かつて恐竜が陸を支配していた時代、海では、長い首と大きなヒレを持つプレシオサウルスが優雅に泳いでいました。
今回、スウェーデンのルンド大学(Lund University)のミゲル・マルクス(Miguel Marx)氏ら研究チームは、約1億8300万年前のプレシオサウルスの軟組織を詳細に分析し、その驚くべき特徴を明らかにしました。
この研究によると、プレシオサウルスの尾の皮膚は滑らかでありながら、ヒレには小さな鱗が存在していました。
研究の詳細は、2025年2月6日付の『Current Biology』誌に掲載されています。
目次
- 恐竜時代の海生爬虫類「プレシオサウルス」の軟組織を調査
- プレシオサウルスは「滑らかな皮膚」と「鱗状の皮膚」の両方を持っていた
恐竜時代の海生爬虫類「プレシオサウルス」の軟組織を調査
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プレシオサウルスは、映画や図鑑でよく見かける有名な海生爬虫類です。
長い首と4枚の大きなヒレを持ち、優雅に海の中を泳いでいました。
世界中で多くのプレシオサウルスの化石が発見されてきましたが、そのほとんどは骨格のみです。
軟組織のサンプルはこれまでに8つほどしか記録されておらず、皮膚の構造についてもほとんど分かっていませんでした。
ちなみに、同じ時代に海を泳いでいた魚竜は、イルカのような滑らかな皮膚を持っていたことが知られています。
では、プレシオサウルスの皮膚はどのようなものだったのでしょうか?
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この疑問に答えるため、今回研究チームは、ドイツのホルツマーデンで発見された約1億8300万年前のプレシオサウルスの化石(MH 7という名称)を、最新の分析技術を駆使して調査しました。
この化石は、軟組織の保存状態が極めて良好であり、皮膚の詳細な構造を明らかにする貴重な手がかりとなりました。
プレシオサウルスは「滑らかな皮膚」と「鱗状の皮膚」の両方を持っていた
研究では、化石の軟組織を詳しく観察し、どのような構造を持っているのかを調べました。
その結果、プレシオサウルスの尾の皮膚は滑らかで、メラノソーム(色素細胞)が豊富に含まれていると分かりました。
研究チームは、「プレシオサウルスは魚やイカのような生物を捕まえるために効率よく泳ぐ必要があったが、滑らかな皮膚のおかげで楽に泳げた」とコメントしています。
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一方で、ヒレの皮膚には小さな三角形の鱗が存在することが分かりました。
研究チームによると、「この鱗状の皮膚は、亀の甲羅やモササウルス科の鱗によく似ている」ようです。
このプレシオサウルスの鱗状のヒレは、水中での推進力を高めたり、海底を移動する際の安定性を向上させる役割があったと考えられます。
つまり、最新の分析により、プレシオサウルスは滑らかな皮膚と鱗状の皮膚の両方を持っていたと分かります。
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プレシオサウルスは、海の中で効率的に泳ぐだけでなく、海底でも活動していた可能性があります。
このように、これまでの研究では考えられていなかった新たな特徴が示されたことで、プレシオサウルスの生態に関する理解が進みました。
今後、保存状態のより良い標本が発見されるなら、プレシオサウルスの外見や生態が一層明確に復元されるでしょう。
参考文献
Soft tissue from a 183 Million-Year-Old Jurassic Plesiosaur analysed
https://www.lunduniversity.lu.se/article/soft-tissue-183-million-year-old-jurassic-plesiosaur-analysed
Amazing Fossil Reveals Turtle-Like Scales on Jurassic Plesiosaur
https://www.sciencealert.com/amazing-fossil-reveals-turtle-like-scales-on-jurassic-plesiosaur
元論文
Skin, scales, and cells in a Jurassic plesiosaur
https://doi.org/10.1016/j.cub.2025.01.001
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
ナゾロジー 編集部