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まるで休憩する鳥のように「電線にとまって充電できるドローン」


ドローンにおける大きな課題の1つは、飛行時間を伸ばすことです。

現在のドローンはバッテリー容量の問題から、ホビードローンであれば10分程度、本格的な産業ドローンであっても20~30分しか飛べないのです。

南デンマーク大学(SDU)に所属するベト・ズオン・ホアン氏ら研究チームは、そのような課題を解決するかもしれない新しいドローン・システムを開発しました。

彼らが開発したドローンは、電線につかまってぶら下がることができ、その電線からバッテリーを充電することが可能なのです。

ドローンが電線のそばから離れ過ぎない限り、ほぼ無限に空を飛び続けることができるでしょう。

研究の詳細は、2024年3月11日付で、プレゼントサーバ『arXiv』にて発表されています。

またこの論文は、2024年5月13日~17日に開催される「2024 IEEE ロボット工学とオートメーションに関する国際会議」でも発表される予定です。

目次

  • 飛行時間の制限を無くす「電線にとまって充電するドローン」を開発

飛行時間の制限を無くす「電線にとまって充電するドローン」を開発

ドローンの活用方法は多岐にわたります。

例えば、ドローンを使った空撮は広く行われており、まるで鳥のような視点で映像を撮影することができます。

また気象の監視、捜索、救助活動にも活用されています。

最近では、軍事活動のために多くのドローンが使用されているという話も耳にしますね。

宅配ドローンの課題は飛行時間
宅配ドローンの課題は飛行時間 / Credit:Canva

将来的には、ドローンを用いた宅配業も誕生する可能性があります。

現在では荷物・フード配達のほぼすべてを人間が行っていますが、それらをドローンに任せることができるかもしれないのです。

しかし、これらドローン活用例のほとんどの分野において、ドローンの飛行時間がネックになっています。

小さなホビードローンであれば10分、産業用の高価なドローンであっても20~30分程度しか連続飛行できないのです。

このようにドローンは、「すぐに疲れてしまう小鳥のような存在」なのです。

では、この大きな課題をどのように解決することができるでしょうか。

その機械の小鳥がすぐに疲れてしまうのであれば、「再び飛べるようになるまで、木にとまって休めばいい」のです。

木にとまって充電するドローンのイメージ
木にとまって充電するドローンのイメージ / Credit:Drone Infrastructure Inspection &Interaction Group(Youtube)_Manipulating Magnetic Field of Magnetic Gripper with Charging Feature for Drones on Powerlines(2024)

ホアン氏ら研究チームによって新しく開発されたドローンは、電線にとまって充電した後、再び飛行することができます。

このドローンは、他のドローンと大きく変わりませんが、その上部には、受動的に作動する電線グリッパーが備わっています。

そして、ドローンに搭載されたソフトウェアが、バッテリー残量が少ないことを検知すると、機体はカメラとレーダーを使用して最も近い電線を見つけます。

その後、機体は電線の下から上に向かって上昇。

グリッパーが閉じ、電線にぶら下がる
グリッパーが閉じ、電線にぶら下がる / Credit:Viet Duong Hoang(SDU)et al., arXiv(2024)

グリッパー内に電線が入ると、グリッパーが閉じて、ドローンは電線にぶら下がることができるようになります。

この間、ドローンは電力を消費しないだけでなく、電線からバッテリーを充電することができます。

ドローン上部の充電器が、電線から直接電流を引き出すのです。

バッテリーが完全に充電された後は、グリッパーが開き、ドローンは再び飛行することができます。

実際にデンマークの空港の電線を使って行われたテストでは、重さ4.3kgのデモ用ドローンにて、バッテリーを5回充電し、2時間以上稼働させることに成功しました。

テストでは5回の充電により、2時間以上の稼働に成功
テストでは5回の充電により、2時間以上の稼働に成功 / Credit:Drone Infrastructure Inspection &Interaction Group(Youtube)_Autonomous Overhead Powerline Recharging for Uninterrupted Drone Operations –ICRA 2024(2024)

現在、研究チームは、この新しいドローン・システムが遠隔地や悪天候でも機能するよう改良を続けています。

このアイデアが広く普及するなら、ドローンの限界が大きく広がるでしょう。

「電線から遠く離れることはできない」という制限はあるものの、宅配業とはうまくマッチする可能性があります。

ほとんどの宅配先には電線が繋がっているため、そこに荷物を届けるドローンはいつでも充電できるからです。

正式な導入には、盗電にならない仕組みも必要
正式な導入には、盗電にならない仕組みも必要 / Credit:Viet Duong Hoang(SDU)et al., arXiv(2024)

とはいえ、今回の画像を見た人の多くは、「盗電になるのではないか」と感じたはず。

単に導入するだけでは、当然そのような結果になると考えられます。

そのため新しいドローン・システムを正式に導入するには、「充電した分の電気料金を支払う仕組み」も必要になってきます。

そうだとしても、依然としてこのアイデアは魅力的です。

もしかしたら将来は、小鳥たちに並んで、電線にとまって休憩しているドローンを見かけるようになるのかもしれません。

全ての画像を見る

参考文献

Video: Crafty quadcopter sits on power lines to recharge
https://newatlas.com/drones/drone-operate-indefinitely-recharging-power-lines/

Non-stop drone operations enabled by overhead power line recharging
https://interestingengineering.com/innovation/non-stop-drone-operations-power-line-recharging

元論文

Autonomous Overhead Powerline Recharging for Uninterrupted Drone Operations
https://doi.org/10.48550/arXiv.2403.06533

ライター

大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。

編集者

海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。

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