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最もヤバい生物学ニューストップ7


コロナ渦の記憶が薄れつつある今日この頃。

世界中でストップししていた生物学の研究も再開され、次々に面白い研究成果が発表されはじめました。

そこで今回は2023年に発表された生物学研究の中で特に興味深いものを独断と偏見と反響をもとにランキング形式で紹介したいと思います。

まずは「脳がないのに学習するクラゲ」からです!

目次

  • ヤバすぎる生物学研究トップ7
  • 第1位から3位、どんな雑学王も知らない「最強のトリビア」

ヤバすぎる生物学研究トップ7

第7位:脳がないクラゲでも高度な学習ができると判明!

第7位:脳がないクラゲでも高度な学習ができると判明!
第7位:脳がないクラゲでも高度な学習ができると判明! / Credit:川勝康弘

デンマークのコペンハーゲン大学(KU)で行われた研究によって、脳のあるなしにかかわらず、神経系そのものに学習を行う仕組みが存在している可能性が示されました。

研究者たちは、学習や記憶といった基本的な仕組みの起源が、脳を持つ生物が誕生する以前から存在しており、現代のクラゲにも引き継がれていると述べています。

この結果は非常に重要です。

私たちは脳ができて、その後学習がはじまったと考えていました。

第7位:脳がないクラゲでも高度な学習ができると判明!
第7位:脳がないクラゲでも高度な学習ができると判明! / Credit:川勝康弘
第7位:脳がないクラゲでも高度な学習ができると判明!
第7位:脳がないクラゲでも高度な学習ができると判明! / Credit:川勝康弘
第7位:脳がないクラゲでも高度な学習ができると判明!
第7位:脳がないクラゲでも高度な学習ができると判明! / Credit:川勝康弘
第7位:脳がないクラゲでも高度な学習ができると判明!
第7位:脳がないクラゲでも高度な学習ができると判明! / Credit:川勝康弘

しかし研究結果は、神経系そのものが学習機能を元々有していることを示しています。

またこの発見は、神経の進化と学習の本質について全く新しい洞察を提供します。

脳がなくても高度な学習が成り立つなら、高度な意思や高度な思考も同じようなことが言えるのでしょうか?

脳がないクラゲでも高度な学習ができると判明!

第6位:刺されると「お肉」が食べられなくなるマダニが急増中

第6位:刺されると「お肉」が食べられなくなるマダニが急増中
第6位:刺されると「お肉」が食べられなくなるマダニが急増中 / Credit:川勝康弘

米国のCDC(アメリカ疾病予防管理センター)はマダニに刺されることで牛や豚など哺乳類の肉や乳製品を食べられなくなる「アルファガル症候群」が増加していることを受けて、医師たちの症例にかんする知識を調査しました。

「孤独の星」の名前を持つマダニに刺されると、哺乳類の肉(牛肉、豚肉、鹿肉など)、乳製品、ゼラチン、一部の薬剤に対してアルファガル症候群 (AGS)という危険なアレルギーを引き起こす可能性があります。

「肉の部品(アルファガル)」は単体では無害ですがマダニの唾液と一緒に入り込むことで免疫系が勘違いを起こして敵と認識し、次回以降にアルファガルを含む哺乳類の肉を食べると、免疫反応が体を駆け巡りアレルギーを起こしてしまうのです。

不良(マダニの唾液)と一緒にやってきたことで何の害もない真面目な学生(アルファガル)も不良の一味とし警察(免疫)に認定されてしまうようなものです。

この症例で最も一般的にみられるのが胃腸症状で下痢や嘔吐などが起こります。

また蕁麻疹が出る患者も報告されています。

しかし反応が激しいとアナフィラキシーを発症する患者もおり、呼吸困難など深刻な状態に陥ることもあります。

第6位:刺されると「お肉」が食べられなくなるマダニが急増中
第6位:刺されると「お肉」が食べられなくなるマダニが急増中 / Credit:川勝康弘

ですが最も大きな問題は、現在のところアルファガル症候群の治癒法がないことです。

そのためアルファガル症候群になってしまった患者は哺乳類の肉や乳製品全般の摂取を避ける生活をはじめることになります。

ただアルファガルは哺乳類ではない鶏肉や魚肉には含まれていないため、ある程度の代用は可能です。

(※なお余談ですが人間の肉にもアルファガルは含まれていません)

また幸いなことに、一度噛まれただけならば症状は5~6年かけてゆっくりと収まっていきます。

これはアルファガルを敵と認識する免疫細胞の記憶がその期間しか持続しないことに起因します。

しかし二度目に噛まれるとアルファガルに対する免疫記憶が一生涯続くようになり、多くの人は二度と哺乳類の肉を食べられなくなってしまいます。

牛肉や豚肉やミルクを愛する人々にとっては残酷な結末と言えるでしょう。

刺されると「お肉」が食べられなくなるマダニが急増中

第5位:がん細胞を「普通の細胞」に転職させる新たな方法を開発!

