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新研究が示す神話生物グリフォンの驚くべき起源!


神話に登場する幻想生物グリフォンは、ワシ(あるいはタカ)の翼と上半身、ライオンの下半身を持つ怪物として描かれます。

この姿に関しては、「恐竜の化石にもとづいて描かれた」という説が長らく支持されてきました。

しかし、最新の研究により、この理論には多くの疑問が投げかけられています。

特に今回、中央アジアのプロトケラトプスの化石がグリフォンの起源とされる説に対し、イギリスのポーツマス大学(University of Portsmouth)に所属するマーク・P・ウィットン氏ら研究チームは、その根拠の薄さを指摘し、より詳細な検証を行いました。

彼らによると、グリフォンが恐竜化石を元に描かれたという説明は「後付け」であるというのです。

研究の詳細は、2024年6月20日付の学術誌『Interdisciplinary Science Reviews』に掲載されました。

目次

  • 神話上のグリフォンはどこから来たのか
  • グリフォンは恐竜化石を元に描かれていなかった!?

神話上のグリフォンはどこから来たのか

神話の生物「グリフォン」のイメージ。
神話の生物「グリフォン」のイメージ。 / Credit:Wikipedia Commons_グリフォン

グリフォンは、ライオンの体とワシの頭と翼を持つ架空の生物であり、古代ギリシャやペルシアの神話に登場します。

彼らは「黄金を守る存在」「神の守護者」として描かれ、多くの文化で神聖視されてきました。

そしてグリフォンの独特で印象的な姿は、古代の芸術作品や文学作品に多く見られます。

例えば、その姿は護符や装飾品、建築物などに頻繁に目にすることが出来ます。

また王権のシンボルとして利用されることもあり、王族や貴族の墓などに描かれてきました。

さらにグリフォンの姿は現代にまで十分に知れ渡っており、映画やゲームなどに度々登場しています。

カプコン開発のゲーム「ドラゴンズドグマ2」の中で描かれるグリフィン。(グリフォンはフランス語読み、グリフィンは英語読みの呼び方。日本ではどちらも使われる)
カプコン開発のゲーム「ドラゴンズドグマ2」の中で描かれるグリフィン。(グリフォンはフランス語読み、グリフィンは英語読みの呼び方。日本ではどちらも使われる) / Credit:©CAPCOM

では、これほどまでによく知られているグリフォンのイメージの起源はどこにあるのでしょうか。

グリフォンの起源に関するアイデアの1つに、「古代人が恐竜化石を発見し、それを元にグリフォンを描いた」というものがあります。

プロトケラトプスの全身骨格
プロトケラトプスの全身骨格 / Credit:Wikipedia Commons_プロトケラトプス

特に、「中央アジアで発見されたプロトケラトプス(学名:Protoceratops)の化石が影響を与えた」という説が有力視されています。

この説は、1990年代に提唱されました。

角竜の一種であるプロトケラトプスの化石が中央アジアで金鉱を探していた古代の遊牧民によって発見され、それが交易路を伝って遠くへ渡り、グリフォンの物語や芸術を生んだというのです。

確かに恐竜という存在を知らずにこの化石を見た場合、頭部の骨の形状はワシやタカなどのくちばしを連想させる気がします。

しかし今回、ウィットン氏ら研究チームは、この説の真実性を調査し、根拠の薄さを指摘しました。

グリフォンは恐竜化石を元に描かれていなかった!?

ウィットン氏ら研究チームは、歴史上の化石記録、プロトケラトプスの化石の分布と性質、グリフォンとプロトケラトプスを結び付ける資料を再分析しました。

また歴史家や考古学者から、化石にもとづかないグリフォンの起源の見解を入手し、検討しました。

その結果、「グリフォンは恐竜化石を元に描かれた」説には多くの問題点があり、根拠が薄いことを発見しました。

「グリフォンの起源はプロトケラトプスの化石」説には問題が多い
「グリフォンの起源はプロトケラトプスの化石」説には問題が多い / Credit:Mark P. Witton(University of Portsmouth)et al., Interdisciplinary Science Reviews(2024)

まず、プロトケラトプスの化石は、金鉱山の近くで見つかっていないことが挙げられます。

これは、グリフォンが金を守る存在として描かれることと矛盾します。

また、恐竜化石が発見されたタイミングと、過去のグリフォンの絵が描かれたタイミングが異なることも挙げられます。

例えば、グリフォン神話は地中海地方に数多く存在しており、少なくとも紀元前12世紀の花瓶にはグリフォンが描かれています。

しかし、恐竜のニュースがその地域に届くのは、何百年も後のことです。

恐竜化石の情報を元にグリフォンを描くことなどできなかったはずなのです。

さらに、プロトケラトプスとグリフォンの類似点が強調されすぎているとの批判もあります。

プロトケラトプスの骨格とグリフォンの類似点は少ない
プロトケラトプスの骨格とグリフォンの類似点は少ない / Credit:Mark P. Witton(University of Portsmouth)et al., Interdisciplinary Science Reviews(2024)

確かに、プロトケラトプスとグリフォンの骨格は、「クチバシ」と「四肢がある」という点で似ています。

しかし、「それだけ」です。

この僅かな類似点から、古代人が「化石を発見した後、グリフォンをイメージした」というのはかなり無理のある話なのです。

そのため研究チームは、「グリフォンの起源は、単に神聖視されていた実在する動物の特徴を組み合わせたキメラであり、恐竜の化石を元にその姿を復元しようとして生まれたわけではない」と考えています。

ワシやライオンといった動物が、様々な地域で神聖視されていた事は確かであり、それらが融合してグリフォンの姿が誕生したという考え方の方が、恐竜の化石が元ネタというより説得力があるというわけです。

今回の結論は、グリフォンの起源だけでなく、他の神話上の生物の起源を探る上でも役立つことでしょう。

現実には存在しない幻想生物の姿はどこから来たものなのか? ここには古代のロマンが詰まっています。

恐竜の存在を知らなかった時代の人々が、異形の巨大な骨を解釈するために生まれたのか? それとも何かを見間違えたのか?

恐竜の化石が古代の神話に影響を与えたという考え方は、想像しやすくまた面白い考察ではありますが、詳しく調べてみると証拠に乏しく、慎重な検討が求められる問題だとわかります。

こうした検証のプロセスが、神話や古代の歴史を一層正しく理解するためには大切なのです。

全ての画像を見る

参考文献

Did Dinosaurs Inspire The Legendary Griffin? Scientists Solved The Mystery
https://www.sciencealert.com/did-dinosaurs-inspire-the-legendary-griffin-scientists-solved-the-mystery

元論文

Did the horned dinosaur Protoceratops inspire the griffin?
https://doi.org/10.1177/03080188241255543

ライター

大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。

編集者

ナゾロジー 編集部

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