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「ネコは言葉がわかる?」人間の赤ちゃんより単語の音と意味を結びつける能力に優れていた


麻布大学の研究によると、ネコは人間の赤ちゃんよりも速く単語と物体を関連付ける能力を持つことが明らかになりました。研究では、ネコに対して意味を持たない単語を使い、それに対応する画像を見せるテストが行われました。結果、ネコは画像と単語を関連付ける能力において、1回の学習で約9秒間で習得することができ、人間の赤ちゃんよりも約4倍速いことが判明しました。この研究から、ネコが人間の会話を聞き、単語を素早く学習できる可能性が示され、飼い主にとってはネコに話しかけ続けることが無駄ではないことが示唆されています。

可愛らしい見た目や仕草で人間を虜にするネコ。

しかし、飼い主の言葉に感情豊かに反応するイヌに比べ、ネコは名前を呼んだり話しかけても反応が薄く、人間の言葉の意味はわかっていないように感じます。

ただネコの知能は一般的に人間の2〜3歳児程度とされ、人間の言葉をある程度理解しているともいわれます。

そこで、麻布大学の研究チームはネコがどれくらい速く単語と物体を関連付けられるかを調べるため、単語連想力テストを行いました。

その結果、ネコは人間の赤ちゃんよりも短い時間で言葉と絵を結びつけることができる、つまり連想能力が優れていると判明しました。

研究の詳細は2024年10月4日付で『Scientific Reports』に掲載されました。

目次

  • ネコは人間の言葉を理解しているのか?
  • 単語連想力テストでネコが人間の赤ちゃんに圧勝

ネコは人間の言葉を理解しているのか?

ネコとイヌは我々の代表的なパートナーであり、「Are you a cat person or a dog person?(ネコ派?イヌ派?)」という質問は世界共通の鉄板ネタになっています。

人と暮らし始めた年代は、ネコが約5000年前、イヌが約1万5000年前といわれ、共に人間とは非常に長い付き合いです。

そんな彼らとの生活から、自然と湧いてくるのが「果たして人間の言葉を理解しているのだろうか?」という疑問です。

イヌは、名前を呼ぶと駆け寄ってきたり、人間の発した単語を聞き分けて物を取ってくるなどの行動からも実感できるように、平均89単語を理解できることが実証されています。

一方、ネコは名前を呼んでも反応したりしなかったりで「うちの子は言葉をわかっているのかしら?」と不思議に思う人も多いようです。

実際のところ、ネコは自分の名前だけでなく、身近な人間や他のネコの名前も理解できるという研究報告があるように、イヌと同様、単語と物体を関連付ける基本的な能力を持っています。

では、ネコは一体どのくらいの速さで単語と物体を結びつけ、連想することができるのでしょうか?

検証のため、麻布大学の研究チームは、人間の赤ちゃんに使用された単語連想力テストをネコに行わせました。

単語連想力テストで勝負!ネコvs人間の赤ちゃん
単語連想力テストで勝負!ネコvs人間の赤ちゃん / Credit: pixabay

単語連想力テストでネコが人間の赤ちゃんに圧勝

単語連想力テストは、ネコカフェ所属のネコ23匹と家庭で飼われているネコ8匹、合計31匹の協力のもと行われました。

まず、赤色の「太陽」と青色の「ペガサス」の画像を準備し、それぞれに対応する言葉として「Parumo」、「Keraru」という意味を持たない単語を割り当てました。

人間は3色型色覚を持ち赤・青・緑を区別できますが、ネコは2色型色覚であり赤と緑を見分けられないため、画像には赤と青が使用されました。

そして、飼い主が単語を発している音声を同時に流しながら、この画像に拡大・縮小のアニメーションをつけたものをラップトップパソコンのモニターで繰り返しネコに見せました。

テストの第一段階として、ネコが「太陽」は「Parumo」である、「ペガサス」は「Keraru」である、と認識して刺激に慣れるよう、正しい組み合わせのアニメーションを繰り返し見せ、ネコがモニターを注視する時間を測定しました。

(資料画像ではKeraruは雲のイラストに見えるが、論文ではペガサスを用いたと説明されている)

ネコがモニターを見る時間が減るほど刺激に慣れたことを意味しており、注視時間が最初に映像を見せた時より50%減少するまでこのテスト段階を続けました。

基準を満たした後、テストの第二段階として、提示する画像と単語の組み合わせを半数入れ替えてアニメーションを見せました。

第一段階:2種類の画像に意味を持たない単語を割り当てネコに見せる、第二段階:正しい組み合わせだけでなく画像と単語を入れ替えた組み合わせを見せる
第一段階:2種類の画像に意味を持たない単語を割り当てネコに見せる、第二段階:正しい組み合わせだけでなく画像と単語を入れ替えた組み合わせを見せる / Credit: Saho Takagi et al., Scientific Reports(2024)

テストの結果、ネコは画像と単語の組み合わせの入れ替えに気付き、正しい組み合わせを提示した時に比べてモニターの注視時間が長くなりました。

つまり、ネコは「太陽」=「Parumo」というように画像と単語を関連づけることができると証明されたのです。

また、注目すべきことに、1つの画像と単語の組み合わせを学習するのに、ネコはわずか2回の9秒間しかかかりませんでした。

同様のテストにおいて、人間の赤ちゃんは4回の20秒間かかったのと比較すると約4倍の速さという驚くべき結果でした。

現時点では、ネコがこれほど速く学習できる理由は明らかになっておらず、自ら人間との暮らしに適応してきた自己家畜化の結果である遺伝的な能力なのか、あるいは人間と生活しながら経験的に獲得されてきたのかは謎のままです。

また、優秀なイヌは一度覚えた単語を2カ月間記憶しておけるとの研究結果もあり、ネコがどれくらいの期間、学習した記憶を保てるのかも気になるところです。

今後、野良ネコやイヌ、他の家畜との比較研究が行われれば、これらの謎が解明され、ネコ語翻訳機やアプリなどコミュニケーションツールのさらなる発展も期待されます。

少なくとも、今回の研究結果からネコが人間の会話を聞き、単語を素早く学習できることがわかったため、「毎日話しかけても無駄かもしれない」と諦めかけていた飼い主にとっては朗報といえます。

たとえ愛猫が無反応でもめげずに話しかけてみましょう。

全ての画像を見る

参考文献

Cats associate human words with images, experiment suggests
https://phys.org/news/2024-10-cats-associate-human-words-images.html

元論文

Rapid formation of picture-word association in cats
https://doi.org/10.1038/s41598-024-74006-2

ライター

門屋 希実: 大学では遺伝学、鯨類学を専攻。得意なジャンルは生物学ですが、脳科学、心理学などにも興味を持っています。科学のおもしろさをわかりやすくお伝えし、もっと日常に科学を落とし込むことを目指しています。趣味は釣り。クロカジキの横に寝転んで写真を撮ることが夢。

編集者

ナゾロジー 編集部

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