第5位:がん細胞を「普通の細胞」に転職させる新たな方法を開発!
第5位:がん細胞を「普通の細胞」に転職させる新たな方法を開発! / がん細胞を「普通の細胞」に転職させる新たな方法を開発! / Credit:Martyna W. Sroka . Myo-differentiation reporter screen reveals NF-Y as an activator of PAX3–FOXO1 in rhabdomyosarcoma . PNAS (2023) . SQUARE ENIX

「殺せないなら、仲間に加えればいい」

米国のコールド・スプリング・ハーバー研究所(CSHL)で行われた研究により、増殖力が高い危険な肉腫細胞を、普通の筋肉細胞に変化させる技術が開発されました。

これまでがん治療は、腫瘍を手術で取り除いたり抗がん剤などでがん細胞を殺すことで「体からの排除」が行われていました。

ところが新たな方法ではがん細胞に「がん」という属性を捨ててもらい、普通の細胞として生きていく共存共栄が目指されています。

人間社会で例えるならば、社会(体)に巣くうマフィア(がん細胞)たちに健全な職場を斡旋し、普通の社会人(普通の細胞)になってもらう方法と言えるでしょう。

マフィア構成員もがん細胞も同じく「しぶとい」性質があり、無理矢理排除しようとしても上手くいきません。

しかし普通の細胞に戻るという選択肢は、がん細胞も生存を約束され、体も健康を取り戻すことができるため、WIN‐WINの関係を築くことが可能になります。

コールド・スプリング・ハーバー研究所(CSHL)では、がん細胞を「転職」させて普通の細胞に戻す技術について6年間にわたり研究を続けており今回、肉腫細胞を筋肉細胞に変化させることに成功しました。

がん細胞を「普通の細胞」に転職させる新たな方法を開発!

第4位:オスの性欲を支配する脳回路を発見!強制活性化で無生物にも欲情

第4位:オスの性欲を支配する脳回路を発見!強制活性化で無生物にも欲情
第4位:オスの性欲を支配する脳回路を発見!強制活性化で無生物にも欲情 / Credit:川勝康弘

思春期の男子の多くはある日を境に、自分が自然と女子を目で追っていることに気が付きます。

そして遅かれ早かれ、女性をみることが性欲を搔き立てることを自覚します。

同様の現象はマウスなど人間以外の哺乳類でも観察されており、オスマウスもメスマウスを認識することで、交尾したいという欲求にスイッチが入ります。

今回、スタンフォード大学の研究者たちは、オスマウスがメスを認識した時の脳内の様子を調査し、認識を性欲に変換する脳回路を発見します。

脳回路を強制的に活性化すると、オスマウスは相手がオスでも無生物でも、ありとあらゆるものと見境なく交尾行するようになりました。

(※ビーカーやチューブが相手でも交尾を試みようとしました)

この結果はサブスタンスPの直接注入で発生する性欲は極めて純粋な存在であり、相手を選ばないものであることを示します。

さらに脳回路の強制起動によって不応期(賢者タイム)を40万分の1以下に短縮することに成功しました。

オスの性欲を支配する脳回路を発見!強制活性化で無生物にも欲情

第1位から3位、どんな雑学王も知らない「最強のトリビア」

第3位:大酒飲みサルの脳遺伝子改造で「断酒」させることに成功!

第3位:大酒飲みサルの脳遺伝子改造で「断酒」させることに成功!
第3位:大酒飲みサルの脳遺伝子改造で「断酒」させることに成功! / Credit:川勝康弘

お酒がやめられないなら、脳を改造すればいいようです。

米国のオレゴン健康科学大学(OHSU)で行われた研究によって、お酒を大量に飲む習慣を持ったサルの脳細胞の遺伝子を改変したところ、好きだったお酒をほとんど飲まなくなることが示されました。

アルコール依存症のサルたちは脳内の快楽物質「ドーパミン」が少なくなっており、新たにドーパミンを得るために、常にお酒を必要とする中毒になっています。

しかし脳細胞の遺伝子改変によって脳内でドーパミンが過剰生産されるようにしたところ、サルたちはお酒に対する興味を失い、水のほうを好んで飲むようになりました。

研究者たちは命にかかわる重篤なアルコール患者に対して、脳の遺伝子改変は有力な治療法になると述べています。

しかし同時に「この方法は最後の手段であるべきだ」とも述べています。

というのも脳細胞に対する遺伝子改変効果は永続するため、元に戻すことができないからです。

ただ命にかかわるほど重度のアルコール依存症である場合、脳の遺伝子改変は1つの選択肢になるでしょう。

また脳の遺伝子改変によるドーパミン不足解消は、お酒だけでなく他の薬物依存に対して有効な手段になるでしょう。

大酒飲みサルの脳遺伝子改造で「断酒」させることに成功!

