デンマークの浜辺で驚きのシロモノが発見されました。
地元の自然保護団体ナトゥール・ボーンホルム(NaturBornholm)の報告によると、第一発見者の清掃員は当初、「ビーチに巨大なウミヘビの死骸が落ちている」ことに気づいたという。
ところが近づいてよく見ると、なんとその正体は全長1.5メートルもある「クジラのペニス」だったのです。
目次
- ウミヘビ発見!と思ったら「クジラのペニス」だった
- なぜクジラのペニスが千切れたのか?
ウミヘビ発見!と思ったら「クジラのペニス」だった
クジラのペニスが見つかったのは、バルト海に浮かぶデンマーク領の島「ボーンホルム島」のビーチです。
先月の9月16日、ビーチ清掃員として作業をしていたレネ・ヴィルショルム(René Vilsholm)さん、モーテン・ゲプハルト(Morten Gebhardt)さん、ケネス・ニールセン(Kenneth Nielsen)さんの3人はいつものようにビーチのゴミ拾いをしていました。
日頃はプラスチックごみや船の部品を拾い集めている日々ですが、その日は3人が話しているように「いつもと全く違う1日」でした。
3人は例のごとくゴミ拾いをしていたところ、少し先に細長くて先端がヘビのように曲がっている異物に気づきました。
最初は「巨大なウミヘビの死骸だろう」と思ったといいます。
しかしウミヘビにしては幅があまりに太く、様子が違っていました。
そして近づいてよく見ると、その物体には目や口がなく、根元の部分が切断されているようで、明らかにウミヘビではありませんでした。
そこで3人は地元の自然保護団体であるナトゥール・ボーンホルムに連絡し、自分たちが拾った奇妙な物体を調べてもらうことに。
その結果、これは全長1.5メートルにおよぶ「ザトウクジラのペニス」であることが判明したのです。
クジラのペニスが漂着する例は極めて珍しいため、これは貴重なサンプルとなります。
しかも同団体の研究者によると、このペニスは今年初めに同じくボーンホルム島のビーチに打ち上げられたザトウクジラの死骸のものである可能性が高いという。
そのクジラにはペニスの部分がなく、この個体の他にクジラは打ち上がっていないことから、死ぬ直前に切断されたペニスが時間差で漂着したものかもしれないとチームは話しています。
なぜザトウクジラのペニスが千切れてしまったのかは不明ですが、可能性としてはどのようなシナリオが考えられるのでしょうか?
なぜクジラのペニスが千切れたのか?
ザトウクジラのペニスについては長年にわたり、専門家による詳しい研究が進められています。
クジラのペニスは普段、尻尾近くにあるスリット(割れ目)の中に格納されており、交尾をするときに外部に露出させます。
大きいものだと全長3メートルにも達し、まれに海面上にペニスを突き出した光景はまるでネッシーのようです。
こちらは2022年4月に撮影されたクジラのペニスとネッシーと比較した画像。
Back in day, travellers/explorers would draw what they saw. This is where many sea monster stories come from ie. tentacled and alienesque appendages emerging from the water –giving belief to something more sinister lurking beneath….however, many cases it was just whale dicks. pic.twitter.com/6ZH1nJZvB1
— Prof. Michael Sweet (@DiseaseMatters) April 8, 2022
彼らはこの立派なペニスを使ってメスと交尾を行いますが、実はそれだけではありません。
2022年に、米ハワイのマウイ島沖でザトウクジラの交尾行動が世界で初めて目撃されたのですが、なんと交尾をしていた2頭はどちらも「オス」だったのです(正式な研究報告は2024年2月に科学雑誌『Marine Mammal Science』に掲載されました)。
同性間での性行為はヒトの他にサルやゴリラ、イルカ、ゾウなど広いグループに見られますが、ザトウクジラも同じ行動をとっていることが判明しました。
こちらが実際の写真。
同性間の性行為には単純な娯楽から社会的結びつきの強化、コロニー内における支配関係の確立、繁殖行動の練習といった目的がありますが、ここで観察されたケースは一方のオスによる強制的なレイプだった可能性が高いとのことです。
では問題の「ペニスが千切れてしまう原因」には何があるのでしょうか?
クジラ研究の専門家らは2022年に、630頭のザトウクジラの群れを121時間にわたって追跡観察し、計13回の勃起イベント(スリットからのペニスの露出)を確認しました。
そこで勃起イベントのほとんどはオス同士が互いの優位性を争う際に起こっていたことがわかったのです。
このことから、オス同士が自分のペニスをぶつけ合ったり、相手のモノに噛みつく可能性が考えられます。
しかしザトウクジラは歯があるハクジラ亜目ではなく、歯のないヒゲクジラ亜目の一種です。
そのため、相手のペニスを歯で噛みちぎることはありえません。
そこで最も可能性の高いシナリオとして提唱されているのが、シャチや大型のサメによって噛みちぎられたという説です。
交尾を求めて単独で泳ぐオスのザトウクジラは、求愛のための歌を歌いながらペニスを体外に露出させてメスを探します。
そのときに運悪く近くを通ったシャチやサメに見つかって、海中で真っ白に目立つペニスが狙われたと見られるのです。
今回、デンマークの浜辺で見つかったペニスがこのシナリオ通りに切断されたかどうかはまだわかっていません。
研究チームは現在発見されたペニスを冷凍保存しており、今後詳しい調査を進めていく予定です。
いずれにせよ、このペニスの持ち主が悲惨な最期を遂げたことには違いないでしょう。
参考文献
1.5-Meter “Sea Snake” Picked Up On Danish Beach Is Actually…A Whale Penis
https://www.iflscience.com/15-meter-sea-snake-picked-up-on-danish-beach-is-actually-a-whale-penis-76230
ライター
大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。
他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。
趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。
編集者
ナゾロジー 編集部