ぶのは既に述べました。よく折れるのは大腿骨頸部、そして大腿骨頸部と小転子の間ぐらいの所です。人体の骨格で、ここは二足歩行に重要な部分ですが、同時に弱点のひとつでもあります、。

強い力のかかる大腿骨頸部が骨粗しょう症で脆くなっていると折れやすい
強い力のかかる大腿骨頸部が骨粗しょう症で脆くなっていると折れやすい / Credit: Wikimedia Commons

人体の中でも股関節には大きな力がかかるためです。

両足で立っているだけなら体重の約半分の力で済みますが、歩く時は約3倍階段の上り下りでは大きい時で体重の約8倍、転んだら、それより大きな力がかかる場合もあります。

大腿骨頸部が何故折れやすいのかというと、瞬間的に大腿骨頸部に大きな力がかかってしまうからです。

高齢で骨粗しょう症だと、大きな事故や派手な転倒ではなく、室内でほんのちょっとつまずいて転んだだけで簡単に折れてしまうので注意が必要です。大腿骨頸部が脆くなっていて、力を受け止めきれないのです。

骨の内部は結構スカスカしている
骨の内部は結構スカスカしている / Credit: Wikimedia Commons

あなたがもし、20代前半であれば骨密度を上げるのは長い人生の中で今しかありません。しっかりカルシウムを摂ってください。高齢になってからの骨折防止に役立ちます。

後期高齢者だと全身麻酔を避けるため手術ができず、痛み止めを使いながら骨がくっつくのを待ち、そのまま車椅子生活、寝たきりになってしまうこともあるため、軽視できないのが大腿骨骨折。

大腿骨骨折は本人にとっても家族にとっても大きな負担になるので、骨折はなるべく防ぎたいもの。そのため、股関節を柔軟に保ったり、筋肉を鍛えたりしておくというのもひとつの方法です。

骨頭の形状がよくわかる人工股関節
骨頭の形状がよくわかる人工股関節 / Credit: Wikimedia Commons

おしりの話に戻りますが、このおしりと股関節を一番鍛えているのは誰だかわかるでしょうか。

それはズバリ、お相撲さんです。

お相撲さんの体が柔らかいのを見て驚いたことのある人も多いのではないかと思いますが、お相撲さんは「股割り」といって股関節を柔らかくし、左右に大きく開脚する練習をしています。

筋肉に柔軟性を持たせて股関節の可動域を広げるための準備運動ですが、同時に、押されて俵ぎりぎりになっても脚をふんばり押し返したり、逆に相手を投げたりするための筋力を鍛えること、さらには怪我をしにくくするという理由もあります。

何気なく見ているが、実はとても柔軟な力士の股関節
何気なく見ているが、実はとても柔軟な力士の股関節 / Credit: Wikimedia Commons

元大相撲力士の小錦八十吉さんは、現役時代に一番重かった時の体重が285kgあったそうです。歩くだけで股関節に855kgの重さがかかっていたことになります。これは小型の競走馬2頭分ぐらいの重さです。

転べばオスのアフリカゾウ以上の重さが股関節にかかることになります。例え一瞬でもアフリカゾウの重さが体にかかれば普通はまともではいられないでしょう。

相撲はよく転ぶスポーツです。重い体で転ぶため、筋肉やじん帯、骨の損傷を防ぐために筋肉を鍛え、柔軟性を保っておくことが非常に大切だといえるでしょう。

股関節や股関節を支える筋肉を鍛え、柔軟性を保つ必要のある力士
股関節や股関節を支える筋肉を鍛え、柔軟性を保つ必要のある力士 / Credit: Wikimedia Commons

お相撲さんは股関節やおしりだけでなく全身をそんなふうに鍛え上げているので、プロレスラーはお相撲さんとだけは喧嘩したくないそうです。

お相撲さんではない一般人の私たちでも、それを真似て股関節周辺の筋肉を鍛えたり、じん帯柔軟に保ったりして、少しでも怪我を防ぐ役に立てられるといいですね。

股関節に関わっているのはもちろんお尻だけではありません。いくつかの筋肉とじん帯が私たちの二足歩行を支えています。

美容のためにヒップラインを鍛えるなら、股関節を支える筋肉やじん帯にも同時に気を付けていると、股関節を守ることにも役立ちます。柔軟体操も付け加えるとさらによさそうです。

立ち上がる時に思わず「よいしょ」が出てしまう人は股関節を支える筋肉が弱っているサインかも。

あと「やばい。カルシウム貯金、足りてなかったかも……」という心当たりのある人は、ぜひ今のうちに股関節のストレッチと筋トレをして、将来の不慮の骨折を防ぎましょう。

おしりのトレーニングもお忘れなく!

でも、急に頑張りすぎて筋肉やじん帯を痛めないようにしてくださいね。お相撲さんでも股割りができるようになるまで、5年ぐらいかかるそうですよ。

力士+バレエダンサーなら最強の股関節
力士+バレエダンサーなら最強の股関節 / Credit:Created with ChatGPT/DALL-E

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参考文献

公益財団法人 日本股関節研究振興財団
https://www.kokansetu.or.jp/index.php
人工関節ドットコム
https://www.jinko-kansetsu.com/pain/hip/structure/structure.html

ライター

百田昌代: 女子美術大学芸術学部絵画科卒。日本画を専攻、伝統素材と現代素材の比較とミクストメディアの実践を行う。芸術以外の興味は科学的視点に基づいた食材・食品の考察、生物、地質、宇宙。日本食肉科学会、日本フードアナリスト協会、スパイスコーディネーター協会会員。

編集者

ナゾロジー 編集部

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