近年、戦場では無人航空機(UAV)、いわゆるドローンの活用が急増しており、対抗手段が追いついていません。
そこで、米海軍大学院(NPS:Naval Postgraduate School)の研究チームは、AIを活用してレーザー兵器の精度と反応速度を飛躍的に向上させる技術を開発しました。
「新たな技術」を凌駕するために、「新たな技術」を誕生させたのです。
今後、戦場はますます混沌と化すでしょう。
この研究は、2024年11月22日付の『Machine Vision and Applications』誌に掲載されています。
目次
- 戦場はドローンやAIが支配している
- ドローン特化のAIレーザー兵器が誕生
戦場はドローンやAIが支配している
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近年、ドローン技術の発展により、小型で高速な無人航空機(UAV)が多数登場しています。
こうしたドローンは、戦場での偵察や攻撃に使われるだけでなく、テロ攻撃や不正侵入にも利用されるリスクがあります。
しかし、ドローンを迎撃するのは決して簡単ではありません。
現在のレーザー迎撃システムでは、オペレーターが目視やレーダーを頼りにドローンを捕捉し、手動で照準を合わせる必要があります。
この方法では、人間の反応速度が追いつかず、複数のドローンを同時に迎撃できないという問題があります。
さらに、状況によっては照準の精度にばらつきが生じ、いつも確実に撃墜できるとは限りません。
ここでAIの出番です。
研究チームはAIがドローンの動きをリアルタイムで予測し、最適な照準を計算するシステムを開発しました。
では、AIはどのようにドローンを見分け、迎撃を最適化するのでしょうか。
ドローン特化のAIレーザー兵器が誕生
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研究チームは、AIを訓練するために膨大なデータセットを使用しました。
具体的には、実際のドローンの画像データ約7万7,000枚、シミュレーションによる合成画像データ約10万枚を収集し、それらを組み合わせたデータセットを用いてAIを学習させました。
この大規模なデータセットにより、AIはさまざまな状況下でのドローンの形状や動きを学習し、実際の戦場において、より高い精度で識別できるようになりました。
具体的には、ドローンの種類を識別するだけでなく、その動きをリアルタイムで分析し、ドローンがどの方向に移動しているのか瞬時に判断できます。
また飛行姿勢の変化を検出。弱点を探し出し、そこにレーザー兵器の照準を定め、自動調整することが可能です。
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研究チームは、次の段階として、ドローンへの照準を自動化することを目標にしており、既に開発とテストが進められています。
この研究の成果により、人間の介入なしでドローンを迎撃できる未来が現実味を帯びてきました。
しかし、AIが敵と味方のドローンを正確に区別できるか、実戦環境でのテスト不足、AI制御の迎撃システムがサイバー攻撃にさらされた場合の対策など、まだいくつかの課題が残されています。
戦争は今や、ドローンやAIが行うものです。
そしてこれらの技術が定着した後には、再び、ドローンやAIを凌駕する新しい技術が生み出され、次々に戦場へと投入されることでしょう。
この悲惨な技術成長は、果たしていつまで続くのでしょうか。
参考文献
US Navy uses AI to train laser weapons against drones
https://newatlas.com/military/us-navy-uses-ai-train-laser-weapons-against-drones/
NPS Develops AI Solution to Automate Drone Defense with High Energy Lasers
https://www.navy.mil/Press-Office/News-Stories/Article/4064895/nps-develops-ai-solution-to-automate-drone-defense-with-high-energy-lasers/
元論文
Deep learning for unambiguous pose estimation of a non-cooperative fixed-wing UAV
https://doi.org/10.1007/s00138-024-01630-3
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
ナゾロジー 編集部