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アイヌ民族の神聖な儀式!イオマンテとは何なのか?


漫画「ゴールデンカムイ」などで取り上げられていることもあり、近年注目を集めているアイヌ民族ですが、独自の風習が多くありました。

その中でも有名なのが「イオマンテ」であり、先述した「ゴールデンカムイ」の作中にも登場していましたが、果たしてイオマンテとはどのような風習なのでしょうか?

本記事ではイオマンテについて紹介しつつ、それが行われていた理由について取り上げていきます。

なおこの研究は『昭和女子大学大学院生活機構研究科紀要 』に詳細が書かれています。

目次

  • ヒグマは神の化身、狩猟で捕獲したら神に感謝する
  • 一定期間愛情をこめて育てたヒグマを盛大に見送るイオマンテ
  • クマだけでなく、フクロウやシャチでも行われたイオマンテ

ヒグマは神の化身、狩猟で捕獲したら神に感謝する

エゾヒグマ、現在こそ人間を襲う害獣として認識されているが、アイヌ民族は山の神として神聖視していた
エゾヒグマ、現在こそ人間を襲う害獣として認識されているが、アイヌ民族は山の神として神聖視していた / credit:wikipedia

アイヌ民族は主にアニミズムを信仰しており、とりわけ彼らが狩猟の対象としている動物を神聖視していました。

特にヒグマは「山の神」であるキムンカムイとして崇められており、「神が肉と毛皮を携えて人間界に現れた姿」として捉えていたのです。

そのため普段の狩猟でヒグマを手に入れた際は、「自分を選んで現世にやってきたこと」に感謝の祈りを捧げ、頭骨に飾りをつけて祀っていたのです。

一方で、ヒグマだったら無条件で祀っていたわけではなく、例えば人間を傷つけたヒグマは悪い神と見なされました。

そのため狩猟の際にヒグマによって仲間が重傷を負った場合は頭骨を祀らず、逆に人間を殺したヒグマを捕まえた際は切り刻んでそのまま放置し、肉や毛皮を利用することはありませんでした。

一定期間愛情をこめて育てたヒグマを盛大に見送るイオマンテ

日本画家・村瀬義徳による「アイヌ熊祭屏風」、イオマンテでヒグマに矢を射ている場面である
日本画家・村瀬義徳による「アイヌ熊祭屏風」、イオマンテでヒグマに矢を射ている場面である / credit:wikipedia

またアイヌ民族は狩猟で捕まえたヒグマを感謝してすぐ使うだけでなく、「イオマンテ」という儀式に使うこともありました。

イオマンテはヒグマの子どもを一定期間育てた後に食べる儀式であり、アイヌ民族では重要視されていました。

それではイオマンテはどのような流れで行われたのでしょうか?

イオマンテの始まりは冬の終わりに冬眠中のヒグマを狩るところから始まります。

冬眠中のヒグマを狩った際、穴の中に小熊がいた場合、その子熊は殺さずに集落に連れて帰って育てます

なお母熊は通常の狩猟と同じように殺し、その後感謝の祈りを捧げます。

小熊ははじめ家の中で育て、大きくなると屋外の檻に移し、贅沢な食事を与えます。

また小熊がかなり小さい場合は、人間の赤ん坊と同じように母乳を与えることさえありました

一定期間の育成後、集落で盛大な送り儀式が行われ、そこでヒグマは殺されることになります。

儀式が行われる祭壇には宝刀や弓矢などが飾られ、ヒグマに酒が供えられます。

そこでヒグマに矢を射って、最終的には丸太で首を挟んだのです

なおヒグマの命を最終的に奪うのが「弓矢で射抜く」「棒で首を挟む」のどちらの方法になるかはアイヌ民族内でも地域によって分かれています。

しかし弓矢で射抜いて殺す地域でも棒で首を挟む儀式は行われており、逆に棒で首を挟んで殺す地域でも弓矢を射抜く儀式が行われていることから、双方ともにイオマンテでは不可欠な儀式であることが窺えます。

そして殺したヒグマは解体し、集落の仲間全員に肉を分け与えました。

このような儀式を行っていた理由としては、ヒグマを神聖視していたことがあります。

先述したようにアイヌ民族はヒグマを「神が肉と毛皮を携えて人間界に現れた姿」として捉えており、ヒグマを育てることはまさに神に対するおもてなしと考えていました。

一定期間もてなしをした後盛大な「見送り」を行ってカムイを神々の世界に帰すことで、地上のすばらしさを知った神々が人間界に多く訪れてくれると考えられたのです。

クマだけでなく、フクロウやシャチでも行われたイオマンテ

シマフクロウ、アイヌ民族の間では集落を守る神として捉えられていた
シマフクロウ、アイヌ民族の間では集落を守る神として捉えられていた / credit:wikipedia

イオマンテが行われたのは何もヒグマだけではなく、クマ以外の動物にも行われていました。

例えば、白い犬を狼神の子孫とみなして送る地域や、フクロウを送る風習がある地域が報告されています。

これらの儀式においても、「送る」という行為には動物によって差があり、それはアイヌの信じる神との関係に影響されています。

特にフクロウは集落の守り神として捉えられていたこともあり、ヒグマのイオマンテと同等に重要視されている地域もありました。

またイオマンテが行われていたのは陸上の動物だけではなく、ウミガメやシャチに対して行っていた地域もありました。

特にシャチは、襲ったクジラが海岸に打ち付けられることから、アイヌ民族はシャチを「巨大な肉の塊を人間にプレゼントしてくれる偉い神」であると認識していたのです。

それ故沖の神(レプンカムイ)としてヒグマと同じくらい神聖視しており、ヒグマと時のように盛大に見送りの儀式は行わなかったものの、イオマンテが行われていました。

アイヌの文化において、自然との調和や感謝の念が儀式を通じて表現され、その儀礼がコミュニティ全体で共有されていたことが窺えます。

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参考文献

イオマンテの特徴に関する研究―その地域的比較- | CiNii Research
https://cir.nii.ac.jp/crid/1050001202934550272

ライター

華盛頓: 華盛頓(はなもりとみ)です。大学では経済史や経済地理学、政治経済学などについて学んできました。本サイトでは歴史系を中心に執筆していきます。趣味は旅行全般で、神社仏閣から景勝地、博物館などを中心に観光するのが好きです。

編集者

海沼 賢: 以前はKAIN名義で記事投稿をしていましたが、現在はナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。

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