「鳥頭」という言葉があるように、鳥の知能が低いと考える人は少なくありません。
特に、エミューは「世界で最も愚かな鳥」と呼ばれることがあります。
しかし、ブリストル大学(University of Bristol)の研究チームが行った実験によると、この鳥は独自の工夫を凝らし、新しい方法で食べ物にアクセスできると分かりました。
実は、エミューはそこまで愚かではなく、単にほとんど研究されていないだけだったのです。
この発見は、2025年2月20日付の科学誌『Scientific Reports』に掲載された論文に基づいています。
目次
- 「世界で最も愚かな鳥」エミューは本当に愚かなのか
- エミューは課題を解決する知能を持つと判明!ただしダチョウは……
「世界で最も愚かな鳥」エミューは本当に愚かなのか

エミューは、オーストラリアに生息する世界で二番目に大きな鳥(1位はダチョウ)です。
飛ぶことはできませんが、強靭な脚を持ち、時速50キロ以上のスピードで走ることができます。
彼らは主に草や果実、小動物を食べ、広大な自然環境の中で生き抜くための適応力を持っています。
そしてこの鳥は、ある生物学者によって「世界で最も愚かな鳥」だと評価されてしまいました。
これまで、知能の高い鳥といえばカラスやオウムが代表格でした。
これらは新顎類に属します。
一方で、エミューやレア、ダチョウといった「古顎類」の鳥たちの知能は低いと考えられてきました。
しかしブリストル大学の研究チームは、「古顎類を対象にした研究は、新顎類ほど行われておらず、この差が、エミューなどに誤ったイメージを植え付けている可能性がある」と考えました。
そこで今回、彼らはエミューやレア、ダチョウがどれほどの知能を持っているのか明らかにするために、新たな実験を行いました。
エミューは課題を解決する知能を持つと判明!ただしダチョウは……
研究チームは、エミュー、レア、ダチョウの3種9個体の鳥を対象に、特別な課題(回転式の装置を使った試験)を用意しました。
この装置には、鳥が特定の動作をすることで穴を移動させ、食べ物にアクセスできる仕組みが組み込まれていました。
テストはそれぞれの種に対して、10回のセッションで行われました。

その結果、エミュー3羽とレア1羽が装置を巧みに操作し、食べ物を獲得することに成功しました。
その4羽は、食べ物を手に入れる方法を学習し、90%以上の確率で最適な方向へ穴を動かすことができたのです。
さらに、レアの1羽はボルトを緩めて装置を分解するという意外な行動を見せ、研究者たちを驚かせました。
対照的に、ダチョウはこの課題をクリアできず、種間での認知能力の違いが浮き彫りになりました。
この結果は、エミューやレアが環境に適応しながら問題を解決する能力を持っていることを示しています。
特にエミューは、「世界で最も愚かな鳥」という汚名を返上することができたかもしれません。
今回の研究は、「古顎類は知能が低い」という従来の考えを覆すものとなりました。
実際の知能の差は、それぞれの種を同じレベルで研究することで初めて明らかになるのかもしれません。
参考文献
Big birds like emus are technical innovators, according to University of Bristol researchers
https://bristol.ac.uk/news/2025/february-/big-bird-intelligence-.html
元論文
Palaeognath birds innovate to solve a novel foraging problem
https://doi.org/10.1038/s41598-025-88217-8
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
ナゾロジー 編集部