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6億年前の地球磁場の崩壊が「生命の大進化」を促していた⁈


地球上の生物はすべて「磁場のバリア」によって守られています。

もし磁場がなくなると、宇宙からの放射線が降り注ぎ、地上の生態系は壊滅してしまうでしょう。

それほど磁場は生物にとって大事なわけですが、このほど米ロチェスター大学(University of Rochester)の最新研究により興味深い事実が判明しました。

それによると、今から約6億年前に地球の磁場が史上最低レベルにまで弱まったのですが、これこそが「エディアカラ動物群」の大進化を促したというのです。

一体なぜでしょうか?

研究の詳細は2024年5月2日付けで科学雑誌『Communications Earth &Environment』に掲載されています。

目次

  • なぜ磁場の弱まりが「生命の大進化」を促すのか?

なぜ磁場の弱まりが「生命の大進化」を促すのか?

エディアカラ動物群は1946年にオーストラリアにあるエディアカラの丘陵で大量発見された古生物の化石群です。

これらの古生物たちは約5億5000万〜6億年前の先カンブリア時代に爆発的に誕生したことがわかっています。

いずれの生物も硬い殻や骨格を持っておらず、柔らかい軟組織だけでできた体をしていました。

クラゲ状や葉っぱ状のもの、あるいはパンケーキ型の「ディッキンソニア」などが有名です。

ディッキンソニアの化石標本(左)と復元イメージ(右)
ディッキンソニアの化石標本(左)と復元イメージ(右) / Credit: ja.wikipedia

ところが数年前に、カナダで発掘された岩石から約5億6500万年前の地球の磁場は史上最低レベルにまで弱まっていたことが示唆されたのです。

磁場が弱まっていたのにエディアカラ動物群が大進化したとは、常識で考えると矛盾しているように思われます。

これはどういうことでしょうか?

そこで研究チームは当時の磁場が本当に弱まっていたのかを確かめるべく、カナダの岩石の他に南アフリカとブラジルで採掘した約5億〜数十億年前の太古の岩石を調べてみました。

調査対象としたのは斜長石という鉱物の結晶で、これには結晶の形成時に地球の磁場がどれくらいの強さだったかを教えてくれる小さな磁性鉱物が含まれています。

そして分析の結果、地球の磁場は当時、確かに弱まっていたことが判明したのです。

具体的に言うと、地球の磁場の弱まりは約5億6500万〜5億9100万年前まで続いており、その磁場レベルは現在の30分の1にまで低下していました

これは記録された中で最低の磁場レベルだといいます。

現在(左)から35億年前(右)にかけての磁場の強さ。5〜6億年前が弱いことがわかる
現在(左)から35億年前(右)にかけての磁場の強さ。5〜6億年前が弱いことがわかる / Credit: John A. Tarduno et al., Communications Earth &Environment(2024)

これはエディアカラ動物群が大繁栄した時期ともろに重なっています。

どうして磁場が弱いのに生物は進化したのか?

研究者らはこれについて、地球の磁場が弱くなったことで、大気中の水素が宇宙空間へ逃げやすくなったことが原因だと指摘します。

地球の水素が減少すると、酸素と結合できなくなるので水自体は減りますが、その代わりに気体としての酸素量が莫大に増えることになります。

こうして地球内の酸素濃度が急激に濃くなった結果、エディアカラ動物群の爆発的な進化が促されたというのです。

エディアカラ動物群の生態系の復元イメージ
エディアカラ動物群の生態系の復元イメージ / Credit: commons.wikimedia

磁場が弱まったことで地上への宇宙放射は強くなったでしょうが、研究者によると、生命は磁場のバリアだけでなく、海の水によっても守られる可能性があると話します。

エディアカラ動物群は磁場が弱まっても「水のバリア」があったことで心置きなく進化できたのかもしれません。

全ての画像を見る

参考文献

Collapse of Earth’s magnetic field may have fueled evolution of life 600 million years ago
https://www.livescience.com/planet-earth/geology/collapse-of-earths-magnetic-field-may-have-fueled-evolution-of-life-600-million-years-ago

Evolution: Weak magnetic field may have supported diversification of life on Earth
https://www.eurekalert.org/news-releases/1042908

元論文

Near-collapse of the geomagnetic field may have contributed to atmospheric oxygenation and animal radiation in the Ediacaran Period
https://doi.org/10.1038/s43247-024-01360-4

ライター

大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。

編集者

ナゾロジー 編集部

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