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アルツハイマー病の症状が腸内細菌を介して「うつる」ことが判明!


うつるんです。

アイルランドのユニバーシティー・カレッジ・コーク(UCC)で行われた研究によって、健康なマウスにアルツハイマー病のマウスの腸内細菌を移植すると、アルツハイマー病にみられる記憶障害が発生したことが示されました。

またアツルハイマー病が深刻なマウスの腸内細菌ほど、移植によって、より重度の記憶障害を発生させることが判明。

研究者たちは「アツルハイマー病の症状が腸内細菌を介して若く健康な生物に伝達される可能性があることが、世界ではじめて確認された」と述べています。

汚染された腸内細菌叢はいかにして、健康なマウスに悪影響を及ぼしたのでしょうか?

アルツハイマー病と腸内細菌の関係を発見した研究は2023年10月18日に『Brain』に、にて公開されました。

目次

  • アルツハイマー病の症状が「うつる」仕組み
  • 腸内細菌の出す毒素が脳にダメージを与えていた

アルツハイマー病の症状が「うつる」仕組み

アルツハイマー病の症状が「うつる」仕組み
Credit:Canva . 川勝康弘

アルツハイマー病は脳以外の場所からもやってくる

認知症においてアルツハイマー病の占める割合は70%と極めて高くなっています。

また人口の高齢化によってアルツハイマー病に罹患する人々が急速に増えており、将来的に高齢者の3人に1人がアルツハイマー病になるとする研究結果も発表されています。

そのため近年になり、アルツハイマー病の原因について脳以外がかかわっている可能性について調べられるようになってきました。

がんをはじめ極めて多数の患者がいる病気では、細菌やウイルスの感染や有毒な化学物質、生活習慣、遺伝子など多様な要因が入口となって機能しているからです。

そこで今回、ユニバーシティー・カレッジ・コークの研究者たちは、アルツハイマー病が腸内細菌を介して「うつる」可能性について調べることにしました。

重症のマウスの腸内細菌ほど酷い症状を引き起こす

重症のマウスの腸内細菌ほど酷い症状を引き起こす
Credit:Canva . 川勝康弘

これまでの研究でも、アルツハイマー病の患者は健康な患者に比べて、有害な腸内細菌を多く持つことは知られていましたが、腸内細菌を介した伝達が起こり得るかは不明でした。

調査にあたっては16匹のアルツハイマー病のマウスと16匹の健康な若いマウスが用意され、糞便移植によって腸内細菌の移植が行われました。

すると移植を受けた健康なマウスたちに記憶障害が発生し、新しいことを覚えられなくなっていることが判明します。

また記憶障害のレベルを調べたところ、アルツハイマー病がより重症だったマウスの腸内細菌ほど、移植されたマウスに、より深刻な症状を起こしていることが示されました。

この結果は、アルツハイマー病の重症度と腸内細菌が関連しているだけでなく、移植によって健康なマウスに症状が「うつる」ことを示しています。

研究者たちも実験結果を受けて「アツルハイマー病の症状が腸内細菌を介して若く健康な生物に伝達される可能性があることが、世界ではじめて確認された」と結論しています。

次に研究者たちは、どの腸内細菌が脳に対してどんな影響を与えるかを調べることにしました。

腸内細菌の出す毒素が脳にダメージを与えていた

腸内細菌の出す毒素が脳にダメージを与えていた
Credit:Canva . 川勝康弘

アルツハイマー病マウスの腸内細菌は、なぜ健康なマウスに症状をうつすのか?

謎を解明すべく研究者たちはアルツハイマー病のマウスの腸内細菌の種類を調べていました。

人間やマウスの腸には、主に食物繊維を栄養源として酪酸を生成してくれるクロストリジウム族やコプロコッカス属などの善玉菌が存在しています。

酪酸には腸内壁の清掃や治癒を促す作用があります。

しかし研究者たちがアルツハイマー病のマウスの腸を調べると、酪酸を作ってくれる善玉菌の数が減少していることが判明。

(※他にもタウリンも減少していることが判明します。酪酸やタウリンは血液脳関門を通過することができ、脳の神経細胞新生を促すことが知られています)

一方、認知症患者の腸内に多く存在するデスルフォビブリオなどの悪玉菌の濃度が高くなっていました。

これまでの研究により、酪酸のレベルが低いと腸壁が損傷し、悪玉菌の生成する毒素が血管に侵入することが知られています。

そこで研究者たちは、アルツハイマー病のマウスの腸内細菌から分泌される毒素が血管に入り込み、脳に悪影響を及ぼしている可能性について検証することにしました。

調査ではアルツハイマー病のマウスと健康なマウスの血清を採取し、マウスの脳で記憶を司る海馬を取り出して注いでみました。

すると驚いたことに、アルツハイマー病のマウスの血清に浸されると、健康なマウス由来の海馬でも神経細胞の新生が大きく減少することが示されました。

海馬での神経細胞の生産は記憶にとって重要な役割を果たしており、少なくなってしまうと記憶障害を起こしてしまします。

治療法には健康なマウスの糞便を移植しなおすという手もあるでしょう
Credit:Canva . 川勝康弘

この結果から研究者たちは、アルツハイマー病のマウスの腸内細菌から分泌された毒素が血液に乗って、記憶を司る海馬に異常を起こしていると結論しました。

現在、アルツハイマー病と診断された場合には既に症状が進行してしまっており、改善することは非常に困難となっています。

しかし症状が発症する前に、腸内細菌を診断し理想的な状態に変更させることができれば、アルツハイマー病の予防法となるでしょう。

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参考文献

Scientists discover links between Alzheimer’s disease and gut microbiota https://www.kcl.ac.uk/news/links-between-alzheimers-and-gut-microbiota

元論文

Microbiota from Alzheimer’s patients induce deficits in cognition and hippocampal neurogenesis https://academic.oup.com/brain/advance-article/doi/10.1093/brain/awad303/7308687?searchresult=1
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