私たちの身の近くにある木の樹齢は、せいぜいが数十年ほどでしょう。
しかしこのほど、寒冷としたフィンランドで驚くべき発見がありました。
なんと樹齢1647年の木が見つかったのです。
発見したのは伊パドヴァ大学(University of Padua)の研究チームで、この木は低木としては世界最古になるといいます。
一体何という木なのでしょうか?
研究の詳細は2025年1月21日付で科学雑誌『Ecology』に掲載されました。
目次
- 西暦260年に成長を始めていた⁈
- 古木は気候変動の解明に役立つ
西暦260年に成長を始めていた⁈
パドヴァ大学の研究チームが最初のこの木を見つけたのは2021年のこと。
フィンランド北部のウツヨキ地方にあるトゥルク大学のケヴォ北極圏研究所を訪れていたときのことでした。
チームが発見したのは「セイヨウネズ(学名:Juniperus communis)」と呼ばれるヒノキ科ビャクシン属の針葉樹です。
セイヨウネズはあらゆる樹木の中でも最も広い分布域を持つものの一つであり、北半球の寒い地域全域に自生しています。
基本的には背の低い低木として知られますが、中には10メートルに達するものもあります。
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チームは研究所から5キロメートル離れた場所で非常に古びたセイヨウネズを発見し、その時点で樹齢1242歳に達すると推定していました。
しかし2024年に再びウツヨキを訪れた際に年代測定を改めたところ、驚くべきことに、このセイヨウネズは樹齢1647歳に達していることが判明したのです。
ただこのセイヨウネズはすでに死んでおり、研究者によれば、少なくとも西暦260年には成長を始めて、1906年に枯死したと見られています。
こちらが実際の写真。
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これ以前に最古のセイヨウネズとされていたのは樹齢1070歳の個体でしたが、今回はそれを600年近くも更新する結果となりました。
また低木として見ると世界最古でもあるといいます。
(高木としては、スウェーデンで見つかったドイツトウヒが樹齢9550歳と推定されている)
それからチームは、このセイヨウネズの他にも、同地で樹齢1000年以上に達する個体を4本見つけています。
古木は気候変動の解明に役立つ
この発見は、単なる「長生きの木」の話にとどまりません。
樹齢1000年以上の木は世界各地に存在しますが、これらの木の研究は気候変動の解明にも役立ちます。
木の年輪には、それぞれの年の気候条件が記録されており、過去の気温や降水量の変化を知る手がかりになるのです。
例えば、極端な気象条件に適応できるセイヨウネズの成長パターンを分析することで、未来の気候変動の影響を予測する手助けにもなると研究者は話します。
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またこうした樹齢1000年を大きく超える古木の年代測定は、考古学的な木材の年代測定にも応用できる可能性があります。
この小さな低木が見せてくれる長い歴史は、地球環境の変化を知る上で欠かせない存在なのです。
参考文献
Italian researchers discovered world’s oldest shrub in Finland
https://www.utu.fi/en/news/press-release/italian-researchers-discovered-worlds-oldest-shrub-in-finland
元論文
Common juniper, the oldest nonclonal woody species across the tundra biome and the European continent
https://doi.org/10.1002/ecy.4514
ライター
千野 真吾: 生物学出身のWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部