最近話題のアーマード・コア6では、ロボットの脚部パーツによって、性能が大きく変化します。
これはゲームの世界に限った話ではなく、現実のロボット開発においても、その移動能力やジャンプ能力は、脚の構造に大きく左右されます。
そして最近、アメリカのコーネル大学(Cornell University)でオーガニック・ロボティクス・ラボを運営するロバート・F・シェパード氏ら研究チームは、新たな構造で前進したりジャンプしたりする小型4足ロボットを開発しました。
ロボットの関節内部で連続爆発を引き起こし、そのエネルギーを用いて地面を強く蹴るというのです。
研究の詳細は、2023年9月14日付の科学誌『Science』に掲載されました。
目次
- ロボットの跳躍力を高めるカギは「爆発力」!?
- 爆発で大ジャンプする小型ロボット
ロボットの跳躍力を高めるカギは「爆発力」!?
ロボットアクションゲーム「アーマード・コア6」では、これまでのシリーズに引き続き、逆関節タイプの脚部が登場します。
この逆関節タイプは、通常の二脚タイプとは異なり、跳躍力に優れています。
ジャンプする際に逆さになった関節を折り曲げて溜め、そのエネルギーを一気に放出することで高くジャンプできるのです。
もちろんこれはゲームの世界での話ですが、現実のロボットのジャンプ力を高めるためにも、「エネルギーを溜めて一気に放出する」という爆発力は効果的でしょう。
そしてシェパード氏ら研究チームが新しく開発したロボットは、文字通り「爆発」させることで、高いジャンプ力を生み出すことに成功しました。
一般的なロボットにはバッテリーが積まれており、電気的に動作します。
バッテリーには「静か」「クリーン」というメリットがありますが、エネルギー密度は大きくありません。
一方、メタノールなどの化学燃料のエネルギー密度は圧倒的であり、バッテリーの20~50倍にもなります。
そこでチームは、ロボット脚部の関節内部に燃焼室を設置し、そこで小規模な爆発を引き起こすことで、ロボットが地面を蹴るための強い力を生み出すことにしたのです。
爆発で大ジャンプする小型ロボット
チームは、ロボットの脚を動かすために、シンプルかつ小型の内燃機関(エンジン)を組み込んでいます。
メカニズムは次の通りです。
関節の燃焼室では、メタンと酸素が注入され、その後点火。
爆発が生じて0.5秒以内に柔らかい素材でできた上部が上向きに膨らみ、9.5Nの力を生み出すのです。
その後は水と二酸化炭素が排出されます。
最大の課題は、燃焼アクチュエータ(エネルギーを機械的な動きに変換する装置)が爆発に耐えることでした。
研究チームはこの課題に対して、燃焼量を抑えたり、難燃性の素材(難燃性エラストマー)を用いたりすることで対応しています。
その結果、激しく動作するにも関わらず、75万サイクル(50Hzで8.5時間)以上の連続動作が可能になりました。
新しく開発されたロボットは、体長29mm、重さ1.6gの昆虫サイズです。
しかし、59cmの高さまでジャンプし、自重の22倍のおもりを背負って歩くことができます。
シェパード氏は、「昆虫レベルに近いパフォーマンスで、非常に高く、そして素早くジャンプし、大きな荷物を運ぶことができる」とコメントしています。
小型ロボットに高い跳躍力を持たせるのは簡単ではありませんが、爆発というシンプルな方法こそが、その鍵だったのです。
研究チームは、次のステップとして、アクチュエータの速度を小さくすることを考えており、これによって動作の幅を広げていく予定です。
参考文献
Soft Robot Walks by Repeatedly Blowing Itself Uphttps://spectrum.ieee.org/explosive-robot-insect
元論文
Powerful, soft combustion actuators for insect-scale robotshttps://www.science.org/doi/10.1126/science.adg5067