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「いただきます」はご飯を美味しく感じさせる


食べる前に義式的な行動を取ることでより美味しく感じ、食事を楽しむことができるかもしれません。

ミネソタ大学のキャスリーン・ボフス氏(Kathleen Vohs)らの研究によると、食事前の儀式的な行動と食体験の満足度との関係性を検討しました。

実験では、参加者にチョコレートを半分に割ってから食べるなど決まった手順を踏んでから食事をし、味や風味の評価をしてもらっています。

結果、決められた手順を経て食事を行う人は、より時間をかけて味わい、風味が良いと評価する傾向が確認されました。

普段、理由や意味を考えることなく、習慣になっている「いただきます」は食事の満足度を高め、食事をより美味しく感じさせているかもしれません。

研究の詳細は、学術誌「Psychological Science」にて2013年7月17日に掲載されました。

目次

  • 「いただきます」が食事にもたらす効果とは?
  • ランダムな手の動きを食べる前にしても効果がない

「いただきます」が食事にもたらす効果とは?

「いただきます」が食事にもたらす効果とは?
Credit: Unsplash

読者の皆さんは食事をする前に「いただきます」を言いますか。

「いただきます(頂きます、戴きます)」は食事の提供者や農業・労働・調理に関わった人への感謝を込める、食事を始める前の挨拶です。

特に理由や意味を考えることなく、習慣になっている方もいるでしょう。

ミネソタ大学のキャスリーン・ボフス氏(Kathleen Vohs)らの研究は、「いただきます」のような食事前の義式的行動は感じる味や風味などの食事体験を変化させることを報告しています。

実験では、大学生52名を①チョコレートバーを包装で包まれた状態で半分に割り、半分ずつ食べる人と、②何も指示されず食べる人の2つのグループに分類。

食べ終わった後に、食事全体の評価とチョコレートの風味を評価してもらっています。

実験の結果、何も指示を受けなかった人と比較して、決まった手順でチョコレートバーを食べた人は、食事全体により高い満足を感じていました。

また儀式的行動を経て食べた人は、チョコレートバーの風味が良いと評価し、より多くのお金を出してチョコレートバーを購入したいと考えていたことも分かりました。

ここでいう儀式的行動とは、実験がチョコを包装ごと半分に割るという行動で比較している点からもわかるように、「いただきます」のような挨拶に限らず、なにか食事の際に決まった手順やルールを設けることを指しています。

しかしこれは特に決まった手順である必要はない可能性があります。

儀式的な行動を行う場合には、何もしない場合と比較して、食べ終わるまでに時間がかかっていることから、食事に時間をかけることによって生じた結果かもしれないのです。

そうなると、食事の前に食べる以外の余計な動作を行うだけで食事体験の満足度や風味の評価、購買意欲などが向上する可能性も考えられます。

そこで研究チームは上記の点を考慮して検討することにしました。

ランダムな手の動きを食べる前にしても効果がない

研究チームは、食事前の動作と食事にかける時間の要因を加味して、儀式的行動が食体験の満足度を高めるかを検討しています。

実験では、大学生105名を食事をするタイミング(早い vs 遅い)と食事前の行動(儀式的行動 vs ランダムな動き)の組み合わせによる4つのグループに分け、3つの人参を食べてもらいました。

実験の結果、食べる前に時間を置いた、また置かなかった場合にも、決まった手順でジェスチャーを行ってからニンジンを食べた人は、そうしなかった人と比較して、食事に高い満足を感じていたことがわかっています。

儀式的行動を行った後の食事には高い満足感を得ることができる
Credit: Vohs et al. (2013).

この結果は、食事前の動作はランダムな動きでは意味がなく、毎回決まった手順によって行わなければならないことを意味しています。

ではなぜ食事前の儀式的行動を取ることで食事の満足度や味の評価は高くなるのでしょうか。

研究チームは「食事に対する個人的な関わり」ではないかと考えています。

現象が生じる要因を探ったさらなる実験では、大学生40名を①レモネードをコップに半分だけ注ぎ混ぜ、30秒間待ってから飲む人と、②実験者が前述した手順でレモネードを飲むのを見て、真似る人の2つのグループに分け、レモネードの風味についての評価を行ってもらいました。

食事に対する関与度の高低を、儀式的行動を自分自らが行うパターンと他人の真似をするパターンを設けることで実験的に操作したのです。

実験の結果、他者の動きを真似した人と比較して、真似せずに自ら義式的な行動を行った人の方が、よりレモネードの風味が良いと評価したのです。

このことから、食べる前の儀式的行動は、食べる体験により多くの時間を割くことで、食べるものに対する「個人的な関わり」を増し、食事全体、味の評価を高めるのだと考えられます。

この結果を考慮すると、前述した「いただきます」以外に次のような場面での応用が考えられるでしょう。

オレオビスケットを食べるときに、ビスケットを2つに分け、牛乳に浸してから食べる、他にもおかきを袋に入れた状態で小さく小分けに割ってから食べるなど。

このように食事前の決まった手順を踏むことで、ただ食べるよりもより美味しく感じることができるかもしれません。

そう考えると、オレオのように決まった手順の食べ方をメーカーが提供してみせるのは、商品の評価を上げるために有効な手段なのかもしれません。

これは個包装のお菓子についても、同様の効果を持っている可能性があります。

剥き出しで積まれているお菓子を、ひとつをつまみ上げて食べるよりも、袋から個包装されたお菓子を取り、包み紙を破るまでの一連の決まった行動がお菓子の美味しさを高める可能性があるのです。

食事には面倒なマナーが伴う場合もありますが、そんな手順が広く共有されるようになった裏には、もしかしたら、その方が美味しく感じるという思いが共有されたからなのかもしれません。

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参考文献

The Power Of Rituals In Eating, Grieving And Business https://www.forbes.com/sites/hbsworkingknowledge/2013/06/03/the-power-of-rituals-in-eating-grieving-and-business/?sh=2180fe8f6e56

元論文

Rituals Enhance Consumption https://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/0956797613478949
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