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冷蔵庫に貼った「マグネット」は写真より簡単に楽しい思い出を呼び起こす


現代はスマホを使い様々な思い出を簡単に写真に残していくことが出来ます。

写真は思い出や記念を残す重要なアイテムです。

しかし、写真を見返すよりも、部屋に飾っておいた記念品やお土産品を目にしたときに、深く思い出に浸ってしまうこともよくあります。

思い出の小物は、写真とは異なり記録としては非常に曖昧な存在ですが、じんわりと当時の気持ちを呼び覚ます不思議な効果を持ちます。

この不思議な心理的効果は一体なんなのでしょうか?

今回、イギリスのリヴァプール大学(University of Liverpool)に所属するジョン・バイロム氏ら研究チームは、旅先でお土産用マグネットを購入して冷蔵庫にたくさん貼り付けているという人を対象に、ちょっとした小物が記憶を呼び覚ます効果について調査を行いました。

冷蔵庫に貼られたマグネットは家族への伝言や、TODOメモを挟んで、日常と深く結びつき毎日の生活の中で目にしています。

研究ではそんな冷蔵庫に貼られたお土産のマグネットが、日常の中でふとしたきっかけから楽しかった思い出を引き出すのに大いに役立っていると報告しています。

調査した人の中には、「写真よりもマグネットの方が楽しかった印象を深く呼び覚ます」と答えている人もいました。

研究の詳細は、2024年1月18日付の学術誌『Annals of Tourism Research』に掲載されました。

目次

  • 記念品と記憶の関係
  • 「冷蔵庫に貼られたマグネット」は、ポジティブな思い出を引き出しやすい

記念品と記憶の関係

お土産用のマグネットは、形も色も特徴的
お土産用のマグネットは、形も色も特徴的 / Credit:Canva

冷蔵庫に目を向けると、どんな磁石が貼られていますか?

事務用品として買ってきたものよりも、お土産などで買ってきた多彩なデザインの磁石を貼っている家庭が多いのではないでしょうか?

特にお土産品などの磁石は、観光地の特徴を表現した楽しいデザインが多く、一目でどこへ出かけたのか分かるため、自分用のお土産に買った磁石を冷蔵庫に貼っているという人は多いかもしれません。

冷蔵庫には、毎日の食事の他にも、家族への伝言や忘れてはいけない事などさまざまなメモを貼っている場合が多く、それら特徴的なマグネットも日常的に目に入ってきます。

旅先の楽しい思い出と結びついたお土産品のマグネットは、日々の暮らしの中で目に入るたびに私たちにどんな効果を生んでいるのでしょうか。

今回の研究者たちは、そんな素朴な疑問に答えるため研究に着手しました。

インタビューに参加した人のマグネット・コレクションの例。
インタビューに参加した人のマグネット・コレクションの例。 / Credit:John Byrom(University of Liverpool)et al., Annals of Tourism Research(2024)

バイロム氏ら研究チームは、人々とお土産用マグネットの関係をより深く理解するために、マグネット好きな人々を対象にインタビューを実施しました。

インタビューを受けたのは、お土産用マグネットを20個以上所有しているイギリス人19人です。

参加者の年齢は25~85歳であり、男性6人、女性13人でした。

このインタビューのほとんどはキッチンで行われ、参加者は、冷蔵庫に貼られたマグネットを見ながら答えることができました。

インタビューの時間は平均1時間であり、その間に参加者には、マグネットのコレクションの概要を説明してもらい、それがどのように記憶と関連しているかも述べてもらいました。

「冷蔵庫に貼られたマグネット」は、ポジティブな思い出を引き出しやすい

インタビューの結果、マグネットには、思い出を守り、ポジティブな感情を引き起こす効果があると分かりました。

バイロム氏は次のように述べています。

「参加者たちは、マグネットが自分にとって何を意味するのか話す時、具体的な出来事や人々についての記憶や感情を、とても簡単に蘇らせることができました。

その中には、亡くなった人や成長して引っ越した子供たちとの旅行の記憶なども含まれます」

マグネットコレクションは、大切な人との休日の思い出を蘇らせる
マグネットコレクションは、大切な人との休日の思い出を蘇らせる / Credit:Canva

参加者たちは、マグネットを見ただけで、大切な人と過ごした大切なひと時をすぐに思い出すことができたのです。

マグネット1つ1つ特徴的ですが、それらの特徴と大切な記憶がしっかりと結びついていることが分かります。

またこうした記念品は「ポジティブな記憶だけを残すのに役立つ」可能性があります。

すべての旅行が楽しく終わるわけではありません。しかし記念品は明確な記録ではなく、曖昧で印象的な記憶と結びついています。そのため「嫌な記憶」が刺激されず、思い出をコントロールできる可能性があるのです。

