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ヴァイキングの最も有名な王は「女性」だった⁈


ヴァイキングと聞くと、角のある兜にゴワゴワした顎髭、剣や手斧を持った筋骨隆々な男たちをイメージしがちです。

しかしデンマーク国立博物館(National Museum of Denmark)の最新研究により、ヴァイキング時代に最も有名だった王は「女性」だった可能性が浮上しました。

ヴァイキング時代のルーン石碑を調べたところ、どの王様よりも「テューラ(Thyra)」という女性の名前が最も多く言及されていたのです。

これは彼女がヴァイキングの間で絶大な知名度と権力を誇っていたことを示唆するものだという。

では、この「テューラ」という女性は一体どんな人物なのでしょうか?

研究の詳細は、2023年10月11日付で学術誌『Antiquity』に掲載されています。

目次

  • テューラは「Bluetooth」の語源となったハーラル1世の母親
  • ヴァイキングの石碑に最も多く名前が刻まれていた

テューラは「Bluetooth」の語源となったハーラル1世の母親

画像
Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

ヴァイキング(Viking)は、西暦800年〜1050年の間に北西ヨーロッパの海を侵略した北欧の武装集団を指します。

約250年に及ぶヴァイキング時代に様々な王が誕生しましたが、その中で最も有名な王としてよく名前が挙がるのがハーラル1世(?〜986)です。

ハーラル1世は958年〜985年頃までデンマーク王として君臨し、その治世においてデンマークとノルウェーを平和的に統一した偉大な功績で知られています。

最近は歴史を参考にした漫画作品も多く存在するため、ヴァイキングをテーマにした人気漫画『ヴィンランド・サガ』のクヌートの祖父にあたる人物というとイメージしやすい人も多いかもしれません。

またハーラル1世は”青歯王(ブルートゥース)”というあだ名でも有名です。

この由来には諸説ありますが、一説によるとデンマーク語の「青歯(Blåtand)」は、「青い・浅黒い」を意味するBlåと「首領・族長」を意味するThegnを組み合わせて、「浅黒い首領」という意味があるといいます。

ちなみにこの”青歯王”は、先ほどのデンマークとノルウェーを平和的につないだ功績にちなんで、複数の電子機器をつなぐ通信技術のBluetoothの語源となりました。

あの有名なBluetoothのロゴも、ハーラル1世”青歯王”(Harald Bluetooth)のイニシャルをルーン文字「ᚼ(=H)」「ᛒ(=B)」で組み合わせたものです。

Bluetoothのロゴ
Credit: ja.wikipedia

このように現代の通信技術にまで名を残しているハーラル1世ですが、新たな調査により、当時のヴァイキング社会には彼よりもずっと有名な人物がいた可能性が浮上しました。

それが「テューラ(Thyra)」という女性であり、彼女は何を隠そうハーラル1世の母親なのです。

ハーラル1世の父親は、デンマーク最初の国王とされるゴーム老王(?〜958年)であり、テューラはその妻、つまり王妃に当たります。

では、なぜテューラの方がハーラル1世よりも有名だったと言えるのでしょうか?

研究者いわく、その秘密はヴァイキングたちが亡くなった重要人物を追悼するために建てた「ルーン石碑」に隠されていたようです。

ヴァイキングの石碑に最も多く名前が刻まれていた

ルーン石碑とは、その名の通り、ルーン文字が刻まれた石碑であり、800年〜1050年のヴァイキング時代に最も多く作られました。

ヴァイキングの社会では、亡くなった重要人物の功績を称えたり追悼するためにルーン石碑を建てていたといいます。

研究チームは今回、デンマークに現存する4つの有名なヴァイキングのルーン石碑(製作年代は900〜970年頃)を新たに調査しました。

うち2つは「イェリング墳墓群」にあり、あとの2つはそこから南に離れた「ベッケ(Bække)」「レーボルグ(Læborg)」にあります。

デンマークに点在するヴァイキング時代(900〜970年頃)のルーン石碑の位置
Credit: Lisbeth M. Imer et al., Antiquity(2023)

イェリング墳墓群にはルーン文字の刻まれた10世紀の石碑が2つあり、1つはデンマーク最初の王であるゴーム老王とテューラ王妃を、もう1つがハーラル1世”青歯王”を讃えた記念碑です。

しかし研究チームが新たに2つの石碑を分析したところ、両方の石碑に「テューラ王妃」の名前が確認できたことが判明しました。

1つ目の石碑には「ゴーム老王がデンマークの”強さ”と”救済”の象徴であるテューラ王妃を讃えて、この記念碑を作らせた」旨の内容が書かれていたといいます。

また2つ目の石碑にも「息子であるハーラル1世が母テューラを記念して作らせた」ことが記されていました。

「テューラ」の文字が見つかったイェリング墳墓群のルーン石碑
Credit: Lisbeth M. Imer et al., Antiquity(2023)

さらに驚くべきことに、イェリング墳墓群の近くにあるベッケとレーボルグの2つの石碑には、ハーラル1世やゴーム老王ではなく「テューラ」の名前だけが確認できたのです。

ここで彼女は「貴婦人」「女王」を意味するルーン文字とともに言及されていました。

レーボルグの石碑(高さ236cm)
Credit: Lisbeth M. Imer et al., Antiquity(2023)

またベッケとレーボルグの2つの石碑は、当時実在した「ラヴヌンゲ=トゥエ(Ravnunge-Tue)」という著名な彫刻家によって彫られたことが分かっています。

そして今回、新たにイェリング墳墓群の文字を3Dスキャンで慎重に分析した結果、その筆跡や彫刻技術から同じラヴヌンゲ=トゥエによって彫られたことが特定されました。

このことから研究者らは、4つの石碑に見られた「テューラ」という女性が同一人物であることを確信しています。

研究主任のリスベス・イメール(Lisbeth Imer)氏は「ヴァイキング時代のデンマークには、ゴーム老王やハーラル1世を含め、これほど多く石碑に名前が残っている人物は他に存在しない」と述べました。

テューラ王妃はこれまで「ハーラル1世の母親」として言及されるばかりでしたが、イメール氏はこの結果を受けて「彼女は私たちの予想以上に大きな認知度と政治的権力を誇り、デンマークの形成に重大な役割を果たしていた可能性が高い」と結論しています。

「テューラ王妃」はヴァイキング時代のデンマークで最も有名だった可能性
Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

加えて、この結果は男性中心であったヴァイキング社会において女性にも権力があったことを示唆する重要な知見です。

その一方で、テューラ王妃についてはこれ以外のことが謎に包まれています。

どこで生まれ育ったのか、どの家系の出身なのか、女王としてどのように国を統治し、どんな戦いを指揮してきたのか、ほとんど何も分かっていません。

チームは引き続き、ヴァイキング時代のルーン石碑の解読を進め、テューラ王妃に関する記述がないかどうかを調べていく予定です。

「ルーン文字」が刻まれた世界最古の石碑をノルウェーで発見!

全ての画像を見る

参考文献

Runestone Revelation Hints The Most Famous Viking Was a Woman https://www.sciencealert.com/runestone-revelation-hints-the-most-famous-viking-was-a-woman Viking Queen May Have Been Exceptionally Powerful https://www.history.com/news/viking-queen-thyra-runestone

元論文

A lady of leadership: 3D-scanning of runestones in search of Queen Thyra and the Jelling Dynasty https://www.cambridge.org/core/journals/antiquity/article/lady-of-leadership-3dscanning-of-runestones-in-search-of-queen-thyra-and-the-jelling-dynasty/AAB7888A86FFF997927143CB68E872E0
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