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宇宙から見て地球に「生命の痕跡」はちゃんと見つかるのか?観測してみた結果…


「地球以外に生命のいる惑星はあるのだろうか?」


この好奇心のもと、人類は長年にわたって地球外生命体を探し続けてきましたが、いまだに見つかっていません。


こうなるともはや「生命の探し方が間違っているのではないか」との疑念が湧いてきます。


そこで欧州宇宙機関(ESA)は発想を逆転して、宇宙から地球の大気層を観測し、化学的な”生命の痕跡”が見つかるかどうかを検証してみました。


もちろん、地球にはさまざまな生物が暮らしているので、必ず”生命の痕跡”は見つからないといけません。


もし見つからなければ、生命の探し方そのものが間違っているということになります。


果たして、結果はどうだったのでしょうか?


 




目次



  • 生命探索の目を「地球」に向けてみた
  • 地球の大気に「生命の痕跡」を検出!

生命探索の目を「地球」に向けてみた


今回の調査は、現在進められている「木星氷衛星探査計画」の中で行われました。


木星氷衛星探査計画とは、木星の周りを公転する氷衛星「エウロパ」「ガニメデ」「カリスト」を観測対象としたESA主導の国際ミッションです(日本のJAXAも参加)。


これらの衛星は外から見ると氷の塊にしか見えませんが、その地表下には水や海が存在する可能性があり、それに伴って”生命の痕跡”が見つかる可能性が期待されています。


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木星を公転する4つのガリレオ衛星/ Credit: ja.wikipedia, canva(ナゾロジー編集部)

そこで活躍が期待されるのが、木星氷衛星探査機「JUICE(ジュース)」です。


JUICEはすでに2023年4月に宇宙に向けて打ち上げられており、2024年8月に月と地球をフライバイ(近くを通過すること)し、今後、太陽系をぐるぐると回りながら、2031年7月に木星系へと到着する予定となっています。


こちらがJUICEの地球〜木星までの道のりを示したタイムスケジュールです。


(黄色がJUICEの通過するルート)


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Credit: JAXA –JUICE木星氷衛星探査計画ガニメデ周回衛星

到着後はカリスト・エウロパ・ガニメデの順に数年かけて探査を行い、2035年に全体のミッションを終了する予定です。


その探査の前にESAの研究チームは、JUICEに搭載した探査機器が正しく機能するかどうかのテストも兼ねて、地球に向けた観測ミッションを行うことにしました。


これでもし地球から”生命の痕跡”が見つからなければ、JUICEは木星系に行っても正しい仕事ができないことを意味します。


果たして、JUICEに生命を見つける能力はあったのでしょうか?


地球の大気に「生命の痕跡」を検出!


研究チームは今回、JUICEが8月20日に地球近傍をフライバイしたタイミングで、地球に向けた観測テストを実施しました。


ここではJUICEに搭載された2つの機器「MAJIS(可視・近赤外撮像分光計)」「SWI(サブミリ波観測器)」がメインに使われています。


これらは共に地球の大気中に含まれる化学成分を調べて、生命を形作るのに必要な材料(元素)が見つかるかどうかをチェックするものです。


もしそれらの化学成分が検出されれば、その惑星(衛星)は「生命が存在しうる、あるいは居住可能である」ことを指し示します。


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MAJISで太平洋を撮影した画像/ Credit: ESA –Juice confirms that Earth is habitable(2024)

そしてJUICEで地球を観測した結果、見事に地球には”生命の痕跡”が存在することが確認できたのです。


今回の観測で検出されたのは、一般に「CHNOPS(シュナップス)」と呼ばれる6種類の元素でした。


CHNOPS(シュナップス)とは、炭素(C)・水素(H)・窒素(N)・酸素(O)・リン(P)・イオウ(S)の6つの頭文字を繋いだ名称で、これらは生命を形作る化学成分として必須の元素とされています。


JUICEの観測機器はちゃんと、地球の大気中に酸素(O)や水(H₂O)、二酸化炭素(CO₂)、オゾン(O₃)といった生命にとって重要な分子を見つけることができました。


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SWIで地球の大気表面を観測した結果(青丸は観測ルート)/ Credit: ESA –Juice confirms that Earth is habitable(2024)

この結果からJUICEには”生命の痕跡”を正しく見つける能力が備わっていることが確かめられました。


同プロジェクトに参加している研究者はこう述べています。


「私たちはこの結果に決して驚いてはいません。逆に地球に生命の痕跡がないと判断されていれば、非常に心配でした。


しかし今回の観測結果はJUICEが木星系でうまく機能することを示しており、氷の衛星が過去または現在において生命が居住しうる場所かどうかを見極めるのに役立ってくれるでしょう」


あるいは氷の世界に住む何らかの生命体を見つけ出してくれるかもしれません。


全ての画像を見る

参考文献

Juice confirms that Earth is habitable
https://www.esa.int/Science_Exploration/Space_Science/Juice/Juice_confirms_that_Earth_is_habitable

ESA Spacecraft Heading To Jupiter’s Moons Detects Signs Of Life On Earth
https://www.iflscience.com/esa-spacecraft-heading-to-jupiters-moons-detects-signs-of-life-on-earth-75909

JUICE木星氷衛星探査計画ガニメデ周回衛星
https://juice.stp.isas.jaxa.jp/

ライター

大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。
他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。
趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。

編集者

ナゾロジー 編集部

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