だからこそ参加者の多くは、冷蔵庫のマグネットを見ながら、「楽しめなかった休日や悪い思い出はありません。そこにあるものすべてがいい思い出です」と幸せに浸っていました。

旅先で購入したマグネットは、ポジティブな思い出を引き出す
旅先で購入したマグネットは、ポジティブな思い出を引き出す / Credit:Canva

また一部の参加者は、「冷蔵庫に貼ったマグネットが、写真よりも思い出を引き出すのに役立つ」と主張しています。

マグネットは写真のように明確な記録ではない分、結びついた思い出を呼び出すのに多少労力がかかります。研究者はそれが記憶の引き出しとして逆に良い方向に働くのだろうと語ります。

実際、ある人は次のように述べています。

「どんな場所に出かけても、1日に50枚から100枚は写真を撮ることができます。

しかし今は、何も写真を撮らないことが多いです。観光の最後に、冷蔵庫に貼るマグネットを買うだけです」

研究チームによると、ほとんどの参加者にとって、冷蔵庫に貼られたマグネットは、何年にもわたる「休日の思い出」のまとめとして機能していました。

「お出かけ」や「旅行」のたびに何十枚もの写真を撮ったとしても、これが大量に積み重なっていけばそのそれぞれを日常で見返す機会はどんどん減っていきます。

冷蔵庫に貼ったマグネットは、何年にもわたる思い出を瞬時に思い出すのに役立つ
冷蔵庫に貼ったマグネットは、何年にもわたる思い出を瞬時に思い出すのに役立つ / Credit:Canva

しかし冷蔵庫のマグネットンは、それらの記憶を集約し、日々の生活の中でふと目にした瞬間、一瞬で一連の出来事を思い出せるアイテムとして機能しているのです。

研究チームは、冷蔵庫のマグネットが、便利なデジタル写真よりも、より頻繁で簡単に、「記憶の検索」を引き起こすと述べています。

ただ研究では、冷蔵庫のマグネットが日常目に入る「装飾品の一部」として当たり前の存在になると、思い出を守る効果が薄くなることも示されました。

そのため研究チームは、「誰かの家に招待された時には、冷蔵庫のマグネットが何を意味するのか尋ねてあげる」よう勧めています。

きっとそれは、友達の楽しい思い出を呼び起こすだけでなく、楽しい会話のきっかけとなるはずです。

冷蔵庫のマグネットコレクションが、人生の満足感を高めてくれるかも
冷蔵庫のマグネットコレクションが、人生の満足感を高めてくれるかも / Credit:Canva

今回の研究は、旅行のお土産という要素に限定して、マグネット収集が好きな人を対象に行われた、かなり小規模な調査です。

そのため、さまざまな思い出の品が持つ、一般的な効果について明らかにできたとはまだ言えません。

しかし、お土産品でなかったとしても、いつ誰からもらったなどの思い出であっても、同様にこうした小さな記念品が、私たちの日常の中で楽しい記憶や、大切な思い出を呼び覚ましポジティブな気分にしてくれる可能性があります。

バイロム氏は、「研究を通して、私自身も冷蔵庫のマグネットから楽しい思い出を振り返る時間が増えた」と話します。

最近は大切な思い出はなんでも写真で残す人が多いかもしれません。しかしそんなはっきりした記録でなくても、なにかじんわりと大切な思い出を呼び出す小さな記念品を、毎日目に付く場所に置いておくだけで、人生の楽しい時間を増やせるかもしれません。

それがただの冷蔵庫の磁石であっても。

全ての画像を見る

参考文献

Fridge magnets can be cool aid to holiday memory recall, study finds
https://www.theguardian.com/science/2024/mar/18/fridge-magnets-can-be-cool-aid-to-holiday-memory-recall-study-finds

Fridge magnets can give you a holiday boost by reminding you of happy times abroad, research finds
https://www.dailymail.co.uk/news/article-13207705/Fridge-magnets-holiday-boost-happy-times-abroad.html

元論文

Post-holiday memory work: Everyday encounters with fridge magnets
https://doi.org/10.1016/j.annals.2024.103724

ライター

大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。

編集者

海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。

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