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スヌーズで起床すると「早朝の認知機能」が高まる可能性がある


スヌーズ(Snooze)は、目覚ましのアラームを止めた後も一定時間ごとにアラームを繰り返してくれる機能です。

朝が弱い方、どうしても二度寝をしてしまう方はスヌーズ機能をよく使っているのではないでしょうか。

そんな方々に朗報です。

スウェーデン・ストックホルム大学(Stockholm University)の最新研究で、スヌーズを使う習慣のある人は、使わない場合に比べて、起床後の認知能力が高くなっている可能性があると報告されました。

スヌーズはしばしば「目覚めに悪影響を与える」と言われますが、実はプラスの効果があるかもしれません。

研究の詳細は、2023年10月18日付で科学雑誌『Journal of Sleep Research』に掲載されています。

目次

  • 「スヌーズが健康に悪い」という科学的証拠はない
  • スヌーズで早朝の認知機能が高まる?

「スヌーズが健康に悪い」という科学的証拠はない

十分な睡眠をとることは健康とって重要ですが、残念ながら、多くの現代人は睡眠不足に悩まされています。

特に日本は世界でも有数の「寝不足大国」であり、世界50カ国以上の平均睡眠時間を調べた研究によると、日本人は最下位の6時間18分であるという結果が出ています。

寝不足で朝起きるのがつらいので、スヌーズを使っているという人も多いはずです。

一方で、世間ではよく「スヌーズは健康に悪い」という噂がまことしやかに囁かれています。

例えば、イギリスの神経科学者であるマット・ジェインズ(Matt Janes)氏は次のように説明しています。

朝のアラームが鳴ると安眠が破られ、そのショックが自律神経系の「闘争・逃走反応」を司る交感神経系を刺激します。

このシステムは一定期間しか働かないようになっていますが、スヌーズを使うと数分ごとにアラームが鳴り、そのたびに闘争・逃走反応が働きます。

ジェインズ氏いわく「これは脳や体への攻撃を増やすこと」であり、それに伴うストレスホルモンの増加が長期にわたって続くと「うつ病や不安症などの精神疾患に繋がりかねない」というのです。

スヌーズは本当に健康に悪いのか?
Credit: canva

同じようにスヌーズのマイナス面を指摘する声は多くありますが、一方でストックホルム大学の心理学者で研究主任のティナ・スンデリン(Tina Sundelin)氏は「スヌーズが健康の害悪となることを裏付ける科学的証拠は存在しない」と話します。

とはいえ、スヌーズにプラスの健康効果があるという証拠もありません。

そこでスンデリン氏ら研究チームは、人々がスヌーズをどれほど使用しているのかスヌーズが睡眠や眠気、認知機能にどんな影響を与えているのかを調査しました。

スヌーズで早朝の認知機能が高まる?

最初の調査では、1732人の成人を集めてオンラインでのアンケート質問を行いました。

対象者はスウェーデン人(80%)、アメリカ人(8%)、フィンランド・イギリス・オーストラリア人(各3%)であり、女性66%・男性33%で平均年齢は34歳となっています。

調査の結果、日常的にスヌーズ機能を使っている人は全体の69%(1195人)に達し、スヌーズの設定時間は平均して約22分間でした。

スヌーズの使用者は、スヌーズをまったく使わない人々に比べて、約6歳若く、夜型である可能性が4倍高くなっていました。

また一晩の平均睡眠時間が短くなる傾向も見られています。

スヌーズの使う人は夜型で睡眠時間が短い傾向
Credit: canva

次にチームは、スヌーズを使う習慣のある31人の被験者(女性18人・男性13人・平均年齢27歳)を集め、スヌーズを使った起床と使わなかった起床で認知機能に違いが出るかを実験しました。

スヌーズを使う日は30分間のスヌーズ設定で徐々に起床し、スヌーズを使わない日は一度のアラームで目覚めなければなりません。

その後、被験者には基礎的な算数の問題と、単語のリストを記憶して、後で提示される新しい単語リストの中から記憶したワードを認識して選び出すテストを受けてもらいました。

その結果、被験者の多くは一度のアラームで起床した条件に比べて、スヌーズを使って起床した条件においてテストのスコアが高くなっていることが分かったのです。

これはスヌーズによる目覚めが起床後の認知機能を高めている、あるいは低下するのを防いでいることを示しています。

スヌーズにより目覚めが「なだらか」になる

調査の結果、その理由は睡眠〜覚醒への移行がなだらかになることにありました。

チームが被験者の脳波を調べてみると、一度のアラームで起きなければならない場合、睡眠の最も深いステージである「徐波睡眠」から目を覚ます確率が高くなっていたのです。

徐波睡眠では脳の大部分が休止状態にあり、体温・呼吸・心拍などを調節する自律神経系の活動や筋活動が低下しています。

この状態で無理に目を覚ますと、「睡眠惰性」という起床後のグロッキー状態に陥る可能性が高まるのです。

ところがスヌーズを使った場合、被験者は複数回のアラームで徐々に覚醒ステージへと移行するため、徐波睡眠から目覚める確率が低くなっていました。

そのおかげで、起床後の認知機能も高まっていたと見られます。

睡眠のリズムを示すグラフ。眠りの浅いレム睡眠のタイミングだと脳が非常にスッキリとした状態で目覚めることができる
Credit:Jessica D Payne,Sleep Medicine Clinics(2011)

またこれと別に、スヌーズが起床後の眠気や気分、ストレスホルモン値などに悪影響を及ぼすという証拠は認められませんでした。

つまり、スヌーズを使っても朝の眠気を強めたり、疲労感が高まることはないと考えられます。

一方でスンデリン氏は、これらの効果は普段からスヌーズを使う習慣のある人に見られたことであり、一度のアラームですんなり起きられる人が新たにスヌーズを使うメリットはないだろうと指摘しました。

ただし夜型人間の方、睡眠時間が短い方、朝の目覚めがつらい方で、まだスヌーズを使ったことがないならば、一度試してみるといいかもしれません。

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参考文献

Hitting ‘snooze’can boost morning cognition, study hints https://www.livescience.com/health/sleep/hitting-snooze-can-boost-morning-cognition-study-hints You don’t lose if you snooze https://www.eurekalert.org/news-releases/1004066 Why snoozing your alarm could be damaging your health https://www.cosmopolitan.com/uk/body/health/a26854166/snooze-alarm-snoozing-bad-for-health/

元論文

Is snoozing losing? Why intermittent morning alarms are used and how they affect sleep, cognition, cortisol, and mood https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jsr.14054
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