たいして寝てもいないのに「ああ、よく眠れた!」と感じた日は、元気に過ごせるという経験はありませんか?
睡眠をポジティブに捉えることは、あなたの幸福感を高める方法として、非常に有効なようです。
英国ウォーリック大学(University of Warwick)の研究者らは、実際の睡眠時間にかかわらず「よく眠れた」と考えることが、幸福度を向上させることを発見しました。
研究者は、「この結果は、参加者の自分の睡眠に対する評価が、幸福感や生活満足度と関連していることを明らかにしました」と述べています。
研究の詳細は、2023年8月付けの『Emotion』誌に掲載されています。
目次
- 「よく眠れた」と日記に書いた人は幸福度が高い
- どうしたら「よく眠れた」と思えるのか?
「よく眠れた」と日記に書いた人は幸福度が高い
簡単に幸福感を上げる方法は、ポジティブな自己申告をすることだと言われています。ポジティブな自己申告により、感情が安定し「自分なら出来る」と思える自己効力感を向上させ、幸福感が高まるのです。
また幸福感との関連でよく指摘されるのが質の良い睡眠をとることです。
では、この二つ効果はどちらの方がより幸福感に強く作用するのでしょう?
たとえばあまり良く眠れなかったにもかかわらず、「よく眠れた!」とポジティブに評価した場合、幸福感は高まるのでしょうか?
この疑問を明らかにするため、ウォーリック大学の研究者らは、まず実際の睡眠(睡眠追跡装置による記録)が、翌日の気分や生活満足度とどのように関係するのかを調査しました。
この調査では18歳から22歳までの100人以上の参加者に、睡眠研究や診断に使用される小型の睡眠計測装置(actigraph)を装着してもらい、睡眠パターンと睡眠サイクルを推定しました。
また参加者には2週間にわたって、睡眠日記をつけるよう求めました。これには、何時にベッドに入ったか、眠りにつく準備をした時間、眠りにつくまでにかかった時間、何時に目が覚めたか、何時にベッドから出たか、睡眠全般に対してどの程度満足しているかなどの記録が含まれます。
また、翌日は5回にわたり、「ポジティブな感情」と「ネガティブな感情」、そして「自分の人生にどれだけ満足しているか」について記録し、評価するようにも求められました。
研究者は、アクチグラフのデータと睡眠日記の記録を比較し、参加者が「よく眠れた」と報告した場合、翌日のポジティブな感情が増加し、生活満足度が向上することを確認しました。
一方、記録された睡眠の質の指標と、翌日の幸福感との間には関連性が見られませんでした。
研究者らはこの結果について、「アクチグラフで示された睡眠の質の記録と、わたしたちが感じる睡眠の質の間には、違いがあることが示されました。人々の幸福感や生活の満足度は、『実際の睡眠』よりも、彼らが『自分の睡眠の質をどう感じるか』によって大きく影響されるようです」と述べています。
研究者らによると、「自己評価が幸福感に及ぼす影響」は、睡眠だけでなく、自分の「健康状態」への認識にも関連があります。彼らが以前に行った調査では、自分で感じる健康への認識が、実際の健康状態よりも、幸福感や生活の満足度に大きく影響していることが示されました。
つまり私たちの幸福感は睡眠の質とはあまり関係なく、私たちが「よく眠れた」と感じていることが重要なようです。
しかし、結局のところよく眠れなければ「よく寝た」とは思えない気もしますが、睡眠の質が低くてもよく寝たと思うコツはあるのでしょうか?
どうしたら「よく眠れた」と思えるのか?
実際に質の良い睡眠がとれて、「よく寝た〜ッ!」と気持ちよく起きられるなら、それに越したことはありません。
でももし、眠りが浅く、ぐったりして目覚めてしまったときはどうしたら良いのでしょう?
そんなときは、考え方を少し変えて、ぐったり感を幸福感に方向転換しましょう。
以下は、いつでも誰でも簡単にできる「ちょっとだけ考え方を変える3つ方法」です。
眠る前からポジティブな考えを持つ
睡眠の質に対する認識は、ストレスレベル、日々の経験、睡眠に対する先入観など、多くの要因に影響されます。
ストレスが高まるとコルチゾールレベルが上昇し、これが睡眠を妨げる原因となります。
しかし、英国ケンブリッジ大学の研究者らによれば、ポジティブな思考をすることでコルチゾールの分泌が抑制される可能性があります。
睡眠前に「今夜はよく眠れる」とポジティブな思考を持つことは、翌朝の「よく眠れた」につながるでしょう。
よく眠れなくても「睡眠の喜び」を心に描く
季節や体調によって、眠りが浅い日もあれば、何度も途中覚醒してしまう日もあります。
そんなときでも、睡眠の良い側面に焦点を当ててみてください。深い眠りが得られた瞬間や、ベッドの心地よさ、良い夢、体が回復した感覚などを思い出して、「よく眠れた」と考えるようにしましょう。
睡眠に関して抱く否定的な考えを捨てる
「毎晩8時間眠らないといけない」「熟睡しなければダメだ」など、睡眠に関して抱いている否定的な考えを捨てましょう。
例えば、「8時間未満しか眠れなくても、パフォーマンスは下がらない」、「よく眠れる日もあるから、眠れない日があっても大丈夫、今回もできる」というように考えてみてください。
現実を変えることは困難ですが、認識を変えるだけでも気分はかなり改善されます。
睡眠の質を上げることは難しいことですが、状況をどのように捉えるのかは、あなた次第です。
少しぐらい目覚めが悪い日でも良い点に目を向けることで、幸せな気持ちを高めてくださいね。
参考文献
How people feel about their sleep matters to their well-being, new research suggests –Press Releases https://warwick.ac.uk/newsandevents/pressreleases/?newsItem=8a1785d7898c29940189bfcf6ec10a59元論文
The influence of sleep on subjective well-being: An experience sampling study. https://psycnet.apa.org/record/2023-95685-001?doi=1