映画『ジュラシック・パーク』では、恐竜の赤ちゃんが硬い卵からパリパリッと生まれてくる愛らしいシーンがありました。
しかし、最初期の恐竜の卵はもっとグニグニした弾力があったのかもしれません。
中国科学アカデミー(CAS)の古脊椎動物古人類学研究所(IVPP)は、約1億9000万年前のジュラ紀地層から新種の恐竜とその卵を新たに発見。
さらにその卵は鳥やワニのような硬い殻ではなく、革のような質感をしていたことが判明しました。
恐竜の卵は柔らかタイプから始まって、徐々に硬くなっていったのかもしれません。
研究の詳細は、2023年10月9日付で科学雑誌『National Science Review』に掲載されています。
目次
- 中国で新種の恐竜と卵を発見
- 初期の恐竜卵は柔らかすぎず、硬すぎない?
中国で新種の恐竜と卵を発見
研究チームは今回、中国南部・貴州省にある約1億9000万年前のジュラ紀前期の地層から、新種の恐竜とその卵を発見しました。
回収された化石には、成体の骨格が3点と胚を収めた卵の巣の化石が含まれています。
骨格を調べたところ、この恐竜は初期の竜脚類のグループに属する種であることが特定されました。
竜脚類といえば、ブラキオサウルスやディプロドクスに代表されるような長い首と巨大な胴体が特徴的な恐竜グループです。
ただ本種は体長約6メートル、体重1トンとそこまで大きくはない中型の竜脚類と推定されています。
学名は新たに「守護黔竜(しゅごけんりゅう、Qianlong shouhu)」と命名されました。
属名のQianlongは「貴州の竜(Guizhou dragon)」を、種小名のshouhuは「守護(guarding)」を意味しています。
また成体および卵胚の分析から、本種は幼い時期は四足歩行でしたが、大人になるにつれて二足で歩けるようになったことが示されました。
人間と一緒ですね。
一方で、彼らの卵には今までの恐竜にはない面白い特徴が見つかっています。
初期の恐竜卵は柔らかすぎず、硬すぎない?
今回の化石に関する最も重大な発見は、小さな卵の方にありました。
チームが卵の化石を薄く切り取って電子顕微鏡で調べたところ、卵の石灰質層は軟殻卵よりもはるかに厚いが、硬殻卵よりは薄いことが明らかになっています。
つまり、守護黔竜の卵は、現代のヘビやトカゲが産むようなソフトシェルの卵よりは硬いが、鳥やワニが産むようなハードシェルの卵よりは柔らかかったのです。
研究者らはこの中間的な卵の在り方について「革のような質感に近いものだった」と表現しています。
恐竜の卵はどのように変化した?
さらにチームは、約2億3000万年前の三畳紀に誕生した恐竜の卵が、種や時代ごとにどう変化したかを調べました。
ここでは恐竜の祖先となる爬虫類から派生した210種の絶滅種および現生種の卵データ(恐竜や鳥類を含む)を集めて、総合的に分析し、これを元に卵の変遷を再構築。
その結果、卵の殻は最初期の恐竜において厚みが減少しており、その後、獣脚類(※)の誕生から有意に増加に転じていることが特定されました。
(※ 獣脚類は、ヴェロキラプトルやティラノサウルスを代表とする肉食恐竜の一群)
このことから、最初期の恐竜の卵はやはり革のような弾力のある質感からスタートし、徐々にハードタイプへと進化させていったことが予想されました。
またその中で、ヘビやトカゲなどの一部の爬虫類に見られるソフトタイプの卵も現れたようです。
一方で、卵の形については進化のタイムラインを通し、一貫して「楕円形」が共通していました。
ただ獣脚類において、卵が縦に伸びた細長い楕円形に進化することはあったようです。
研究チームはこの分析結果を要約して、「最初期の恐竜の卵はおそらく革のような質感で、比較的小さく、楕円形である点で共通していた可能性が高い」と結論しました。
となると当初の恐竜たちは、卵からパリパリッとではなく、グニグニッと革を破るように生まれていたのかもしれません。
参考文献
The first dinosaur egg was leathery
https://www.eurekalert.org/news-releases/1007764
The first dinosaur eggs were probably leathery
https://www.zmescience.com/science/news-science/the-first-dinosaur-eggs-were-probably-leathery/
元論文
Exceptional Early Jurassic fossils with leathery eggs shed light on dinosaur reproductive biology
https://academic.oup.com/nsr/advance-article/doi/10.1093/nsr/nwad258/7303309#425075736