付き合い始めた時は、誰もが最高の気分を味わうものです。
しかし、お互いが本当の姿を知るにつれて、徐々に相手への不満が募っていき、最終的に多くのカップルは破局を迎えます。
では、そのようなカップルの破局の目安を数値化することは可能でしょうか?
ドイツのヨハネス・グーテンベルク大学マインツ(Johannes Gutenberg University Mainz)に所属するヤニナ・ラリッサ・ビューラー氏ら研究チームは、最近の研究により、「カップルが破局を迎える閾値を発見した」と報告しました。
相手のことが好きであれば、死守するべき満足度のボーダーラインがここから明らかになるようです。
研究の詳細は、2024年版の学術誌『Journal of Personality and Social Psychology』に掲載されました。
目次
- 今の関係は大丈夫?
- 破局のボーダーラインは満足度65%
今の関係は大丈夫?
彼女ができた時は、自分が幸せの絶頂期にいるかのように感じるものです。
彼女はいつも笑顔で、「自分たちは相性が良い!ずっと一緒にいたい!」と考えるかもしれません。
しかし時経つうちに、彼女の顔がいくらか曇りはじめ、自分に対して不満を口にするようになります。
そんな時、あなたはこう感じるかもしれません。
「彼女は私に満足できていないのではないか。もしかしたら、いつか別れを切り出されるのではないか」
「カップルの破局」自体は、世界中で日々生じていますが、それが自分の体験とならないようにするためには、どうすればよいのでしょうか。
もし破局のボーダーラインを知っているなら、パートナーの顔色を窺い過ぎて疲れることと、パートナーを蔑ろにして破局することの両方を避けられるかもしれません。
ちなみに、恋愛関係の解消と継続に関するこれまでの研究では、主に若者たちに焦点が当てられており、現在の知識の多くは若者から得られたものです。
しかし人は、どの年齢でも恋愛をし、新しいカップルとなる可能性があります。
また結婚後も2人の関係は続くものであり、それがどこかの段階で破綻することもあれば、その後、別の人と付き合って再婚に至ることもあります。
そこで今回、ビューラー氏ら研究チームは、若者だけでなく、人生の様々な段階にある人々を対象に、カップルにおける満足度の変化や破局との関連性を調べることにしました。
破局のボーダーラインは満足度65%
研究チームは、過去の調査データも利用し、16~90歳の2268人を対象に、カップルの誕生や破局、満足度の推移などを調査しました。
これらの分析には、性別や子供の有無、相手に対する満足度などの情報も使用しました。
相手への満足度は、10項目からなる結婚生活満足度の調査票「Marital Satisfaction Scale(Gilford-Bengtson,1979)」が用いられました。
この調査票では、例えば「大事なことについての意見の食い違い」「自由な意見交換」「一緒に笑う頻度」などの評価項目があり、参加者はそれぞれを5段階評価しました。
そしてこれらのスコアの合計により、満足度が算出されました。
分析の結果、満足度が最大スコアの約65%にまで低下した時、そのカップルは分かれる傾向にあると分かりました。
この数字(割合)は、不満が大きくなりすぎて関係を維持できなくなるボーダーラインを示しています。
もちろん実際のカップルでは、それが付き合っている最中であれ、結婚関係の中であれ、相手の満足度を数字ではっきりと知ることはできません。
それでも、普段の表情や対応から、大まかな満足度を推察することはできるかもしれません。
時には、「パートナーは100点中、何点?」というストレートな質問が飛び交うことさえあるかもしれません。
そんな時、もし「70点」とか「60点」などと評価されるなら、危険意識を持った方が良いでしょう。
なぜなら、破局のボーダーラインである満足度65%付近だからです。相手は関係の解消を願っているかもしれません。
一方で、この数字は、私たちがパートナーから100点満点の評価をもらう必要が無いことも示しています。
人には必ず欠点があり、現状でどこまで満足できるかも人それぞれで異なります。
だからこそ、相手が満足度80%や90%の状態にあれば、パートナーの満足度を上げようと必死になって苦しむ必要もないでしょう。
ちなみに今回の研究では、若いカップルは、年配のカップルに比べて、時間の経過とともに満足度が急激に低下する傾向にあることも分かりました。
また、「パートナーいない歴」が長い人ほど、新しい交際関係に満足できると分かりました。
逆に、以前の交際が終わってから、すぐに新しい交際を始める人ほど、新しい交際で相手への満足度が低いと分かりました。
こうした情報は、どんな人と付き合うか、また自分たちがどれほど破局しやすい状態にあるかを考える上で役立つことでしょう。
今回の研究で示された破局のボーダーラインは、私たちが現状を大まかに把握し、パートナーとの良い関係を保ち続けるための助けとなります。
また彼氏彼女がかなりの期間いないとしても、将来に期待を持てます。
そうした人こそ、新しく始まる恋愛関係では、大きな満足感を得られるからです。
参考文献
Researchers identify a critical threshold for relationship breakups
https://www.psypost.org/researchers-identify-a-critical-threshold-for-relationship-breakups/#google_vignette
元論文
How relationship satisfaction changes within and across romantic relationships: Evidence from a large longitudinal study.
https://psycnet.apa.org/doi/10.1037/pspp0000492
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
ナゾロジー 編集部