第2位:「目と脳を生やした生殖器官」が身体からちぎれて交尾相手を探しに行く驚きの生物

東京大学で行われた研究によって、尻尾部分が交尾のためにちぎれて泳ぎ去る奇妙な生物「ミドリシリス」の秘密が明らかになりました。

尻尾部分は体内に精子や卵子を満載しているだけでなく、分離にあたっては本体とは別の、独自の「目」と「脳」を芽生えさせた「1個体」として泳ぎ始めます。

人間で例えるならば、下半身に新たな目と脳が形成されて分離し「交尾相手を探しに旅に出る状態」と言えるでしょう。

第2位:「目と脳を生やした生殖器官」が身体からちぎれて交尾相手を探しに行く驚きの生物
第2位:「目と脳を生やした生殖器官」が身体からちぎれて交尾相手を探しに行く驚きの生物 / Credit:川勝康弘
第2位:「目と脳を生やした生殖器官」が身体からちぎれて交尾相手を探しに行く驚きの生物
第2位:「目と脳を生やした生殖器官」が身体からちぎれて交尾相手を探しに行く驚きの生物 / Credit:川勝康弘
第2位:「目と脳を生やした生殖器官」が身体からちぎれて交尾相手を探しに行く驚きの生物
第2位:「目と脳を生やした生殖器官」が身体からちぎれて交尾相手を探しに行く驚きの生物 / Credit:川勝康弘
第2位:「目と脳を生やした生殖器官」が身体からちぎれて交尾相手を探しに行く驚きの生物
第2位:「目と脳を生やした生殖器官」が身体からちぎれて交尾相手を探しに行く驚きの生物 / Credit:川勝康弘

この不思議なミドリシリスの性質について「交尾専門の新たな脳をもった個体を作るより、自分で交尾しに行けばいいだろう」と思う人もいるでしょう。

確かに、地球上に存在するほとんどの動物は本体が交尾を行っています。

しかし、交尾のために危険な外界を移動することは自身の生存においてリスクにも繋がります。

ミドリシリスは交尾を専門の個体を生み出し、それに繁殖活動を任せることで、本体自身は安全な場所に隠れたまま生活を続けることが可能になるのです。

しかもその交尾用の尾部は何度でも再生可能と言うメリットもあります。

そう考えると、ミドリシリスの戦略もなかなかに優れていると言えるでしょう。

研究者たちは、ミドリシリス先祖はかつて生殖時期になると全体が遊泳形態に変化していたものの、高い再生能力を生かして、やがて本体は安全なまま尾部だけを遊泳させる形態に進化した可能性があると述べています。

「目と脳を生やした生殖器官」が身体からちぎれて交尾相手を探しに行く驚きの生物

第1位:実は未解明問題「虫が光に引き寄せられる理由」がついに判明!

第1位:実は未解明問題「虫が光に引き寄せられる理由」がついに判明!
第1位:実は未解明問題「虫が光に引き寄せられる理由」がついに判明! / Credit:川勝康弘

「飛んで火に入る夏の虫」のことわざにみられるように、私たち人類は太古の時代から虫が光の周りに集まっていることを知っていました。

文献上の最古の記述は紀元1世紀のローマ帝国時代のものとなっていますが、おそらく現象自体はもっと古くから、それこそ人類が火を使うようになった頃から知られていたことでしょう。

ですが意外にもその「理由」は未解決のままでした。

そこで研究者たちは、素早い虫の動きに追随するためのハイスピードカメラとトラッキングソフトウェアを用意し、人工光源に接近した虫たちに何が起こるかを調べてみました。

すると虫たちは単に光に向かって「突撃」しているのではなく、下の図のように、光によって「上下感覚」が失われ、背中を光に向け続ける飛行に変化していたことが判明します。

第1位:実は未解明問題「虫が光に引き寄せられる理由」がついに判明!
第1位:実は未解明問題「虫が光に引き寄せられる理由」がついに判明! / Credit:川勝康弘
第1位:実は未解明問題「虫が光に引き寄せられる理由」がついに判明!
第1位:実は未解明問題「虫が光に引き寄せられる理由」がついに判明! / Credit:川勝康弘
第1位:実は未解明問題「虫が光に引き寄せられる理由」がついに判明!
第1位:実は未解明問題「虫が光に引き寄せられる理由」がついに判明! / Credit:川勝康弘

3つの結果はどれも虫たちが光源に対して背中を向けようとする過程で引き起こされ、結果的に光源への引き付けにつながっていました。

ここで研究者たちが注目したのが「背光反射」と呼ばれる虫たちの性質でした。

背光反射は虫や魚によくみられる姿勢制御機能であり、明るい方向に背中側を向けようとする反射的な行動になります。

比較的大きな動物にとって上下感覚は重力を感知することで認識されます。

しかし小さな虫や魚にとっては空気や水の粘度が無視できない問題であり、適切な重力を感知することを阻む要因になりがちです。

そのため小さな虫や魚には重力と反対の方向(上)を光の明るさによって感知し、明るい方向に自動的に背中を向ける姿勢制御システムが存在します。

研究者たちは光源への接近が虫たちの背光反射を引き起こして光源への急上昇や墜落を引き起こしている様子が人間にとって「見かけ上」光源に突撃しているように見えている可能性があると結論しました。

どうやら照明は遠くにいる「虫を惹き付けている」のではなく、たまたま近くを通過した昆虫を「明るい範囲に閉じ込めている」だけだったようです。

実は未解明問題「虫が光に引き寄せられる理由」がついに判明!

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ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

ナゾロジー 編集部

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